ごあいさつ

文学院という新たな人材育成の場

北海道大学文学部の前身は,昭和22年に北海道帝国大学に設置された法文学部でした。文学部の分離,大学院文学研究科の設置を経て,長らく北海道の地における人文科学の拠点として研究教育を進めてきました。平成12年の大学院重点化以降,現代社会の変化は急激に加速し,多くの価値観が併存する多面的で複雑な社会になっています。こうした世界における新たな諸課題に立ち向かい,その解決に貢献する人材を養成するために,平成31年4月,文学研究科を改め,大学院生が所属する教育組織としての「文学院」と,教員が所属する研究組織としての「文学研究院」という,二つの組織が誕生しました。これにより,人文社会科学の学際的・総合的な教育研究を展開するとともに,社会の新たな要請に応え広い視野を持つ人材育成のための大学院教育に積極的に取り組んでいます。令和2年度にスタートする「人間知・脳・AI教育プログラム」などの,他部局との協働による分野横断的な試みはその一例です。

 

人文学専攻と人間科学専攻の2専攻体制

文学院は人文学専攻と人間科学専攻という2つの専攻により構成されます。
人文学専攻は,従来の3専攻(思想文化学専攻,歴史地域文化学専攻,言語文学専攻)を統合し,人文学の専門分野をより深く学ぶとともに,多様な分野を広く学ぶことができます。組織としては,実際に行われている研究教育の内容に合わせて,研究室を単位として再編しました。考古学研究室,文化人類学研究室,言語科学研究室を設置すると同時に,新たな研究領域として博物館学研究室とアイヌ・先住民学研究室を創設しました。人文学という大きな括りにすることにより,伝統的な学問領域を継承しながら,総合的な学びを一層充実させています。

人間科学専攻は,これまでの人間システム科学専攻で蓄積した成果を土台にして,人間について科学的見地から探究する学問としての人間科学を学ぶことができます。実験,実習,調査など多彩な研究手法を取り入れて,人間と社会に関する先端的で精緻な学びを提供します。

国際化の必要性が謳われて久しい今日,文学院では多くの外国人留学生が学び,日本人学生とともに日々切磋琢磨しています。海外の研究者を招聘する機会も多く,国際性という点で文学院は北海道大学をリードする存在と言えるでしょう。

人文学・人間科学分野における教育研究は,今後ますます重要性を増すことになるはずです。人間と社会をさまざまな角度から,多種多様な方法によって解明することを目的とする領域は,いわゆる実学とは必ずしも重ならず,すぐに私たちの生活に役立つとは言い切れないかもしれません。しかしこのような教育研究によって育まれる力は,人類の未来を築くために必ずや必要とされるものです。国立大学の人文系大学院として有数の規模を誇る北大文学院はこの使命に応えるべく,多彩な分野の教育研究を通じて有為の人材を養成し,輩出していきます。

北海道大学文学部長・文学院長・文学研究院長
藤田 健 ふじた たけし