尊敬する教授陣から学んだ多角的な視野、分析スキル

プロフィール

小室 匠 さん(サービス系企業 人事系部署勤務)
北海道出身、3歳で神奈川県へ。神奈川県立鎌倉高校を卒業後、生物の進化に興味を持ち、筑波大学第2学群生物学類入学。卒業研究は昆虫の競争戦略の進化について、ゲーム理論を用いて実験的に検証するというもので、ゲーム理論を通じて動物行動の進化、特に人間の行動の進化について研究したいと思い、北海道大学大学院文学研究科 人間システム科学専攻行動システム科学専修に進学。行動経済学・進化心理学的領域の研究を行い、2010年3月修了。2010年4月より、サービス系企業の人事系部署にて勤務。

北大文学研究科(人間システム科学専攻)を選んだ理由

もともと恐竜が好きだったこともあり、生物の進化を学びたくて筑波大学の生物学類に入学しました。卒業研究のテーマは、マメゾウムシという昆虫の競争戦略の進化について、ゲーム理論を用いて実験的に検証するものでした。そこからゲーム理論を通じて動物行動の進化に興味を持つようになりました。その中でも特に、人間行動の進化について研究したいと思うようになりました。というのは、学部生当時、個々の研究成果が、どうしても固有の生物種の話の中で閉じてしまいがちな所に悩んでいました。その時、人間行動について研究すれば、生物学的領域以外にももっと広がりを持つのでは……、となんとなく感じたのがきっかけです。生物学の領域の中で学んだ”適応論”という概念を用いて、人間行動について研究したいと感じたためです。
当初は進化心理学を学べそうな複数の研究室に興味を持っていたのですが、最終的に人間システム科学専攻を選んだ決め手は亀田先生(現在東京大学大学院教授)の存在です。ゼミ見学に伺った際に、マメゾウムシの話に非常に興味を持ってくださったこと、そして亀田先生の洞察の深さ、クレバーさに憧れ、ここで学びたいと強く感じるようになりました。
札幌という地に憧れをもっていたことも決め手の一つでしたね。

大学院ではどんな研究を

「遅延リスクに対する選好の実証的検討」というテーマで研究を行っていました。遅延リスクとは、企業における納期の遅延、商品の配送の遅れなど、結果の実現時期が不確実な状況を指します。この遅延リスクの前で、人々がどのような意思決定をするのか、動物行動学と経済学からそれぞれ異なる予測理論が提唱されており、それらの妥当性の検証をしていました。

大学院に行ってよかったですか

大学院に行ってよかったと強く感じています。大学院で学んだことにより、間違いなく自分の視野が広がりました。社会心理学をはじめ、生物学、経済学と様々な学問領域に触れることで、一つの物事を様々な角度から考えるクセがついたことは、自分の大きな糧になったと感じています。なにより尊敬できる先生方の価値観、考え方を知ることができたのが、最も良い経験だったと思います。先生方の議論を聞いているだけでも本当に勉強になりました。大げさなことをいうと、大学院での経験により、社会や世の中の出来事についてより深い視点で見ることができるようになったと思います。

在学中、大変だったことは

遊びも研究も北大での生活はとても楽しかったので、これといって思いつきません。強いて挙げるとすると、英語が得意でなかったので、国際学会のポスターなどの発表資料作成は苦労しました。

修了後→現在までの道のり

修了後はサービス系の企業に就職しました。就職か進学か非常に悩みましたが、最終的に就職に決めたのは、研究とはまた違った媒体で「考える事の面白さ」、「想像力を刺激することの楽しさ」を伝えている様々な企業の存在を知ったためです。そういった企業の取り組みを自分の力でサポートしたいと思い、幾つかの企業にエントリーをしましたが、幸いにもその中の一つに内定をいただくことができました。

現在のお仕事の内容

大学院在学時、学部生の卒業パーティーにて

現在はサービス系の企業の人事系の部署におります。採用戦略の策定、およびITシステムの導入支援と言った業務をメインに行なっています。

 

大学院で学んだことは今のお仕事に役に立っていますか

非常に役に立っています。私が所属していた行動システム科学専修は「人と社会とのマイクローマクロ関係の解明」を標榜しています。現在、人事系の業務やITシステムを構築による業務環境の改善業務を行っておりますが、このとき、人事制度や環境が個人にもたらす影響、もしくは個人が制度・社会に与える影響の両面を考えることが非常に重要となります。大学院で学んだことで、より本質的、長期的な視点で業務に取り組めていると感じています。また、データ分析など大学院で培ったスキルが直接的に活かせることも多々あります。

今後の目標・夢

仕事面では、人事採用系の業務を拡張させ、より社会的な貢献度を高めることです。それ以外の夢は、もう一度札幌に住むことですね。

後輩のみなさんへのメッセージ

大学院の進学は人生の大きな選択の一つです。進学を検討している方は、大学院での勉強についていけるのか、就職は不利にならないか、など不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。事実、私も他大学から当研究科に進学する際は同様の不安を感じました。
進学にあたり、最も重要なのは、「学びたいこと」、「研究したいこと」があるかどうかだと感じます。そういったものを少しでもお持ちの方は、是非大学院に進学することをお勧めします。文学研究科では、尊敬できる先生方が最高の環境を与えてくれると思います。大学院在学中に学ぶこと、経験することは、きっと大きな糧になるはずです。
何より楽しいですよ!少なくとも私にとっては、札幌で過ごした在学期間はかけがえのない最高の時間でした。

(2016年8月取材)