都賢娥 さん 韓国 博士後期課程2

TOH Hyunah, Korea / Doctoral Course

After hearing a presentation from graduate students studying under Professor Kato at a conference in Korea about Japanese language, I decided that I wanted to come and study pragmatics. One point that was helpful for me is that, in my research room, we do not only study pragmatics. Rather, we research syntactic pragmatics, which combines both pragmatics and syntax. I currently have many chances for discussion with both Japanese students and international students from various countries, so I have found my research environment to be quite good.

韓国で開催された日本語学会で、加藤先生が指導される院生さんの研究発表を聞いて、語用論の勉強をしたいと思いました。研究室では、語用論だけでなく文法も考慮した統語語用論の研究ができてよかったと思います。日本人やさまざまな国籍の留学生とともに、日本語についてディスカッションできるのでとてもよい研究環境です。

日本に来られたのはいつですか

父が東北大学に留学していた関係で、生まれてすぐ家族で来日し、7年間日本で過ごしました。保育園では日本語、家庭では韓国語のバイリンガル生活でした。自分にとって日本語を勉強することがとても自然だったので、韓国の大学でも日本語を学びました。2013年度、忠南大学3年生の時に、日本語・日本文化研修生というプログラムの交換留学生として1年間北海道大学で学びました。忠南大学の修士課程修了後、2017年10月に研究生として文学研究科に入学し、2018年度から博士後期課程に進学しました。

現在の研究テーマを教えてください

加藤重広先生のもとで、日本語の配慮表現について研究しています。配慮表現としては、「ちょっと」のような前置き的な表現など、様々なものがありますが、私は、相手や場面に配慮して言葉を適切に選択するという観点から表現を取り上げています。例えば、普段は名前で呼んでいる人が、ある場面において急に「あなた」という表現に変える場合、どういう意図で使っているのかを考えます。それが相手に忠告、アドバイスするような場合、相手の名前を出して直接的に言うのではなく、少し距離を置いた「あなた」を使う意図について考えています。

なぜ留学先に北大文学研究科を選んだのですか

交換留学先を選ぶ時に、日本語が学べるプログラムがある候補大学をリストアップしました。その中で、北大は比較的方言がきつくない地域にあり、2013年当時は韓国では北海道はそれ程知られていなかったので未知の領域を知りたいと思い選びました。その時の北大の印象がとてもよくて、大学院を選ぶひとつのきっかけになりました。修士の時、忠南大学で日本語学会が開催され、その時加藤先生の研究室の先輩達が語用論に関する研究発表をされました。その発表を聞いて、加藤先生の研究室で語用論の勉強をしたいと思いました。

文学研究科で学んでよかったことは何ですか

最初は、語用論だけで研究ができると思っていました。でも加藤先生は統語語用論という統語論と語用論を組み合わせた研究手法をとられます。文脈を重視する語用論だけ、または文法を重視する統語論だけでは解釈が偏ることもあるかもしれませんが、統語語用論という両者をミックスした観点からは、両方を考慮した研究ができてよいと思います。表現を解釈する時に、人間関係や場面による影響もありますが、その表現自体がもっている文法的な要素や意味も関わってきますから、両方を扱うことが重要だということがここで学べてよかったです。
研究室は、日本人、中国人、韓国人をはじめいろいろな国の学生がいます。普段気になっている表現を日本人学生に聞いたりできますし、研究室の学生の自主ゼミも行っています。このゼミは、英語の課題図書を読んで日本語でディスカッションするので、英語を読むことと日本語で自分の意見を表現することの両方のトレーニングができます。

日本・札幌の暮らしはどうですか

札幌と実家のある大田は姉妹都市で、住みやすく街の雰囲気も似ています。札幌は身近なところで買い物やリフレッシュできる場所があり、さまざまな用事が近くで事足りるので便利です。大田は温暖なので、札幌の雪の量は少しびっくりしましたね。

困ったことはありませんでしたか

部屋を探すとき、韓国との違いに戸惑いました。日本では2月から3月の上旬に部屋探しをするものだと知らなくて、3月末に探し始めたときには大学の近くにはいい物件がありませんでした。韓国では家具付きの部屋が標準ですが、日本では家具や電化製品を買いそろえなければならないことも驚きでした。

あってよかったサポートは何ですか

サポーターは、文学研究科内の施設や研究室、図書館などの案内がありがたかったです。昨年秋からは、自分がサポーターとして新しい留学生の案内をしています。
チューターは、研究計画書などを書くときに日本語のチェックをしていただいたり、記事を読んでその内容を話し合ったりできるので、とても勉強になります。
逆にあったらよかったサポートとしては、来日前に部屋探しの情報提供があればいいですね。

海外から北大文学院を目指す人へのメッセージをお願いします

国を離れて日本の新しい環境で、今まで勉強してこなかった新しい分野を学ぶこともあると思います。新しい分野について恐れず挑戦する意識をもてば、うまくいくと思います。特に日本語を勉強する方は、自国内でも積極的に学会に参加し、今どういう分野が注目されているのか、研究動向を調べて留学先を決めるといいと思います。

(2019年4月取材)