〈特集図書展示No.34〉文学研究院 R5・R6 メンバー著書紹介 展示詳細

書香の森・特集図書展示の更新を行いました。今回は、令和5年度および6年度に新たに文学研究院のメンバーになった教員の著書を紹介します。

  • 展示期間: 2024年9月20日(金)〜2025年1月10日(金)

展示図書リスト

ムスリム捕虜の語る近世の地中海:マルタの「海賊」とオスマン朝のはざまで

末森 晴賀 著 風響社 2021年) → web書香の森

近世の地中海はムスリム(イスラーム教徒)・キリスト教徒を問わず、様々な「海賊」が跋扈する舞台であった。ムスリム「海賊」がキリスト教徒を掠奪したことに比べて、キリスト教徒「海賊」がムスリムを襲った事実はあまり知られていない。本書では、キリスト教徒「海賊」に攫われたムスリム捕虜の回想録である『冒険譚』を取り上げて、そこに描かれた虜囚の世界を明らかにする。

ヨーロッパ史のなかのアルザス:中近世の重層的な地域秩序から

安酸 香織 著 教育評論社 2022年) → web書香の森

近代の独仏対立のなかで四度帰属が変更されたアルザス地域は、現在アルザス欧州自治体を組織し、ライン上流域・フランス・ヨーロッパの三層構造のなかに居場所を見出しつつある。本書はこうした変化のなかにあるアルザスを、長い時間軸と広い空間軸のなかで、とくに中世のライン上流域ならびに近世の神聖ローマ帝国とフランス王国の境界域におけるネットワーク的・重層的な政治秩序に注目して紐解いていく一冊である。

死者のカルシッコ:フィンランドの樹木と人の人類学

田中 佑実 著 北海道大学出版会 2023年) →  web書香の森

「死者の印」をもつ樹木、死者のカルシッコはフィンランドのサヴォ地方を中心にかつて盛んに作られた。死者を墓場へ帰すとされたこの樹木は、キリスト教の浸透、林業を基盤とするフィンランドの産業化、近代化による社会と人々の変容に伴いながら、死者を思い出すものへとその意味をかえ、次第に忘れ去られていった。風習が終わりつつある今、「エラマ(生)」をキーワードに、カルシッコとともに生きる家族の想いと暮らしを描く。

呪術と学術の東アジア:陰陽道研究の継承と展望

(陰陽道史研究の会 編、吉田 拓矢 分担執筆 勉誠出版 2022年)→勉誠出版サイト

古代において成立した陰陽道は、時代とともにその役割を拡げていきました。本書は、陰陽道史研究の継承と展望というテーマのもと、「Ⅰ 呪術としての陰陽道」「Ⅱ 学術としての陰陽道」「Ⅲ 東アジアという視点」の三部構成で、多彩な論考を収めています。

ミュージアムを足してみる:北海道大学プラス・ミュージアム・プログラム Report1、2

卓 彦伶、今村 信隆、佐々木 亨 編  北海道大学大学院文学研究院 2023、2024年)
プラス・ミュージアム・プログラム

北海道大学プラス・ミュージアム・プログラムは、地域社会における多様な課題に対し、「ミュージアムを足してみる」という視点から取り組むプログラムです。
本報告書は、2022年、2023年度の事業についてまとめたものです。

昼の家、夜の家

(オルガ・トカルチュク 著、小椋 彩 訳 白水社 2010年) → web書香の森

チェコとの国境に程近い、ポーランド南西部の小さな町ノヴァ・ルダに移り住んだ作家らしき語り手が、隣人たちと交わす何気ない会話や日常の風景、だれかの回想、夢、地元に伝わる神話や伝説を通して、土地の来歴を知り、人生の謎や神秘に触れる。
「土地」を共通モチーフにした断片的挿話がゆるやかにつながり、読者に自由な想像をうながす、詩的で不思議な本。

寺院文献資料学の新展開 第四巻:安住院資料の調査と研究

(中山 一麿 編、小林 理正 分担執筆 臨川書店 2022年) → 臨川書店の紹介ページ

主要寺院との関係で留目される地方寺院の悉皆調査を踏まえ、そこに蔵せられる資料群を寺院間の資料流通や人的交流という観点から総合的に考究するシリーズの一冊。本書は、瓶井山禅光寺安住院(岡山県)に焦点を絞ったものとなります。

黒沢清と〈断続〉の映画

川崎 公平 著 水声社 2014年) → 附属図書館の紹介ページ

現代日本を代表する映画作家・黒沢清のホラー作品を中心に論じています。10年前の本ですが、現在の黒沢清のことや、いわゆる「Jホラー」のことを考える上でも、いまだに有益だと勝手に自負しています。

気楽に江戸奇談! RE:STORY 井原西鶴

(西鶴研究会 編、南 陽子 分担執筆 笠間書院 2018年) → web書香の森

古典はどこまで現代小説に近付けるか?300年前の人気作家、井原西鶴の翻訳集です。南執筆『万の文反古』(pp.49~61)は忠実な逐語訳かつ、人物の声を読者の耳に直接届けることを目指しました。少し怖いお話です。紙面から人物の悲鳴が聞こえるか試してみてください。

シカと日本の森林

(依光 良三 編、上野 真由美 分担執筆 築地書館 2011年) → 附属図書館の紹介ページ

山村が衰退し、森林・里山での活動が縮小し続ける日本社会。野生動物のニホンジカの勢力拡大が植生破壊という新たな自然保護問題を引き起こしています。これからのヒトと自然の関係を考える1冊。

Social Change in Japan, 1989-2019: Social Status, Social Consciousness, Attitudes and Values

(Carola Hommerich 他編、平松 誠 分担執筆 Routledge 2021年) → Routledgeの紹介ページ

SSP調査のデータを用いて、1989年から2019年までの日本社会について分析・記述した書籍。現代日本社会論や計量社会学に興味のある方に一読を薦めます。平松も分担執筆しています。