若手研究者支援セミナー「専門書出版への橋渡し博士論文のその先へⅡ」開催されました

12月5日(月)に、若手研究者支援セミナー(学術図書出版編)「専門書出版への橋渡し―博士論文のその先へⅡ」が開催されました。2013年度に初めてこのテーマでセミナーを開催し好評だったことを受け、今回新たな話題提供者をお迎えして2回目の開催となりました。当日は、博士論文執筆後の出版を目指す博士後期課程在籍者を中心に、多くの若手研究者が参加しました。

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まず、出版経験が豊富な櫻井 義秀先生(社会システム科学講座)と、科研費研究成果公開促進費の助成を受け博士論文をベースに出版された荒山 千恵さん(いしかり砂丘の風資料館・学芸員)のお二人から、ご自身の出版経験を交えた学術出版の特徴や出版の心構え等についてお話いただきました。次に、北大出版会の編集者である上野 和奈さんから、博士論文を出版するための留意点について、編集者の立場からお話がありました。最後に文学研究科・研究推進室長の森岡和子URA(リサーチ・アドミニストレーター)から出版助成に関する情報提供がありました。

3人の話題提供者のお話で共通していた点は、読者を想定して本を出版する、ということでした。出版図書の特徴は、たとえ学術専門書であっても、査読者や自分の専門領域の研究者に向けて書く研究論文とは異なり、市販され誰でも手にすることができることです。その開かれた状況の中で、自分の書いた本は誰に読んでもらいたいかを具体的に考えることによって、博士論文のアレンジの方法や完成までのスケジュール、発行部数の予測や出版社への企画書の作成、助成金応募の検討など出版のあらゆるステージがスタートするともいえるでしょう。

質疑応答では、フロアからの質問だけでなく、文学研究科の先生方からのコメントもありました。またセミナー後の個別相談会でも多くの質問が寄せられました。
アンケート結果では、ほとんどの参加者が満足だったと回答しました。若手研究者の皆さんの今後のキャリア・プランの中に「出版」が具体的にイメージできる機会となりました。

当日の配布資料がご入用の方は、研究推進室までお越しください。

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櫻井 義秀先生(社会システム科学講座)。自分の専門領域をどれくらい隣接分野に広げられるか、つまり他領域への地平の広げ方が大切と櫻井先生。またそれは、本が持続的に読まれていくことにつながるとお話されました。まずは、自身の専門領域を扱っている出版社での出版を目指して、編集者を説得できるような企画を立てるとよいだろうとアドバイスされました。また、大事なことはいつか本を出したいという熱い気持ちを持ち続けることだとお話されました。

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荒山 千恵さん(いしかり砂丘の風資料館)。『音の考古学』という著書を出版された荒山さん。考古学の中でも専門家の少ない音楽考古学という分野を、他分野の考古学者、さらには音楽学の研究者にも関心をもってもらいたいという思いを刊行まで大切にしてきたとお話されました。また、学術雑誌と出版書籍では、画像の許諾方法が異なることがあるので、十分に時間をもって手続きをするとよいとのアドバイスもありました。

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上野 和奈さん(北海道大学出版会)。本にするというのは、専門家コミュニティーを越えて外の世界に開かれたものとして流通させることであり、それこそが本の存在意義、と上野さん。まず企画書を書いてみるとよいですよとアドバイスがありました。

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文学研究科専門研究員向けの出版助成を紹介する森岡 和子さん(文学研究科URA)。アカデミック・ポストへの登竜門として是非応募してくださいと若手研究者にお話されました。この出版助成は採択されると、文学研究科・楡文叢書として北大出版会から出版されることになります。

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北方文化論講座の小杉 康先生。本という作品を作り上げるためには、書き方の工夫など自分自身のブラッシュアップも必要となるので、多くの若手研究者にチャレンジしてほしいとコメントされました。

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倫理学講座の田口 茂先生。一般向けにわかりやすく書くには、自分がその内容について明確に理解していないと書けないため、自分の学問内容を改めて問い直す良い機会になるとコメントされました。

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司会の佐々木 啓先生(宗教学・インド哲学講座)。ご自身の翻訳出版の経験から、自分でどんどん発信していけば、出版につながる人脈を作るきっかけになるとアドバイスがありました。