札幌キャンパス構内を南北に流れ、四季折々に美しい水面を揺らすサクシュコトニ川。わたしたち北海道大学文学研究院は、そのほとりで学びや教えを進めています。サクシュコトニ川は、アイヌ語に基づいた地名です。附属図書館裏手から文学部駐車場裏手へ向かう流れの川床からは、江戸時代はじめ頃のアイヌ文化の遺跡が見いだされています。明治初年に北海道が設置される以前から、この場所は先住のアイヌ民族の暮らしのあった土地でした。
自らの場所によって立ち、考えをめぐらせることは大切です。土地を舞台とした歴史。社会のなかの様々なマイノリティに想像力をめぐらせる。言葉や文学、思想や文化の果たす役割。ひとはなぜそのように考え行動するのか。北大文学部/大学院文学院での学びからは、たとえばそんな気づきが得られるでしょうか。
文学部/文学院の沿革は、1947年、北海道帝国大学に法文学部が設けられ、哲学科・史学科・文学科が置かれたことに始まります。1950年には、この3学科からなる文学部が成立、1977年に哲学科の一部を改組し行動科学科が設けられ、その後の文学部/文学院における研究・教育分野の骨格となっていきます。
現在では、詳細はぜひウェブサイトをご覧頂きたいのですが、研究組織としての文学研究院には教育組織として文学部と文学院とがあり、文学部には18の研究室に約90名の教員を擁し、約630名の学生が学んでいます。文学院にはスラブ・ユーラシア研究センターとアイヌ・先住民研究センターの教育参画を得て、20の研究室に約110名の教員のもとで、約390名の大学院生が研究を深めています。また、事務組織としては文学事務部が設けられ、約30名の職員が日々の仕事を進めています。こうした、質量ともに多彩で豊かな学問領域を包含する組織は、各教員による最先端の研究に裏打ちされたものであり、いわば世界標準の大学教育が、国立の総合大学に置かれた人文科学系の学部/大学院のひとつとして、この北海道の地で担保されていることになります。
ところで、冒頭にお示しした土地のストーリーは、ランド・アクノレッジメント(LA)といって、先住民族の歴史を刻んできたアメリカやオセアニアといったいわゆる「新世界」に所在する大学等が、いまにつづくその歴史的経緯を承認し敬意を表すべく、公的なスピーチやあいさつ文の冒頭に配するメッセージで、本学が明治以来、手本のひとつとしてきたクラーク博士が学長を務めたマサチューセッツ農科大学の後身、マサチューセッツ大学アマースト校でも同様です。本学でも、2026年度から正門付近の案内板にLAを示すようになりました。これは一例ですが、時代に応じた変化を捉えた実践も、大切にしていきたいと考えています。
北海道の地に足を据え、質の高い国際標準の研究や教育を推進する。わたしたちは、人文科学の多彩で豊かな学問領域に立脚しつつ、ひろく学術・教育・社会への貢献を果たしていくことを期しています。
北海道大学大学院文学研究院長・大学院文学院長・文学部長
谷本 晃久 たにもと あきひさ