思い切り好きなことを追究できる2年間、やりきった自信が今後にいきる

プロフィール

田島 有里絵 さん(北海道庁 勤務)
北海道札幌市出身。北海道立札幌南高校を卒業後、2008年北海道大学文学部入学。人間システム科学コースを選択し、心理システム科学講座にて卒業研究を行う。2012年、北海道大学文学研究科人間システム科学専攻専攻心理システム科学専修に入学。後悔が意思決定に及ぼす影響について研究。2014年3月修了、2014年4月より北海道庁に勤務。現在は、根室振興局で市町村の行財政業務を担当。

北大文学研究科(人間システム科学専攻)を選んだ理由

文学部を受験したのは、歴史や文学に興味があるという単純な理由だったのですが、調べてみると考古学や心理学など、これも文学部でやるの?と思うほど非常に多岐に渡る専攻があり、優柔不断な自分でもきっと様々な分野で知的充足感が得られる、と思ったためです。そのなかで人間システム科学専攻を選んだのは、どんな職業に就くに当たっても、必ず人と接するので、人の心の働きをきちんと学びたいと思ったことが大きな理由でした。

私の研究テーマを指導してくださっていた担当教官が退職され、研究室難民になっていた私に優しく声をかけてくださったのが川端先生でした。川端先生は私の研究テーマをそのまま続けるようご助言くださり、また、川端研究室では多くの留学生も受け入れているため、国際的な観点から心理学を学べるのでは、と思いました。

大学院ではどんな研究を

大学院では、「後悔が意思決定に及ぼす影響」について研究していました。自分が一切後悔をしない人生を送ってきたため、どういうときに強く後悔するのだろうか、後悔しやすい人っているのだろうか?という点に興味を持っていました。修士課程は2年間という短い期間ですので、人の性格を5パターンに分け、後悔のしやすさと関連はあるのか、という点に絞って研究を行いました。

大学院に行ってよかったですか

大学院に入る前は、友人より遅く社会に出ることへの漠然とした不安や、就職先が絞られてしまうことへの不安がありましたが、卒業して思うことは、人生のたった短い2年間の遅れくらいなんてことはない、思いっきり好きなことができてよかったな、ということです。きっと、大学の4年間だけでは自分の研究に納得ができず、「大学で学んだのはこんなものか」という思いで卒業してしまったと思います。また、学生生活の延長により、就職活動を行わずに済んだ大学3~4年生の貴重な時間を、海外旅行など自分の見聞を広める活動に充てることができたのもとても良かったです。

在学中、大変だったことはありましたか

大変だった記憶は特にありません。

修了後→現在までの道のり

最初は大学院で学んだことを生かして、マーケティングリサーチの会社への就職を志望していました。しかし、東京や大阪にしか会社がないところがほとんどで、生まれも育ちも北海道の私は、面接が進む度に「本当に北海道を離れてもいいのか?」と自問するようになりました。その気持ちが出たのか、第一志望の会社の最終面接で不合格となったため、道内で就職活動を行うことを決めました。

就職活動をするなかで、地方の学生は立地的にも情報的にも不利であることを痛感し、こうした地域格差を埋めたいと思ったこと、また、道民の意思決定を支えたいという思いから、北海道庁を受験することを決めました。決意したのが大学院2年生の夏という非常に遅い時期でしたが、幸い北海道庁は秋採用の試験があったため、就職浪人をすることもなく無事卒業を迎えました。

現在のお仕事の内容

修了後3年間は北海道庁の本庁保健福祉部で高齢者・障がい者施設の指導・監督業務を行い、現在は根室振興局で市町村の行財政に関わるお仕事をしています。

 

大学院で学んだことは今のお仕事に役に立っていますか

業務で心理学の知識を使う場面は残念ながらまだないのですが、質問紙の作成方法や統計の知識は非常に役立っています。

今後の目標・夢

生活する上で人が行う意思決定にはさまざまなものがあります。「生きる」という生命の根幹を支えるものから、「この分野で働く」「この商品を売りたい」といった生活を支えるもの、また、「北海道をこう良くしていきたい」「北海道の将来のためにこれをしたい」といった未来を支えられるもの。行政の業務では、保健福祉、観光労働、経済、総合政策…といった広い分野で道民の皆さまと関わることができるので、行政職員の立場からサポートできることに限りはありますが、道民一人ひとりが自由に意思決定できるよう少しでも支えていけたら、と思います。

後輩のみなさんへのメッセージ

文系で大学院に進学?就職はだいじょうぶなの?と思われている方はたくさんいらっしゃると思います。たしかに民間企業のなかには、文系は学士しか採用しないと名言している会社もあります。ですが、どうしてもその企業に入りたいというのでなければ、絶対に進学することをおすすめします。

大学院修了後に民間企業等に就職する場合、大学院で過ごす時間は、人生で自分の興味を思いっきり追求できる最後の時間になると思います(もちろん就職してからもできないことはないですが、なにせ時間がない!)。

長い人生のたった2年、寄り道でもなんでもありません。胸を張って「これをやった!」と言えるものがあれば、就職活動の際のエピソード作成にも困りませんし、なによりその自信は今後の人生の支えになります。見えない将来を不安に思うより、目の前の興味を追求してください。絶対にだいじょうぶです。皆さまの夢を応援しています!

(2018年8月取材)