修士論文では今を語り、博士論文では時間の視野を広げ深めた

プロフィール

横濱 雄二さん(甲南女子大学 文学部 日本語日本文化学科 准教授)
北海道出身。北大文学部卒業後、大学院文学研究科に進学。歴史地域文化学専攻 日本文化論専修*にて映像文化を中心としたメディアミックスを研究。在学中に学振DC。2009年9月に博士(文学)を取得後、本学文学研究科映像・表現文化論専修助教を経て現職。映像文化、日本文学の授業を担当しつつ、研究領域を地域コンテンツにも広げる。
*在籍当時の専攻。現在は、改組され日本文化論専修は言語文学専攻となっています。

北大文学研究科を選んだ理由

私が大学院博士前期課程を受験したときには、まだ映像・表現文化論専修はなく、日本文化論専修を選びました。文学を中心とする日本の表現文化に興味があったため、近代文学の教授陣が充実している北大の日本文化論専修では、さまざまな考えに触れることができると考えたからです。その後、博士後期課程在学中に映像・表現文化論専修ができました。まさに自分自身の研究にぴったり合った学問領域が作られていくなかで学ぶことができたのは、なにものにもかえがたい、すばらしい経験でした。

大学院ではどんな研究を

現代日本の大衆文化、とりわけ映像や文学のメディアミックスについて研究しました。もちろん、ゼミや授業でそういった内容のものはありません。文学や映画、それらを分析するための理論など、ゼミでさまざまなことを学んで、それを生かしながら、現代日本の小説、映画、アニメーション、ラジオドラマなど、さまざまな作品を分析し、考察を深めていきました。背景には、1990年代後半から、アニメーションなど日本の現代文化に関する議論が文芸評論などの場で盛んになったことがあります。修士課程では、それらの新しい潮流を踏まえつつ、いくつかの作品を取り上げました。博士課程では、それらの議論では参照されていない過去のメディアミックスに注目しつつ、作品や事象を分析する枠組みを洗練させることを目指しました。

博士後期課程への進学理由

修士課程のときから、博士後期課程まで進むつもりでいました。その意味では、迷いなく進学しました。修士論文では最近の事象しか扱うことができなかったので、博士後期課程で時間的なパースペクティヴを広くとって考察を深めたいと思っていました。

北大文学研究科に進学してよかったこと

大学院での学びが、研究者としての自分を形づくりました。先生方からのご指導が学びの中で重要であるのは当然のことですが、同じくらい、ゼミあるいは勉強会で他の学生と議論し、切磋琢磨したことも、大学院での得難い経験です。

在学中大変だったことは

ひとつには、定期的に成果を公表していくことです。論文や学会発表などのかたちで自分の考察をまとめるのですが、思った通りに進むことはありません。とはいえ、成果を公表し他者の批評を経なければ独りよがりの研究になってしまいますから、なるべくさまざまな機会を探して、発表するように努力していました。もうひとつは、地理的な条件です。資料の調査にしても、学会などへの参加にしても、本州で行われるのが大半です。そのため、旅費や滞在費等の捻出、仕事を休む手配などもあり、気軽に出かけることはできませんでした。

修了後から現職への道のり

大学院博士課程在学中に学振DCになりました。その任期終了後も、在学しながら高校や大学、予備校などの非常勤講師をしながら博士論文につながる研究をつづけました。学位取得の翌年から2年間、映像・表現文化論専修の助教をつとめた後、現在の甲南女子大学文学部に赴任しました。助教としての経験、非常勤講師歴のほかに、文学・アニメーション・マンガの3領域にわたって幅広く研究業績があることが採用につながったと、後からうかがいました。

現在の仕事・研究内容

第9回地域コンテンツ研究会で研究発表をする横濱さん(右から2人目)
「作品の空間と実在の空間の関係再考」というタイトルで発表した(2016年9月10日 北海道大学にて)

日本語日本文化学科の教員として、卒業研究の指導はもちろん、「映像文化研究」と「日本現代の文学」という2種類の講義のほか、必修の「日本文学・文化入門」の近現代文学領域も担当しています。ゼミ生のニーズは多様です。文学や文芸作品にとどまらず、アニメーション、マンガ、コンピューターゲーム、ミュージカルなど、さまざまなメディア文化に興味を示す学生がおり、指導内容も多岐にわたります。研究では、文学と映画の相関関係を中心としたメディアミックスの考察を続けています。さらに映像作品の舞台を訪問するファン行動にも注目するなどして、作品の受容を研究領域に加えています。

大学院で学んだことは今の仕事に役に立っていますか

ゼミにおける議論、論文執筆のときに指導教員や先輩からいただいた指導やコメント、さらにそれをもとにした議論など、ディスカッションを繰り返した経験は、自分の研究者としての根幹をなしています。それは同時に、教員として学生に対してどのように接し、指導すべきかについての指針にもなっています。

今後の目標と夢

まずはこれまでの研究成果をとりまとめ、単著として公表したいと考えています。映像文化、表現文化は著しい発達を遂げており、多様な媒体で一つの作品を展開することはもはや当然の事態として受け止められています。この事象に対応した理論的枠組みを用意することが、これからも追究すべき課題です。

これから進学する皆さんへのメッセージ

道なき道を切り開くように、今までにない問題を見つけ、それを考究することは、なによりも知的興奮に満ちています。北大では、都会の喧噪を離れた静かな環境で、自分の関心をじっくり掘り下げ、研究を進めることができます。一方で、学会発表に対する旅費支援などの制度を利用して、積極的に外部と関わっていく姿勢を保ち続けることも重要です。独自の観点からの研究を広く世に問うていくことを目指して、がんばっていきましょう。

(2016年9月取材)