フィールドワーク培った考える力と人とつながる

プロフィール

李 婧瑜 さん(日本電気株式会社(NEC) 勤務)
中国出身。地元の高校の文系で学び、北京科技大学の外国語学部日本語学科に進学。大学4年生の時に北海道大学に交換留学し、文学部で学んだ社会学やフィールドワークの手法に関心をもつ。文学部研究生を経て2012年、北海道大学文学研究科人間システム科学専攻地域システム科学専修*に入学。若者のボランティア活動をテーマにフィールドワークを主体とした研究を行う。2014年3月修了、同年4月よりNECに勤務。

*2019年4月の改組により、文学研究科は文学院に、人間システム科学専攻は人間科学専攻に、地域システム科学専修は地域科学研究室になりました。

北大文学研究科(人間システム科学専攻)を選んだ理由

理由は2つあります。

一つ目は勉強・研究の手法です。ゼミやフィールドワークという主体的に参加する形式は、私にとって刺激的で魅力的でした。中国での学部時代は座学中心でしたが、自分はどちらかというと好奇心の強い方で、身をもって体験し、自ら調べたり聞いたりして学ぶことが好きでした。地域システム科学講座は特にフィールドに出る機会が多く、知らない地域にいっぱい飛び込んで、多様な生き方や価値観を持つ人と出会い、生の声を聞いて学ぶことができました。

二つ目は研究テーマです。これについては、以下で詳しく説明します。

大学院ではどんな研究を

若者ボランティアの継続的参加を支える仕組みをテーマに、札幌に拠点を置くNPO法人ezorockの事例を取り上げて研究しました。

中国で過ごした大学時代、学生ボランティアに参加した経験があり、日本でも似た活動をしたくて探しているうちに、ezorockなどのNPO団体に出会いました。中国で経験して認識していた学生ボランティアと比べると、日本の場合、NPO・ボランティアならではのボトムアップのカラーが強く、継続参加のハードルが高いことに気づきました。そこに着目し、参加型のフィールドワークを実践しつつ研究を行いました。

大学院に行ってよかったですか

よかったです。大学院で研究した経験は、キャリア形成においても自身の価値観形成にもメリットが大きかったと思います。

また、研究室やフィールドワークで出会った仲間は今でも何らかの形でつながっており、支えあったり、お互いに刺激を与えあったりしています。

在学中、大変だったことは

フィールドワークは相手と信頼関係を築いた上での調査であり、外国人の自分がスムーズに活動に参加し、状況を理解するまでは時間がかかりました。ezorockの方々は、代表からメンバーにいたるまで、みなさん非常に調査に協力的で、ある意味私は彼らに支えられながら研究することができました。

入学前は、学業を最優先にしながらも、アルバイトで学費を稼ぐことを想定していましたが、思った以上に忙しく大変な日々でした。幸い奨学金や学内バイトなどを通して様々な援助をいただき、最終的に学業に専念できたのはよかったです。

修了後→現在までの道のり

元々日本のメーカーに興味があり、文系でも専攻を問わず採用され、活躍できるという可能性に魅力を感じて、日本で就職してみようと考えました。ITやデジタル化の力で社会や人々の生活をよりよくする仕事に携わりたいと考え、その業種に絞って就職活動を行いました。

内定が決まっている先輩留学生からいろいろ話を聞き、日本における就活の流れや留学生の進路の可能性について情報収集しました。就活中は、精神的に辛く諦めたい時期もありました。今から考えると、当時は自分自身に対する理解が弱く、自己分析やアピールが中途半端だったところがあったように思います。面接時にアピールするエピソードは、留学生ならではの自分の強みを盛り込むようにしました。北大の関係者や社会人の方からもアドバイスをいただきつつ、面接官に「伝わる表現」を磨きました。最後まで諦めず就活を続けて、志望していた現在の会社に内定をいただきました。

入社直後の配属は経営管理部門であり、管理会計や経理の仕事に従事し、これまで学んできたこととは、違った領域のことに取り組みました。仕事を通して、事業管理やデータ処理・分析の興味深さを理解できるようになり、やりがいも感じるようになりました。しかし、長期的なキャリアプランを考えると、若いうちに事業やプロジェクトに関わる仕事したいと考え、4年目から現在の海外向け営業を希望し異動しました。

現在のお仕事の内容

海外顧客と次世代店舗・次期システムについて議論するワークショップにて。担当営業として司会進行と内容説明を行いました。

海外のリテール顧客向けに、店舗運営を支えるIT関連システムとサービスを提供・提案しています。近年では消費者のライフスタイルは日々進化して多様化されています。このような中、私はリテール顧客の戦略パートナーとなり、小売業の将来像を描きながら、ITを活かしたソリューションを提案しています。

大学院で学んだことは今のお仕事に役に立っていますか

修士の研究は自ら深堀したいテーマを探し、シナリオを描き、研究・調査して結論を導くプロセスです。仕事にも同じことが求められます。修士時代の研究テーマは私にとってかなり挑戦的で、2年間で完璧に理解、解明できたわけありませんが、考える力や、人に協力してもらって推進する力などを身に付け、仕事にも活かせていると思います。

今後の目標・夢

仕事面では、お客様にとって価値のあるソリューションを提案することはもちろん、さらに、社会にとって持続可能という観点で事業の在り方を考え、その方向に影響を与えられる存在になりたいと思います。
また、プライベートでは多趣味な方なので、常に新しいことを挑戦し、より良い自分になることを意識して成長していきたいと思います。

後輩のみなさんへのメッセージ

進学を考えたときに大事にしていた軸は二つあります。
一つ目は自分がやりたい研究テーマの選定です。私の所属した地域科学研究室はテーマ選定に比較的に自由度が高く、指導教員の宮内先生をはじめ研究室の先生方が全力で応援・指導していただけたのは非常にありがたかったです。
もう一つは出会う仲間です。活気のある「研究室」という場所で、出会った仲間とともに学問の話や研究ノウハウについて交流することで、視座を高めることはもちろん、メンタル面でも支えあうことができ、とても心強い存在でした。
みなさんも、北大文学院で情熱を傾けられる研究テーマと素晴らしい仲間に出会ってみませんか。

(2020年9月取材)