内容紹介
近代の独仏対立のなかで四度帰属が変更されたアルザス地域は、現在アルザス欧州自治体を組織し、ライン上流域・フランス・ヨーロッパの三層構造のなかに居場所を見出しつつある。本書はこうした変化のなかにあるアルザスを、長い時間軸と広い空間軸のなかで、とくに中世のライン上流域ならびに近世の神聖ローマ帝国とフランス王国の境界域におけるネットワーク的・重層的な政治秩序に注目して紐解いていく一冊である。
著者からのコメント
本書は、私が学部時代にぼんやりと抱いた「フランスとドイツの要素を合わせたようで、しかしどちらとも違うようなアルザスの特質はどのようにして生まれたのだろう」という問いに、学問的かつ長期的な視点で答えようとしたものです。具体的には、この地域を特徴づける「重層性」が中世および近世にいかなる経緯で生じ、それが近代以降に変容するなかでどのような「地域意識」が醸成されたのか、そして現在のアルザス欧州自治体はこうした歴史を踏まえるとどのように理解し得るのかを論じています。
また本書は、アルザスを題材に、ヨーロッパ史の趨勢のなかで国家、地域、人びとのアイデンティティが変容していく様相を描き出したものでもあります。
様々な興味関心から、本書を手に取っていただければ幸いです。
外部リンク
〔出版社〕教育評論社