文学部への誘い

北海道大学文学部は,人文科学科という一つの学科から構成されています。人文科学とはなじみのない言葉かもしれませんが,英語ではhumanities and human sciencesと私たちは表現しています。つまり人文学(humanities)と人間科学(human sciences)の二つの分野からなっているのです。

人文学とは,哲学・歴史学・文学など,人間が行ってきた様々な知的営みを研究する分野です。これに対して,人間科学とは人間を対象としたあらゆる科学的研究の総称であり,文学部ではその中でも人間の心理や行動,集団に関する研究を行う心理学・社会学などの分野を対象としています。文学部とは決して「文学」のみを学ぶところではなく,人間について幅広く研究する場なのです。

高校で学ぶ国語・英語及び社会科のほとんどの科目の内容を文学部で深く学ぶことができますし,芸術学・宗教学・文化人類学・言語学・心理学・行動科学など高校で学習しなかった領域の勉強を始めることもできます。北大文学部では実に多様な学問分野の教育が展開されており,みなさんが関心をもてる分野が必ず見つかるはずです。このような教育環境で,自分が専門とする領域を追究するだけではなく,それに隣接する,あるいはかなり離れた分野の知識も幅広く得ることもできます。われわれが重視する,自分の得意な分野を深めつつ幅広い視点を身につけるという姿勢は,日々刻々と変化していく現代社会を生き抜く上で,生涯揺らぐことのない支えとなるでしょう。

文学部で学ぶ学問は,実社会ではあまり役に立たず就職に不利ではないかと思う人もいるようですが,卒業論文という形で長くまとまった文章を自力で書き上げる経験はかけがえのないものですし,何よりも文学部で身につける広い視野と物事をじっくり考え抜く力は,これからの予想困難で複雑さを極める社会において必ずや求められる能力となります。留学支援も充実しており,国際社会での活躍に向けて第一歩を真っ先に踏み出すチャンスが得られます。優れた著作を丹念に読み解き,他の人の意見を正しく理解した上で,自分が考える主張をわかりやすく表現する能力が培われるよう,われわれ教員は学生のみなさんと日々真剣に向き合っています。

緑豊かで広大な北大キャンパスという恵まれた環境の中,興味のつきない学問に真正面から取り組みながら,自身の人間性を豊かなものにすることのできる文学部という学びの場に身を置いてみませんか。

北海道大学文学部長・文学院長・文学研究院長
藤田 健 ふじた たけし