プロフィール
- 研究内容
享受史上、平安時代の文学作品に発生した無数のヴァリエーションは、どのように説明でき、いかに読み解くことができるのか。こうした問題意識のもと、中古文学作品のさまざまな相貌を分析・吟味・読解しています。
- 研究分野
- 中古文学
- キーワード
- 『狭衣物語』、『源氏物語』、本文、解釈、写本
- 文学研究院 所属部門/分野/研究室
- 人文学部門/表現文化論分野/日本古典文化論研究室
- 文学院 担当専攻/講座/研究室
- 人文学専攻/表現文化論講座/日本古典文化論研究室
- 文学部 担当コース/研究室
- 人文科学科/言語・文学コース/日本古典文化論研究室
- 連絡先
研究室: 407
研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。- 関連リンク
Lab.letters
本文の揺れを追いかけて
AIにはできない分析を行う
『源氏物語』や『狭衣物語』などの本文は決して一つではありません。時代ごとに作品を書き写した先人たちがおり、写本ごとに人の手によるものならではの多様な揺れがそこには見受けられます。同じ場面でも一文字写し違ったことで動作主が変わり、それに連なる解釈も異なったまま後世に伝えられることもあります。
写本Aと写本Bの単純比較はAIにもできます。しかし、我々研究者の本領はそこからどういう解釈が生まれ、どのように後世に流れ着いていったのか、変化の系統を見定めるところにあります。実直に自分の目で読み解き、蜘蛛の巣がかかっていると思われがちな本文史に現代の光を注ぐ。令和を生きる私たちもまだまだ発掘しがいのある研究分野です。
原資料に立ち戻り
伝言ゲームから脱却
活字になっている文献や論文を引用する。大学ではおなじみの研究手法ですが、私がこの分野に身を置く学生に常々伝えているのは、活字の向こう側にある原資料に立ち戻ってほしいということです。他者が唱える理解や学説にそのまま安住するのではなく、自分の頭と五感で考える姿勢を大切にしてほしいとも伝えています。その行為が習慣となれば、「思考力」と「読解力」という作品分析に必要な力も自ずと備わってきます。
私の研究室を訪ねてくれた皆さんは、日は浅くとも研究者の卵です。今こそ、他者の言説に左右される“伝言ゲーム”から抜け出すとき。私も皆さんとともに学びながら、若き研究者の飛躍を見届けたいと願っています。
(聞き手・構成 佐藤優子)
メッセージ
平安時代の文学は、さまざまなヴァリエーションを有しています。これは古典文学が人の手で書き写され、伝わってきたことに起因します。おもしろくないと思えば、作品の本文を書き換えた人もいたでしょうし、勝手に加筆した人もいたでしょう。あるいは、作者ではない或人物Xに書き換えられたバージョンBを、手許にある本文と組み合わせ、バージョンCを作り出した者もいたことでしょう。こういった外的要因が複雑に絡み合いながら、いまに書き伝えられことで、こんにち私たちが目にする平安時代の文学は無数の異なりを獲得したのでした。中学・高校あるいは大学で学んだ/読んだ物語や日記、歌集も、数あるヴァリエーションの一つに過ぎません。皆さんご存じの『伊勢物語』も、『源氏物語』も、『枕草子』も、『古今和歌集』も……、例に漏れないのです。
揺れ動くことが常であった平安時代の文学作品と真正面からぶつかってみる、数多の写本を縦横無尽に読んでみる、先人に倣いつつも後代の読者・研究者である私たちだからこそできる作品との向き合い方を一緒に愉しんでみませんか?
研究活動
略歴
天理大学文学部卒、広島大学大学院文学研究科人文学専攻博士前期課程修了、大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻博士後期課程修了、博士(文学)。奈良大学非常勤講師、日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て現職。
主要業績
- 「明石の尼君は歌を詠んだかー『源氏物語』(若菜下巻)住吉詣の和歌二首再考」(『語文』2024年6月)
- 「深川本狭衣物語・巻一論―系統論の再吟味におよぶ―」(『国語国文』2020年8月)
- 「「返しどもなどのしどけなくならはし聞えたる所〴〵」の解釈ー狭衣物語(巻四)の本文分析ー」(『国文学攷』2020年3月)
- 「平安(末期)写本の痕跡―鎌倉写本の和歌書式からみえてくるもの―」(『語文』2019年6月)
所属学会
- 中古文学
- 北海道大学国語国文学会
- 大阪大学国語国文学会
- 広島大学国語国文学会 ほか
教育活動
授業担当(文学部)
- 日本文学
- 日本文学演習
授業担当(文学院)
- 日本古典文化論特別演習
- 文献学(国語・国文)特別演習
授業担当(全学教育)
- 一般教育演習
- 芸術と文学
おすすめの本
- 池田亀鑑『古典学入門』(岩波書店)
読み返すたび、蒙を啓かれる思いがする一冊。平安文学に関する基礎知識もたくさん記されているので、高校生にもおすすめです。