豊富な史料!環境に恵まれた北大で研究も人脈も

プロフィール

ウグル・アルトゥン さん(トルコ Yozgat Bozok大学 助教)
トルコ出身。アンカラ大学言語歴史地理学部で修士号を取得後、2012年北海道大学大学院文学研究科博士後期課程に進学し、当時の歴史地域文化学専攻・日本史専修*にて日本軍参謀本部の情報活動と日本外交をバルカン戦争を中心に研究。2020年3月に博士(文学)を取得。修了後、トルコYozgat Bozok大学理文学部で助教として勤務。

*2019年4月の改組により、文学研究科は文学院に、歴史地域文化学専攻は人文学専攻に統合、日本史学専修は日本史学研究室になりました。

北大文学研究科を選んだ理由

トルコのアンカラ大学修士課程において日土関係史について研究している中で、文部科学省の奨学金で日本で研究を深める機会を得ました。トルコでは日本史に関する資料や書籍が限られていたため、日本への留学は研究を進める上で重要な分岐点となりました。アンカラ大学の修士課程における恩師であるH.Can ERKIN先生は北海道大学文学研究科の日本史学専修で修士号を取得されていました。ERKIN先生の紹介で、北大は旧帝国大学であり、日本有数の大きなキャンパス、素晴らしい研究環境に恵まれていることを知りました。博士後期課程はぜひ北海道大学に進学して、川口暁弘先生の下で研究を進めたいと思い、北大の日本史学専修を選択しました。

大学院ではどんな研究を

博士後期課程では、日土関係史において解明されていない課題「日本の参謀本部のトルコにおける情報活動」を研究し、それは日本外交においてどのように活用されたかを研究しました。

博士後期課程への進学理由

アンカラ大学修士課程では、小林哲之助の伝記を研究していました。小林は外務省職員であり、1911-1922年に留学のためイスタンブールに滞在し、情報活動を行っていました。トルコに駐在する武官の存在やその目的をより深く研究したかったため、また、文部科学省の奨学金を得ることができたため、史料が豊富な北大の博士後期課程に進学することにしました。

大学院に進学してよかったですか

北大への大学院進学は、自身の研究において非常に貴重な機会となりました。また、北大の外国人留学生をサポートする国際本部(現 国際連携機構)という組織がとても機能的で、非常に助けられました。運営に関わっていた先輩や後輩には感謝の気持ちでいっぱいです。北大博士後期課程に進学したからこそ、トルコにて現在の研究職の仕事に恵まれたと思います。在学中は、さまざまな分野において交友関係が広がり、現在も引き続き親交があります。北海道大学に留学して研究面だけではなく人との繋がりも深めることが出来、本当に良かったと思います。

在学中大変だったことは

入学当初は、トルコと日本の食文化の違いにより食事面で苦労しましたが、今は和食の大ファンとなりました。研究面においては史料の解読に苦労しましたが、日本史学研究室の古文書授業をはじめ、先輩や後輩のサポートを受け、それを乗り越えることが出来ました。

修了後から現職への道のり

2010年にトルコのYozgat Bozok大学で研究員として働き始めました。当時はアンカラ大学修士課程に所属しながらの入職でした。2011年に文部科学省の奨学金の試験に合格し、北海道大学へ留学することが決定しました。2012年にアンカラ大学で修士号を取得した後、北海道大学文学研究科日本史学専修の博士後期課程を受験し、合格。2020年に博士号を取得しました。博士号を取得後は元々研究員として勤めていたトルコYozgat Bozok大学でアカポスを得て、助教として働き始めました。

ウグル・アルトゥンさんの研究室のあるYozgat Bozok大学の建物

現在の仕事・研究内容

現在は、日本史のなかでも日本政治史、国際関係史に関する研究を中心に行っています。日本軍事史の分野にはまだまだ解明されていない課題が残されているため、参謀本部の海外情報活動について研究を進めたいと思っています。

これらの研究をするとともに、Yozgat Bozok大学の学生が立ち上げた「日本文化サークル」のアドバイザーとして日本文化に興味のある学生に日本語や日本文化について教えたり、日本文化祭を企画・運営・開催しています。

大学院で学んだことは今の仕事に役に立っていますか

現在の職場では、日本語や日本史の選択科目の授業を担当しており、大学院在学中に北大日本史学研究室の先生方から学んだことを活かすことが出来ています。これは日本史の研究方法のみならず、日本史の教え方にも及んでいます。

今後の目標と夢

トルコ国内で日本軍事史に関する研究を進めつつ、自身の研究内容・専門分野及び留学経験を活かして日本に関する内容をトルコにて教えることで、トルコと日本の懸け橋となる人材を育成していきたいです。また、日本軍事史への研究視点を広める観点から、日本国外で研究が活発に行われているアメリカなどに留学し、更に研究を進めることを目指しています。

これから進学する皆さんへのメッセージ

日本史学研究室の博士後期課程に進学を考えている皆さん。日本史を研究することは日本人の生態を知ることに繋がり、また研究を進めることによって自分の姿、これからの行方が見えてくると思います。教科書で学ぶことと客観的に研究することには違いがあり、この分野においては引き続き研究が行われるべきであると考えます。そうすることによって、日本の素晴らしい歴史と日本の心を理解することができると信じています。

(2023年8月取材)