21 北大人文学カフェ「注意と魅力の心理学勝手に動くワタシ、考えて決める私」開催されました

11月4日(土)紀伊國屋書店札幌本店1階インナーガーデンにて、第21回北大人文学カフェが開催されました。今回は「注意と魅力の心理学」と題し、話し手の河原 純一郎先生(文学研究科・心理システム科学講座)に、私たちのアタマの中でいつも起こっている、知らない間に動いている「ワタシ」と自覚的にきちんと動きたい「私」のせめぎ合いについて、「注意」と「魅力」の観点からお話ししていただきました。当日は100席ほどの会場に、約190人の方がおこしになり、多くの方に立ってご覧いただくなど大変ご不便をおかけいたしました。そのような中、たくさんの方に最後までご覧頂きましたこと、改めてお礼申し上げます。

第1部では、まず私たちの心の二重構造についてお話がありました。私たちの心は、直感的で無意識にはたらく「自動システム」と、考えて対応しようとする「意図システム」の二つから構成されています。普段私たちは、赤い色と「赤」という文字、青い色と「青」という文字とを直感的に結びつけて認識しています。ところがもし「赤」という文字が青い色で書かれていたらどうでしょうか。きっとそれを「あか」と読むべきか「あお」と読むべきか、一瞬躊躇するのではないでしょうか。この躊躇こそが、私たちの二つの心のシステムがせめぎあっている好例ともいえます。のようなせめぎあいのシチュエーションを、河原先生は、参加者の方々に実際に体験してもらいながら説明していきました。この体験の中で、参加された方々は、二つのシステムへの理解を深めました。

次に私たちの「注意」が、この二重システムから影響を受けていることについて話が進みました。河原先生はスマートフォンを用いた実験から、意図システムを用いてある作業に集中しようとする時、私たちの自動システムが、勝手に注意を分散してしまう仕組みを説明しました。スマートフォンは、ただ置いてあるだけで、私たちの注意が無意識のうちにそちらに向くように働かせてしまうのです。

さらに「魅力」について、河原先生は、近年花粉症やPM2.5対策に着用する人が増えているマスクに着目し、魅力とマスクの関係についてご自身の研究成果をお話されました。魅力度の違いがあるいくつかの顔写真にマスクをつけた時とつけない時で魅力度を測るという実験を通じて、マスクをすると平準化と不健康効果のために、顔の魅力は上がることはなくむしろ下げてしまうことが明らかとなりました。一方で、赤い色が直感的に人の魅力をあげるという心理学の実験結果についての説明があり、女性の魅力を上げるピンクのマスクにつながったところで、第1部が終了しました。

話し手の河原 純一郎先生
会場の参加者の方々に実験に参加してもらいながら、説明していきます。
スペースいっぱいまでまで立ち見の方で埋まっています。

第2部のQ&Aコーナーでは、心の二重システムと注意・魅力の関係について、第1部のお話を補足していただいた後、参加者の方々からの質問カードに答えていただきました。質問は、マスクには顔を隠すことで期待値による魅力アップの効果かあるのではないか、また、ピンクのマスクは男性の魅力も上げるかといった、マスクと魅力に関するものから、自動システムの働き、さらには認知科学の社会に対する役割にまで広がっていきました。いくつかの質問は、フロアから直接質問していただき、より深い理解につながりました。

会場から寄せられた質問カードを、河原先生と河原ゼミのゼミ生たちがテーマごとに分類していきます。
フロアからの質問に河原先生が回答します。

イベント終了後も多くの方から河原先生へ個別の質問が続き、普段の何気ない判断や行動の奥にある心の仕組みを理解するという今回のテーマへの関心の高さがうかがえました。

河原先生の研究成果に関するプレスリリースは関連リンクをご覧ください。