若手研究者支援セミナー「学振特別研究員の申請に向けてはじめの一歩!」開催されました

12月21日(木)に、文学研究院研究推進委員会主催の若手研究者支援セミナー「学術振興会特別研究員DC・PD申請書の書き方セミナー2023~学振特別研究員の申請に向けて―はじめの一歩!~」をZoom開催しました。セミナーのサブタイトルは、2017年度から2021年度までの「準備は1年前から!」に代わり2022年度から学振ビギナー向けの「はじめの一歩!」と題し、対象者は学振特別研究員制度についてまだ詳しくない学部生や修士課程の大学院生のほか今年5月に初めて申請する大学院生や再挑戦する若手研究者です。

(特別研究員PD/DCの説明スライドと笹岡教授)

まず始めに、司会を務める研究推進委員会研究支援専門部会長の笹岡正俊教授(地域科学研究室)から本セミナーの開催主旨と”日本学術振興会特別研究員制度および特別研究員とは何か?”について説明がありました。学振特別研究員PDおよびDCの概要や採用された際の具体的なメリット、実際に申請する大まかな流れ、気を付けるべき点についてスライドにわかりやすくまとめられていました。

(スライドと清水さん)

話題提供の一人目は、博士後期課程1年の清水颯さん(哲学倫理学研究室)です。清水さんはそのものずばり「成功と失敗から学ぶ学振DCを勝ち抜く戦略」と題し、DC1で失敗(不採用)だった原因分析とDC2での成功(採用)に功を奏した改善点について、多くの申請者が気になる”業績数は重要なのか?”や”審査員が読んで記憶に残るコツとは?”について具体的な事例を紹介。今年5月にDC2に挑戦する人だけではなく、初めてDC1に挑戦する人にとっても参考になるアドバイスがたくさんありました。また、清水さんは人間知・脳・AI研究教育センター(CHAIN)が提供する大学院プログラムに参加しており、プログラムに参加することで得られる経験がどのように申請書作成に役立ったか、大学院生活や研究遂行する中でどのようなメリットがあるか、についても説明。参加者には、これから申請書を書く際に”どの項目”で”何をどのように書いたらよいか”について分かりやすい、お手本になる内容でした。

(スライドと平岡さん)

二人目は、同じく博士後期課程1年の平岡和さん(考古学研究室)から「学振DC1・DC2申請体験記」と題して話題提供いただきました。平岡さんからは募集要項を確認してから申請書を提出するまでのスケジュールと申請書を作成する中でやって良かったことについて、詳しい紹介がありました。特に、”いつごろ”、”どこまで”、”何をしていたのか”、について指導教員の先生とのやり取りや学振DCが不採択だった時の備えなど、初めて申請書を作成する人にとって知ることで安心できる、申請書を作成する前段階の準備の手助けになる内容が豊富でした。また、平岡さんは修士課程と博士後期課程で所属大学や研究課題を変えた経験から、大学や指導教員のほか研究課題が大きく変わることによるメリット・デメリット、どのような対処方法があるのか、それによる影響について体験談を語ってくれました。他大学や他部局から文学院に進学した人、修士課程から博士後期課程への進学を機に研究室や研究課題を変える人はもちろん、そうではない参加者にとっても、とても参考になるヒントが散りばめられたお話でした。

(スライドと鎌谷さん)

最後は学位取得後、アンビシャス特別助教(心理学研究室)として文学研究院で研究を続け昨年5月に申請した来年度の特別研究員PDに採用された鎌谷美希さんから「わかりやすさを磨くーC評価から採択されるまでの経験に基づいてー」と題し、申請書の”わかりやすさ”に焦点を絞って話題提供いただきました。まず最初に鎌谷さん自身が学振PD申請について考え始めた2021年9月時点に遡って2023年5月に申請するまでの時系列を図で示し、節目節目に何をしたか、について具体的に説明。特に、博士課程の大学院生にとっては今すぐ参考にできる内容でした。次に、鎌谷さんが同じ研究課題で作成した2022年5月の申請書(不採択)と2023年5月の申請書(採択)を並べ、同じ研究内容を書いた申請書で採用版・不採用版がどのように異なるのかを比べ、”わかりやすさを磨く”とはどうすることか、解説。これは、今回の学振PD/DCの申請書だけではなく、助成金やフェローシップなど他の申請書にも応用できそうでした。

続いて、専門分野や学年が異なる参加者からの多様な質問に対し、話題提供者それぞれから丁寧な回答をいただきました。質問者以外の参加者にも参考になる良い質問が多く、単純に学振特別研究員への申請だけではなくこれから研究者になる人、研究を続けたい人、にとって広く活用できるアドバイスや知見が共有され、予定の時間をオーバーしつつも参加者全体にとって有意義な質疑応答の時間となりました。

質疑応答の後は、教員コメンテーターの田村容子教授(中国文化論研究室)、近藤智彦准教授(哲学倫理学研究室) 、林寺正俊教授(宗教学インド哲学研究室)からコメントをいただきました。

 

      (林寺教授)         (田村教授)         (近藤准教授) 

▼教員からのコメント▼

  • 審査員は短期間で100件近く審査する
  • 近接領域ではあっても、研究手法が全く違う審査員が審査する可能性がある
  • 近からず、遠からず、の研究分野の人、例えば隣の研究室の人に読んでもらう
  • 分かりやすく書くことは大前提で、研究の深さや面白みをいかに審査員に伝わる文章にするか
  • 審査員の学問的好奇心に訴える書き方
  • R6年度申請書で新しく必要になった研究費計画を作成する際、説得力が必要
  • 全体の構造が分かりやすいことが大事、下線や太字の使い方を工夫すること
  • 採択率を考えると、不採択になっても自己否定する必要はないので、前向きにとらえて次のチャレンジにつなげることが大事

当日は、文学院に所属する修士課程や博士後期課程の大学院生を中心に教育学院や大学院進学予定の学部生とあわせて計32名の方が参加しました。アンケート結果では、回答した全員が「満足」または「まぁまぁ満足」と回答(有効回答22名・回収率68.75%)。自由筆記欄には、「制度の詳細や、具体的にいつ何をしたか、何に気をつけたかを実例も見せながらご説明いただきありがたい」、「話題提供者の方が、採択と不採択の申請書を比較しながらの説明はとても分かりやすかった」、「貴重な情報をご提供いただきどうもありがとうございました」、「実際に学振の書類申請をされたことのある先生のお話を聞くことができ、少し学振の申請に前向きになれた」等のコメントが寄せられました。

今年度も、実践編として「申請書の書き方相談会」を3月に開催します。当日は教員による話題提供と併せて、審査経験のある教員と学振特別研究員PD/DCに採用された方に相談員としてご協力いただき、個別相談会も設ける予定です。作成中の申請書(仮)や草案を持ち込み、相談員からアドバイスをもらうことも可能です。また、文学院に所属する方限定ですが、これまでに採択されたDC・PD・RPD・外国人特別研究員の申請書を研究推進室で閲覧することが可能です。ご希望の方は、本セミナーで配布した資料(10.【北大文学】学振特別研究員申請書閲覧確認書(様式2))に必要事項を記入のうえ、研究推進室へお申し込みください。

【若手研究者支援情報配信】
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