プロフィール
- 研究内容
ロシアやポーランドの文学を比較文学的見地から研究しています。
Lab.letters
星が瞬くスラブ語圏文学研究
ノーベル賞受賞作家の翻訳も
「絵を描く作家」アレクセイ・レーミゾフはロシアの亡命作家の一人であり、数多描き残した独特の視覚芸術で後世の人々を魅了しています。2018年にノーベル文学賞を受賞したオルガ・トカルチュクは現代ポーランドを代表する作家であると同時に、文学の力で環境問題に寄与しようというエコクリティシズムの実践者でもあります。この二人のように、スラブ語圏の文学研究は新たな視点を持つ作家が星のように点在し、その切り取り方は皆さん次第です。〈文学と絵画〉や〈文学と映画〉などジャンルをクロスする視点もあるでしょう。私自身もワルシャワ滞在中にたまたま著書を手に取った縁で世界中にいるトカルチュク作品の翻訳者に仲間入りし、彼らとの交流から大いに刺激をもらっています。
質量ともに日本一の研究環境で
没入できたと思える経験を
日本のスラブ地域研究といえば、やはり北海道大学が質量ともに日本一。この優れた研究環境自体が唯一無二であり、頼れる研究者の宝庫であると確信しています。トカルチュクに限らず、ロシア・ポーランドの文学者たちは伝統的に社会活動家の顔を持っており、現代を生きる皆さんが社会に抱く疑問や関心との接点を見つけることも決して難しくはありません。自分の研究成果や最新情報を常に授業に還元するよう心がけており、皆さんの研究意欲がさらに高まるように後押しできればと思っています。レポート一本、論文一本でも心の底から「面白い!」と思えるものに没入できた、そう振り返ることができる経験を一緒に紡いでいきましょう。
(聞き手・構成 佐藤優子)
メッセージ
ロシアやポーランドの亡命文化について研究してきました。20 世紀ヨーロッパ社会は、亡命者の存在なくしては語れません。1917 年の革命と、続く内戦をきっかけに、ロシアは世界中に大量の亡命者を送りだしました。世界中に散らばった芸術家や知識人たちは、亡命先で多彩な文化的・政治的活動をつづけ、ロシア語の新聞や雑誌を発行しました。越境的、中間的、流動的な存在であるかれらの文化創造について、おなじく「亡命大国」であるポーランドの事例とともに考察を続けています。
こうした研究の一方で、ポーランドの作家オルガ・トカルチュクの作品を中心に、文芸翻訳に携わっています。翻訳とは、作家/原文との創造的な共同作業であり、よい翻訳の陰には緻密な研究、正確な理解があると信じています。
動物・環境保護に力を尽くす、熱心な社会活動家でもあるトカルチュクの影響で、自然/社会環境と文学の関係に関心を持っています。文学が現代社会に対して担う役割や機能について考えることが、近年の私の研究テーマです。
北海道と縁の深いロシアの文学、そしてロシアのみならず欧州の広範を占めるスラブ語圏の文学をいっしょに読んでみませんか。スラブ語圏文化の個別の事象の多様性と共通性、その欧州全体における位置づけにも目を配りつつ、みなさんが自分自身のテーマを見つけ、それを存分に探究するお手伝いをしたいと願っています。
研究活動
略歴
北海道大学文学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学、博士(文学)。東京大学大学院研究員、東洋大学文学部助教、北海道大学メディア・コミュニケーション研究院助教等を経て現職。
主要業績
- オルガ・トカルチュク著/ヨアンナ・コンセホ絵/小椋彩訳・解説『個性的な人』岩波書店 2024年
- 中村 唯史/坂庭 淳史/小椋 彩 編著『ロシア文学からの旅:交錯する人と言葉』ミネルヴァ書房、2022年
- オルガ・トカルチュク著/小椋彩・久山宏一訳『優しい語り手』岩波書店、2021年
- オルガ・トカルチュク著/ヨアンナ・コンセホ絵/小椋彩訳・解説『迷子の魂』岩波書店 2020年
- オルガ・トカルチュク著/小椋彩訳『プラヴィエクとそのほかの時代』松籟社、2019年
- オルガ・トカルチュク著/小椋彩訳『逃亡派』白水社、2014年
- 高橋和/中村唯史/山崎彰編『映像の中の冷戦後世界 ロシア・ドイツ・東欧研究とフィルム・アーカイブ』分担執筆、山形大学出版会、2013年
- オルガ・トカルチュク著/小椋彩訳『昼の家、夜の家』白水社、2010年
所属学会
- 日本ロシア文学会
- 日本スラヴ学研究会
- 日本比較文学会
教育活動
授業担当(文学部)
- 西洋文学概論
- 西洋文学
授業担当(文学院)
- 西洋文学特殊講義
- 西洋文学特別演習
授業担当(全学教育)
- 芸術と文学