プロフィール
- 研究内容
井原西鶴を中心とした江戸時代前期の文化と文学を取り上げ、個々の作品をテキストと時代背景に即して理解することを重視しつつ、古典の継承と享受の問題にまで視野を広げることを目標としています。
- 研究分野
- 近世文学
- キーワード
- 井原西鶴、浮世草子
- 文学研究院 所属部門/分野/研究室
- 人文学部門/表現文化論分野/日本古典文化論研究室
- 文学院 担当専攻/講座/研究室
- 人文学専攻/表現文化論講座/日本古典文化論研究室
- 文学部 担当コース/研究室
- 人文科学科/言語・文学コース/日本古典文化論研究室
- 連絡先
研究室: 425
Email: minami.y*let.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。- 関連リンク
Lab.letters
今も見かける“困ったさん”
俗文芸の楽しさを入り口に
「ないものはない」と言って借金取りに開き直る男もいれば、親に甘やかされた挙句、女に金の用立てを迫る商家の息子もいる。井原西鶴や近松門左衛門が描く市井の人々は、現代社会で言う“困ったさん”のご先祖たち。その一連の騒動や、あるいは庶民の成功譚をひもとく楽しさは、等身大の話が多い近世文学ならではの魅力です。彼らに何らかの興味を覚え、読み進めていくと次に待つのは、金銭感覚や恋愛観、社会通念など「どうしても現代を生きる自分にはわからないことがある」という新たな視点です。その違いを前に立ち止まり考えることで、「自分とは」「人間とは」を考える文学研究の本質が見えてくる。その奥深さに私も魅せられています。
「わからない」を遠ざけず
古典から受け取るものを考える
文学研究の上でも人生においても、「わかる」だけでなく「わからない」ことに対していったん立ち止まる姿勢は常に持っていてほしいと考えています。その助けになればという思いから、授業では西鶴の会話文をペアで音読したり、テキストから「お金と命、どちらが大切か」を考察するなど、学生同士の意見交換が活発になるアクティブラーニングのような手法を導入し、「古典の言葉」を「自分の言葉」に引き寄せて考える練習をしています。古典とは、その時代時代の人々に読み継がれていくからこそ古典としてあり続ける。そのことを念頭に置き、「古典の言葉」から今の私たちが何を受け取れるのかを、文学研究の伝統ある北海道大学で文章化していきましょう。
(聞き手・構成 佐藤優子)
メッセージ
17世紀の文化と文学は「パロディの世紀」(今栄蔵『初期俳諧から芭蕉時代へ』2002年、笠間書院)と呼ばれることがあります。いま「古典」とみなされている定番の作品群、『古事記』、『源氏物語』、『伊勢物語』、『徒然草』、『方丈記』、人口に膾炙した多くの和歌と説話と伝承、文字通り、なんでもリミックスされ、パロディのネタにした時代でした。「パロディ」という素材から複数の時代・分野に派生して考察を広げることができるので、何をしたいのか分からない人、何がしたいのかを決める材料を探している人こそ、近世という時代は向いているかもしれません。ふざけていて、断じて上品ではなく、多少は知的ですが、はっきり言ってバカみたいな小話です。それらを読んで喜んでいた当時の読者の「素」の姿が目に浮かび始めると、遠い昔の繰り言にしか聞こえなかった「古典」というものが、俄然、楽しくなると思います。
研究活動
略歴
早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程修了、博士(学術)。早稲田大学助手、早稲田大学他非常勤講師などを経て現職。
主要業績
- 「近松を「読む」ということ―あるいは「義理と人情」に関する、斜め横からの考察―」『日本文学』2023年6月
- 「『万の文反古』巻一の四における書簡と話ー「無用に候」の意味するものー」『近世文藝』2013年1月
- 「『万の文反古』B系列の矛盾と笑い–「書簡体小説」の趣向と効果について」『近世文藝』2011年7月
所属学会
- 日本近世文学会
- 日本文学協会
- 早稲田大学国語国文学会
教育活動
授業担当(文学部)
- 日本文学史概説
- 日本文学演習
授業担当(文学院)
- 日本古典文化論特殊講義
- 文献学(国語・国文)特別演習
- 日本古典文化論特別演習
授業担当(全学教育)
- 文学と芸術
おすすめの本
- 尾形仂『座の文学―連衆心と俳諧の成立―』(初出1973年、講談社学術文庫所収)
学部生のとき「古典、カッコイイじゃん」と思い、近世を選ぶきっかけになった一冊です。氏の該博な知識と、広く深い作品理解をもとに、俳諧の成立と古典の受容・継承という大きなテーマが論じられています。理論と現象が調和した鉄壁の論理がカッコイイので、言語科学系統に興味のある色々な人に読んで欲しい本です。