27 北大人文学カフェ「ゴミを知らなかったユーコン先住民人類学者が狩りをしながら考えた持続可能性」開催されました

2021年7月10日(土)、第27回北大人文学カフェが開催されました。コロナ禍の影響により、前回に続きオンライン開催となりました。今回は「ゴミを知らなかったユーコン先住民 ~人類学者が狩りをしながら考えた持続可能性」と題して、話し手の山口未花子准教授(文学研究院・文化人類学研究室)にご自身の調査地であるカナダ準州のユーコンの人々の暮らしを通じて考えた持続可能性についてお話しいただき、参加者の皆さんと質疑応答を通して交流しました。当日はおよそ70名の方にご参加いただきました。参加いただいた皆さまに感謝いたします。

第1部は、山口先生のお話の時間です。まず、山口先生がなぜユーコンで狩猟などの調査をしているのかについて、幼い頃から動物が好きだったことや、大学・大学院時代の研究を経て、現在のユーコン先住民の研究に至った経緯について説明がありました。次に、人と動物の人類学を研究していく上で、人と自然の初源的な関係としての狩猟採集民研究の意義について解説されました。

さらに、豊富な画像を用いて、ユーコンという土地の特徴、そこで暮らすユーコン先住民の暮らしを紹介していただきました。その中で、ユーコンの古老のことばに「私が生まれた家にはゴミ箱がなかった」という印象的な言葉に出会ったことから、ゴミというのはそもそも何なのかという問いをもち、ユーコンの人たちの「動物の体は利用できないところは森においてきて、利用できるところはすべて使う」という狩猟採集民としてのモノの捉え方を深く考えることになります。

個人や家族だけで生活に必要なものを賄えるジェネラリストとしての側面、平等主義で所有の概念がほとんどないことなど、山口先生自身がユーコンの人たちとともに狩猟をしながらおこなった調査を通して明らかにしてきたことを説明していただきました。狩猟採集民の生活が、人や動物を含む自然がつながり循環していく持続可能性なものであることと、ゴミが出ることが当たり前の現代の都市生活とを比較しながら、参加者の皆さんとともに考える機会になりました。

第2部は、参加者の皆さんからいただいた質問に山口先生が回答していく対話コーナーでした。聞き手の文化人類学研究室の大学院生・加賀田直子さんが、いただいた質問を紹介し、それに山口先生が順に回答していきました。

ユーコンの古老が維持している生活様式・文化は、若い世代にどう受け止められているのか、ユーコンの人たちは食べきれない食品をどう取り扱っているのか、地球温暖化の影響により、生息している動物・植物にどういった影響が出ているのか、環境問題に対してユーコンの人々はどのような対応をしているのか、野生動物を食べるリスクについて、ユーコン先住民における男女の分業・平等主義について、ユーコン先住民がゴミの概念を持たないことと、我々のもっている「還す」という概念の違いについてなど、多くの質問をいただきました。

いただいた質問に回答する山口先生(左)と質問を紹介する加賀田さん(右)

参加された方からは、「研究の動機から面白さまでこちらに伝わってきた」「ユーコンでの人々の生活について具体的に知ることができてよかった」「写真が豊富でイメージが湧きやすかった」「初めて聞いた風習や、独自の文化や思想なども知ることができて新鮮」「人間の本質、人と自然の初源的な関係に触れたお話が興味深かった」「さまざまな環境にあわせて生きる民族の知恵や考え方を知ることは、環境問題や社会問題の解決につながることもあるとわかった」等、多くの感想をいただきました。どうもありがとうございました。