32 北大人文学カフェ哲学×心理学で考える 「共感」本当に良いことか?開催されました

2023年12月10日(日)、第32回北大人文学カフェが開催されました。今回は“哲学×心理学で考える 「共感」は本当に良いことか?” と題して、話し手の宮園健吾准教授(哲学倫理学研究室)が、一般的に良いものだとされている「共感」について、共感のネガティブな側面、共感するリスクについて問題提起し、哲学者や心理学者はこの問題を受けてどのような解決法を考えていけばよいのかについて話題提供しました。お話の後は参加者の皆さんと質疑応答を通して交流しました。当日は、オンラインを含め266名の方に参加いただき、事後視聴は186回ご覧いただきました。

第1部は、宮園先生のトークの時間です。前半では、心理学者ポール・ブルームが記した『反共感論』の内容について説明がありました。共感のネガティブな側面、共感するリスクについて、心理学実験や現実の事例を用いて紹介し、「共感はバイアスのかかったスポットライト」であることを解説していただきました。

トークの後半では、共感することによって生じるバイアスを解決するために、哲学者・心理学者がこの問題を受けてどのように考えていけばいいのか、9種類の解決法を示し。それぞれの利点と難点が紹介されました。宮園先生からは、どの解決法がよいという答えは提示されず、参加者の皆さんそれぞれが考え、よいと思う解決法とその理由を聞かせていただきたいというメッセージでトークは終了しました。

→参加者からいただいた「よいと思う解決法」のまとめは、この記事の末尾に掲載しています。

休憩時間にオンラインで寄せられた質問に目を通す宮園先生
会場から寄せられた質問カードの整理をする哲学倫理学研究室の学生さん

第2部は、参加者の皆さんからいただいた質問に宮園先生が回答していく対話コーナーでした。聞き手の哲学倫理学研究室の久保田琉惟さん(文学部4年生)が、いただいた質問を紹介し、それに宮園先生が順に回答していきました。

いただいた質問を紹介する久保田さん(左)と回答する宮園先生

共感で生じるバイアスはAIで解決可能か、「共感しすぎて辛い」場合の対処法、怒りは共感の一種ではないのか、共感力の前提としての想像力について、共感をばらけさせる方法、共感を受ける側への悪影響について、共感バイアスを解決できた事例、宮園先生が合理性や非合理性に関心を持った理由、など多くの質問をいただきました。すべての質問に回答できず申し訳ありませんでした。

参加された方からは、「共感は本当に良いことか、という普段考えないテーマについて、考えるきっかけを与えてくれた」「共感が大事とされがちな仕事なので、バイアスに気をつけなければと思った」「共感が哲学的にも心理学的にもたくさん研究され、批判的にも見られていることがわかった」「共感にバイアスがかかっていることを認識することの大切さ、その解決方法の難しさも理解できた」「共感によって道徳的に優先するべき順位を見誤るという話が印象に残った」「empathyとsympathyは異なる接頭辞によって意味が大きく異なることを再認識した」等、多くの感想をいただきました。どうもありがとうございました。

参加者からいただいた「よいと思う解決法」の回答結果