末森 晴賀

プロフィール

末森 晴賀 講師 / SUEMORI Haruka
研究内容

オスマン朝-ヨーロッパ間の「海賊」に関する取り決めや実際の「海賊」対応から、前近代オスマン朝の海上秩序を明らかにしています。また、「海賊」に攫われたムスリム捕虜の回想録や、20世紀初頭に至るまでオスマン朝社会で行われた「魔法」についても関心があります。

研究分野
オスマン朝・トルコを中心とする西アジア史
キーワード
オスマン朝、オスマン・ヨーロッパ関係、地中海
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/歴史学分野/東洋史学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/歴史学講座/東洋史学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/歴史学・人類学コース/東洋史学研究室
連絡先

Email: hsuemori*let.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)

研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。
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Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
東洋史学研究室末森 晴賀 講師

地中海をめぐる
前近代オスマン朝の対外関係

オスマン朝は、13世紀の終わりごろから20世紀初頭までの約600年間、中東やヨーロッパ、アフリカにまたがる広大な地域を統治した王朝です。モーツァルトの「トルコ行進曲」等にもその足跡が見られるように、近世・近代の世界史上重要な位置を占めた帝国であり、今日でも中東や東欧一帯にはその痕跡が残っています。

オスマン朝は諸外国と戦争を行う一方、友好国やその住民に対しては条約に基づき安全を保障していました。それでは、海上で友好国の人間に危害を加えたり、あるいは彼らから攻撃を受けた場合はどうなるでしょうか。関係する条約の規定や、各事例における規定の適用を分析して、オスマン朝の海上秩序を明らかにすることを目指しています。

トルコのティレにある19世紀前半に建てられたネジプ・パシャ図書館。貴重な史料の現物を見ることでデジタルデータからは得られない発見に出会うことも。
オスマン語はトルコ語の文法に、ペルシャ語やアラビア語の語彙が豊富に含まれている。史料言語の習得と読解の訓練は研究の基礎中の基礎。ゼミでの学びが活きてくる。

史料がもたらす「裏切り」が
歴史学研究の楽しみに

私の場合、初めからオスマン朝の海上秩序を研究しようと決めていたわけではありません。トルコ留学時代に現地の文書館や図書館で幅広く史料収集を行い、ジャンルを問わず読み進めていく中でこのテーマに出会うことができました。帰国間近に入手したムスリム捕虜の「冒険譚」は、マルタ騎士団に攫われたオスマン官人の回想録ですが、文書史料からは見えにくい捕虜個人の視点を考えるきっかけになりました。

歴史学は史料状況に左右されるので、自分の考えるテーマを研究できるとは限らないという制約がある一方、史料からは思ってもみなかった事実に遭遇することがあります。史料をめくるたびに「裏切られる」ことが研究の楽しみです。

メッセージ

わたしが学部生の頃、フランス留学中にマルセイユへ一人旅に行ったのですが、丘の上から眺める地中海が煌めいていて、何となく海の向こう側が知りたいと思いました。その後、関心の赴くままオスマン語等で書かれた様々な史料を読み進める中で、オスマン朝とヴェネツィアの間に生じた「海賊」事件に関する記事を見つけました。その時、オスマン朝の海上秩序というテーマが頭の中に浮かび上がってきたのです。今、「海賊」に攫われたムスリム捕虜による回想録やオスマン朝社会の「魔法」など、関心のあるテーマが他にいくつもあるのですが、すべて自分の感覚的な体験や縦横な史料読解が交差する中で出会えたものです。東洋史学を志す方には、ぜひ自分の中にある素直な感覚に向き合いつつ、手や足を動かして、これまで知られていなかった新しい「歴史事実」を掘り起こしていってもらえればと思います。

わたしの専門である西アジア史分野は、今でこそ独立した一分野として扱われることもありますが、日本ではもともと東洋史学の中で派生、発展してきた歴史があります。古典の読解力は多種多様な文章を理解する基本となるものであり、西アジア史を専攻した昔の先生には漢文の素養があることも珍しくありませんでした。わたし自身は漢文に全く歯が立たなかったのですが、同じ研究室にいる中国史の先生や院生、学生からは、史料の読解や分析の方法について多くを学び、それが今の研究につながっています。中国史と西アジア史の学生や院生が同じ場所に集い、一緒に勉強したり研究の話をできることが、本研究室の魅力だと考えています。

研究活動

略歴

2013年、北海道大学文学部卒業。2023年、北海道大学大学院文学研究科博士課程単位修得退学、博士(文学)取得。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2024年4月より現職。

主要業績

  • (単著)『ムスリム捕虜の語る近世の地中海-マルタの「海賊」とオスマン朝のはざまで-』風響社、2021年。

所属学会

  • 日本オリエント学会
  • 日本中東学会
  • 歴史学研究会
  • 日本イスラム協会

教育活動

授業担当(文学部)

  • 東洋史学
  • 東洋史学演習

授業担当(文学院)

  • 東洋史学特殊講義
  • 東洋史学特別演習

授業担当(全学教育)

  • 歴史の視座

おすすめの本

  • 宮崎市定著、礪波護編『中国文明論集』岩波書店、1995年
    本書に収録されている「中国の歴史思想」の章では、「東洋史学」とはどのような学問分野であるかが分かりやすく論じられている。広く東洋史学を志す人への道しるべとなる一冊。