文化多様性論講座

この講座では、「芸術学」、「文化人類学」、「博物館学」という性格が異なる3つの学問分野が、〈文化多様性〉と〈フィールドワーク〉という共通項で教育・研究を行います。古今東西の美術をはじめ、音楽、文芸、演劇などの多様な芸術を対象に研究する「芸術学」。人類の文化の多様性と共通性を研究する「文化人類学」。そして、これらの成果を、展示を含めた事業を通して、多様なミュージアムでどのように展開するかを研究する「博物館学」。これらの研究を、机上で文献をひもとくだけでなく、実際にその現場で考えるフィールドワークを通して進めていきます。

文化人類学研究室

この地球上で人類はそれぞれの自然環境に応じて、多様な文化を育んできました。文化人類学とは、自然と結びついた文化の多様性を、研究者が実際に現場に身をおきながら明らかにする分野です。私たちの慣れ親しんだ世界の外に出て、人類の多様な可能性を知り、これからの地球社会を構想する、そんな自由で創造的な場が文化人類学研究室です。

研究室からのメッセージ

生きている現場(フィールド)に身をもって関わって、その経験から言葉を紡ぎ出していく。私たちはそんな手間暇のかかる、しかし楽しくて手ごたえが実感できる、そしてほんとうに内実のある知を生み出せる研究に取り組んでいます。文化人類学は現場での「驚き」から出発します。このセンス・オブ・ワンダー(驚きの感覚)を大切に研究を進めると、常識を問い直し、世界が違って見えてくるようなワクワクする瞬間を体験できます。文化人類学研究室の学生と教員は、それぞれが心から関心がもてることを探求し、互いに仲間としてサポートをしています。そんな自由と創造性の場にあなたも加わりませんか。

ペルー・アンデスのサルワ村の段々畑。2020年3月。この村を訪ねた時、安心感が印象的だった。その後この村もペルーの内戦を経験したと知り、そのしたたかな強さが見えてきた。(小田)
ユーコンの冬の森で先住民の古老から罠猟を学ぶ(山口)
2020年3月4日、京都木屋町のライブ・ハウス「アバンギルド」にて披露した、ポール・ダンサーのErika Relaxと肉野ハラ美と共に文化人類学研究室の准教授 コーカー・ケイトリンによる共同制作のポール・ダンス作品。3人で構成や動きを作っている中、そのテーマが「人間への生成変化」になっており、動くことで人類学に挑戦する作品にもなった。この瞬間は「食べること」についてです。写真提供:Kohki Utsu (コーカー)

教員紹介

  • 小田 博志 教授 ODA Hiroshi
    研究分野: 人類学、平和研究、自然-人間関係、生命論、エスノグラフィー論
  • コーカー・ケイトリン・クリスティーン 准教授 COKER Caitlin Christine
    研究分野: 人類学、身体化論、パフォーマンス研究、情動論
  • 山口 未花子 准教授 YAMAGUCHI Mikako
    研究分野: 人類学、自然誌、動物論、狩猟研究、北米先住民研究
  • 田中 佑実 助教 TANAKA Yumi
    研究分野: 人類学、樹木と人、芸術、北欧先住民研究
主な講義題目
  • 人類学(再)入門
  • 人類学を実践する
修士・博士研究テーマ例
  • The Elementary Forms of Punk Life:Reimagining “Collective Effervescence,” Post-COVID 19
  • ともに生きるという「資源管理」 小川原湖シジミ漁の漁業活動の過程から見た人間−環境関係の考察
  • フィンランドの樹木とともに生きる世界-死者のカルシッコに見る「エラマ」の物語-
研究室ウェブサイト

芸術学研究室

芸術学研究室には、美学・美術評論史・西洋美術史・現代美術史を専門とする教員ががおり、、人間の文化的な営みの精華である多様な芸術作品やその美的経験などを考察の対象として、理論的普遍的哲学的な方法と実証的個別的歴史的な方法とを相携えながら、芸術を巡る総合的な知の構築を目指して研究しています。

研究室からのメッセージ

国内外で美術作品の調査を行います。古代・中世から現代まで、また建築や風景、音楽・演劇・映画など、いろいろな芸術に関心をもつ人を待っています。

画家のアトリエ訪問(ロシア、サハリン)
展覧会調査(ドイツ、ミュンスター彫刻プロジェクト)
中世都市の見学(イタリア、サン・ジミニャーノ)

教員紹介

  • 浅沼 敬子 教授 ASANUMA Keiko
    研究分野: 現代美術史
  • 谷古宇 尚 教授 YAKOU Hisashi
    研究分野: 西洋美術史(イタリア美術史)
  • 今村 信隆 准教授 IMAMURA Nobutaka
    研究分野: 美学、美術批評史、博物館学
主な講義題目
  • 西洋美術史研究の現在
  • 芸術学研究報告
  • 美学文化学研究報告
修士・博士研究テーマ例
  • 草土社の風景画と郊外
  • 会所における唐物受容から室町水墨画へ至る道筋についての考察
  • 狩猟塔トーレ・デ・ラ・パラーダの絵画装飾研究-16,17世紀のスペイン宮廷における君主教育と宮廷画家ディエゴ・ベラスケスとの関連から-

博物館学研究室

博物館学研究室では、今日的なミュージアム・ミッションに対応した新しい価値のあり方や創造について、資料・作品・標本に関する調査研究の方法論に基づきながら、フィールドワークを通して考察して行きます。博物館学的なアプローチの可能性を探りつつ、学芸員養成課程での基礎的な知識のバージョンアップを目指します。

研究室からのメッセージ

博物館は、不思議な存在です。

個人が博物館体験を語ることで、それが自分の心に合うような物語に組み立てられます。ときに、異なる体験をした他者が語りに加わることで、お互いの体験がより豊かなものになります。さらに、別の体験や身につけた知識によって、個人の博物館体験は編み直され、新たな物語を作っていきます。博物館で過ごす時間は、個人の心にこんなすてきな種を蒔いてくれます。

一方で、ユネスコ「ミュージアム勧告」(2015)、「文化芸術基本法」(2017)などからは、博物館に期待される価値が広がっていることがわかります。本質的な価値だけでなく、社会包摂の場としての役割、観光都市のイメージアップの道具としての役割から生まれる手段的価値が重視されています。社会の中の装置としての役割が広がっています。

こんなミクロで、マクロな世界を持つ博物館を研究対象とするのが、博物館学の魅力ではないでしょうか。

常設展を観ることで心の定点観測(河井寛次郎記念館(京都市))
展示の作り手になると別の博物館体験が(北大総合博物館「DISTANCE #学びと距離の物語」展)
幼稚園児はどんな博物館体験をするのか(北大総合博物館 入口)

教員紹介

  • 佐々木 亨 特任教授 SASAKI Toru
    研究分野: 博物館学、文化人類学
  • 久井 貴世 准教授 HISAI Atsuyo
    研究分野: 動物に関する歴史と文化、博物館学、歴史鳥類学
主な講義題目
  • 博物館と市民・地域社会
  • 動物と人の関係史
修士・博士研究テーマ例
  • 博物館における自然史資料の保護に関する研究 -展示資料の変退色挙動について-
  • 住民参加の地方史研究における地域博物館の位置付け―住民参加の自治体史編纂活動を中心に―
  • 博物館における地域連携活動の社会的効果-伊丹市昆虫館「鳴く虫と郷町」を対象とした実践事例から-
研究室ウェブサイト