ごあいさつ

こんにちは、文学研究院の教員で川端と申します。2024年4月から2026年3月まで文学研究院長・文学院長・文学部長を務めます。私は1961年に札幌で生まれ、札幌で育ちました。1980年に北大に入学しましたので、もうずいぶん長くここにおります。クラーク博士の有名な言葉「Be ambitious!」は一般に「若者よ、大志を抱け」と訳されていますが、皆さんの先輩、後のアラビア石油の創始者である山下太郎は、このambitiousという言葉にはより「野心的」な意味合いが込められているとして、「若者よ、山師たれ」と説いています。

これまで北海道の地で、東西冷戦、高度成長、バブルとその崩壊、デフレと停滞、地政学リスク等をみてきましたが、大きくなりそうな時代のうねりの中で、現在の本研究院は全世界的にみても有望な山師的集団である、と私は思っています。ウェブサイトをみていただければわかりますが、多様で魅力のある文系や文理融合系コンテンツのほぼすべてが揃っています(とくに日本最北に位置する拠点大学の役割を考慮しています)。これだと思う領域を選んで深くかつ学際的に学ぶことができる環境がありますし、野心的で親切な学部生約620名、修士課程学生約230名、博士課程学生約180名、文学院教員約130名と事務職員約20名が日夜仕事を全うしています。北大は札幌の中心に原生林や農地を含めて広大な敷地を占めており(文学部はその真ん中に位置します)、さながら北海道全域の箱庭のようなイメージです。この箱庭での演習から始まって、北海道、北方圏、世界(real and cyber)をフィールドとして私たちは活動しています。

 

私の文学部と山スキー部の後輩で宗教学・仏教学を専攻した男がおります。建設機械の会社に入社した後に本格的にスペイン語を学んで南米赴任、あの広大な南米大陸で油圧ショベルの保守に奔走してきました。私が1997年にエクアドルのチンボラソ山に赴いた際にはチリから駆けつけてくれ、そのときの風貌はほぼ現地人のそれでした。現在、彼は日本でITを活用して、世界各地の工事現場で作動する機械の保守システムをコントロールしています。北大をホームベースに、様々な言語を交わしながら、飄々と世界の山を歩く、山師の一人と言えるでしょう。

北海道や日本は過去数十年間、経済、学生の就職に関しては受難の時代が続きましたが、その中でも時とともに私たちへの社会的要請は増えてきました。今後日本がより知的に経済的に豊かになる光がみえてきた中で、様々な業態の企業、団体、組織などが求める人材を供給する主要な源泉になりつつあります。私はそのような人材が北大文学部・文学院から輩出することを目標にしています。おもしろき人生の山師たれ!

 

北海道大学大学院文学研究院長・大学院文学院長・文学部長
川端 康弘 かわばた やすひろ