彦伶

プロフィール

卓 彦伶 講師 / CHO Yenling
研究内容
  • 博物館の地域連携活動のあり方とその社会的効果の検証
  • 小規模博物館における市民主体運営のあり方
  • 博物館の社会的役割
研究分野
博物館学
キーワード
地域連携、市民協働、社会的効果、社会的役割
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/文化多様性論分野/博物館学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/文化多様性論講座/博物館学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/哲学・文化学コース/博物館学研究室
連絡先

研究室: 306
Email: taku*let.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
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Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
博物館学研究室卓 彦伶 講師

地域活性やまちの記憶の保管庫に
ミュージアムが持つ多彩な“顔”

私が大学院時代に通ったフィールドの伊丹市では、地元の昆虫館を中心に市内の文化施設や市民・商店会が2006年から「鳴く虫と郷町」事業に取り組んでいます。この事業が地域においてどういう社会的効果を上げているのか、ロジックモデルを用いて検証する試みもあれば、北海道士別市の朝日郷土資料室のようにボランティア組織に聞き取りをし、「自分たちのまちの記憶を残したい」という思いやそのアーカイブ活動を詳細に記録する試みも続けています。

こうした地域ごとに使命や役割が異なるミュージアムや関係者へのインタビューを通じて、「いろいろな人の記憶・思いを大事にできる場所」となりつつあるミュージアムへの解像度をさらに深めています。

毎年9月に開催される兵庫県伊丹市の「鳴く虫と郷町」。市民の「キリギリスハンター」が事前にハントした幼虫を伊丹市昆虫館が飼育し、イベント中に皆で鳴き声を楽しむなど市民参加型の活動が多い。
北海道士別市の朝日郷土資料室のボランティア組織は80代90代が元気に活動中。林業で盛んだったまちの歴史を伝える道具や民具を使い方とともに記録・保存している。

フィールドに選んだ以上、
その土地に責任がある

北海道は入植者によってまちが発展していったため、ミュージアムにその土地柄が色濃く反映されていると予測されます。それぞれの個性を大切にしながら、北海道ならではのミュージアムのあり方を一緒に探っていきませんか。

博物館学の佐々木亨先生のご指導を受けた私がひときわ鮮明に覚えているのは、「フィールドに選んだ以上、研究者はその地域に責任がある。自分たちの論文を書き上げることでその責任を果たすしかない」という教えです。私のようなミュージアムと地域連携をテーマにしている研究者にとっては、ことさら心に響く教えであり、この言葉とフィールドワークの大切さを、これから出会う学生の皆さんに繋げていきたいと思っています。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

私の研究は、ミュージアムと地域社会の関わりやその社会的効果に着目しています。これまで、特に小規模ミュージアムにおける市民主体運営のあり方とミュージアムの地域連携活動による社会的効果の測定について取り組んできました。最近では、ミュージアムに期待される役割やミュージアムが置かれている経営環境などミュージアム全体に関わる側面だけではなく、各現場で地域に向き合う学芸員の活動にも注目しています。

ミュージアムと地域社会の関係性を一言で言っても、地域における多様な主体との相互作用が交じり合っています。各地域の個性・特性に応じて、ミュージアムに求められる役割も変わってきます。そのため、研究を進める上で、ミュージアムの活動に注目するだけではなく、地域社会における多様な主体が求めるミュージアム像について把握するために、各地域の実情をするためのフィールドワークも重要視しています。

また、ミュージアムという場で活動しているボランティア、友の会や地域の多様な主体と市民の声、これらに寄り添う学芸員といった人々の思い・考え方も拾い上げていけるように意識していきたいです。

ミュージアムと地域社会の関係性、ミュージアムが地域社会にもたらす価値について関連分野の手法を取り入れながら探求してみませんか。

研究活動

略歴

台湾生まれ。台湾・東呉大学人文社会学部卒業。北海道大学大学院文学研究科修士課程および博士後期課程修了。博士(文学)。民間シンクタンクを経て、2022年より現職。

主要業績

  • 「博物館における評価の展開と手法に関するレビュー」『博物館学雑誌』49 (1):65-89、2023年
  • 「成長と老いとミュージアム-まちの老いと人びとの記憶-」、今村信隆・佐々木亨(編)『学芸員がミュージアムを変える! : 公共文化施設の地域力』 (水曜社)、第7章、2021年
  • 「博物館連携に関する研究動向とその実態 : 1970年代以降の学会誌の分析を中心に」『博物館学雑誌』44 (1):107-159、2018年
  • 「1970年代以降の博物館における連携活動に関する施策の変遷」『北海道大学大学院文学研究科研究論集』 17:1-29、2017

所属学会

  • 全日本博物館学会
  • 日本ミュージアム・マネージメント学会
  • 日本NPO学会