山口 未花子

プロフィール

山口 未花子 准教授 / YAMAGUCHI Mikako
研究内容

文化人類学、生態人類学の分野から「動物」について研究しています。主なフィールドはカナダのユーコン準州。先住民のカスカや内陸トリンギットの人々と動物との関わりについて狩猟や芸術、信仰などに焦点を当てながら調査を続けています。その他に日本の小型沿岸捕鯨、八重山のイノシシ猟なども対象にしています。

研究分野
人類学、自然誌、動物論、狩猟研究、北米先住民研究
キーワード
米先住民研究、八重山の自然資源利用、動物、 表象 、狩猟
文学研究院 所属部門/分野/研究室
人文学部門/文化多様性論分野/文化人類学研究室
文学院 担当専攻/講座/研究室
人文学専攻/文化多様性論講座/文化人類学研究室
文学部 担当コース/研究室
人文科学科/歴史学・人類学コース/文化人類学研究室
関連リンク

Lab.letters

Lab.letters 研究室からのメッセージ
文化人類学研究室山口 未花子 准教授

動物との関わりを探り
北方の狩猟採集民に密着

動物と人との関わりを知りたい私が研究テーマに狩猟採集民を選んだのは、動物のことを最も熟知している猟師さんにお話を聞くのが一番だと思ったから。狩猟採集民にとって動物は食料や衣類、角・革を使う工芸品にもなれば、歌や文化、宗教観などあらゆる面で深く関わっています。これらの関心事を全て受け止めてくれる、懐の深い文化人類学が“何でも知りたい”私には向いていたのだと思います。同時に寒冷地ほど暮らしの中の動物への依存度が高くなることを考え、日本で北方先住民の研究をするならば、やはり北海道大学が理想の選択肢。フィールド経験が豊富な先生方や充実した図書資料、また現地に近い気候も含めて、これ以上ない研究環境に身を置いています。

高校時代から描きためているフィールドノート。調査では「何でも記録する」。右上のラビットファー付きベビーシューズは作り方を教わって自作した。
しとめたヘラジカはその場で解体し、気管は木の枝にかけてくる。「風がそこを通ると気管にとどまった霊が息を吹き返し、また肉や皮をつけてヘラジカになって戻ってきてくれる」という言い伝えがあるからだ。トップ画像の手描きイラストはこの話を聞いて描いたもの。

人から受け取り、人へ伝える
文化人類学の本質に触れて

カナダでは先住民カスカの古老の狩猟に同行し、自分も見習い猟師として狩猟の技術や動物に関する知識について経験的に教わりました。その方だけが持つ知や技を教わる身としては、しっかり“受け取った”という成果を出したいし、その成果を見てもらいたい。その思いでともに過ごした日々でした。

そうした間柄でしたから、私が大学教員の職に就いたとお知らせしたとき、すごく喜んでくれたんです。自分の教え子である私がさらにまた誰かに伝承する立場になったことが嬉しかったのだと思います。そのときに初めて“人から学ぶ”文化人類学の本質に触れ、カスカの古老から私へ、私から皆さんへと教えを受け継いでいくという自分の役割に自覚がもてたような気がしています。

(聞き手・構成 佐藤優子)

メッセージ

もともと動物生態学を学んでいた私が人類学の世界に飛び込んでまず感じたのは、「自由すぎる」学問であるということでした。「芸術」人類学、「言語」人類学、「宗教」人類学、「ジェンダー」人類学など人類学の頭に文字をつければそれはすべて人類学のフィールドになってしまいます。研究方法にも確固とした方法論があるわけではなく、再現性も問われません(問えませんといった方が正しいかもしれません)。そうした自由さは人類学の大きな魅力であると同時に、外から見て少しわかり難いものという印象を与えるかもしれません。

しかし人類学の世界に身を置く中で、人類学にとってどうしても外せないもの、というところも見えてきました。私が考えるこれだけはというものの一つはフィールドに身をおくこと、そして遠近法をつかって物事をみる、ということです。フィールドは人類学者にとってのアイデンティティともいえる大事なものです。それが複数の人も一つだけの人もいますが、そこに身を置き、頭だけでなく経験的に学んだところから見えてくるものが人類学に独自の視点をもたらしてくれています。そして遠近法をつかって物事を見ること、これも人類学の対象である「人間」や「文化」を見るときにとても大切なことだと思います。遠近法とは、単に自分になじみのない異文化と自文化を比較するというだけではなく、例えば人間を人類史の中に位置づけてみてみるような見方をいいます。

そうやってフィールドワークを続けていると遠近の遠のほうにあったはずの異文化が、気が付けばとても近いものに感じられてくるというのも人類学の醍醐味の一つではないでしょうか?私にとっても10年以上通っているカナダのフィールドはいまや第二の故郷です。近年では、フィールドに観察者として入るだけでなく、技術を習得したり、現地の生活向上のための手助けをするなど、積極的なかかわりを持つ若手の人類学者も増えています。こうした経験的な学びは、確実に学ぶ者の視点を広げ、経験的に得られた理解はその後の人生の中でしっかりとした指針になると思います。研究者を目指す人もそうでない人も、興味を持った方はぜひ一度文化人類学研究室を覗きに来てください。

研究活動

略歴

自由の森学園を卒業後、奈良教育大学で動物生態学を学び、修士から北海道大学、同大学院博士課程修了、博士号修得。東北大学東北アジア研究センター、北九州市立大学、岐阜大学を経て北海道大学文学研究院で勤務。

主要業績

著書
  • ‛A Struggle for Co-existence between the Euro-Canadians and the Kaska First Nationss’ (pp.211-225)“Continuity, Symbiosis, and the Mind in Traditional Cultures of Modern Societies(現代社会における伝統文化の連続、共生、精神)” Yamada Takako(eds.), Hokkaido University Press, 2011年。
  • 「動物と話す人々」(pp.4-28)『来るべき人類学5:人間と動物』奥野克巳・山口未花子・近藤祉秋(編)、春風社、2012年。
  • 『ヘラジカの贈り物-北方狩猟民カスカと動物の自然誌-』春風社、2014年。
  • 「牡鹿半島の集落における祭り復興の三つの型」(pp.90-99)『無形民俗文化財が被災するということ:東日本大震災と宮城県沿岸部地域社会の民俗誌 』高倉浩樹・滝澤克彦(編)、新泉社、2014年。
  • 「動物遺骸をめぐる対話:大阪市立自然史博物館における〈ホネホネサミット〉」(pp.57-79『展示する人類学:日本と異文化をつなぐ対話』高倉浩樹(編)、昭和堂、2015年。
  • 「カスカの古老と絵をかく人類学者」(pp.156-169)『フィールドノート古今東西 』梶丸岳・丹羽朋子・椎野若菜(編)、古今書院、2016年。
  • 「狩猟と儀礼 ― 動物殺しに見るカナダ先住民カスカの動物観」(pp.137-167) 『動物殺しの民族誌』シンジルト・奥野克己(編)、昭和堂、2016年。
  • 「生態 環境と生活-文化はなぜ多様なのか」(pp.79-101)『新版 文化人類学のレッスン フィールドからの出発』梅屋潔・シンジルト(編)、学陽書房、2017年。
論文
  • 「クジラとヒトを結ぶもの‐日本における小型沿岸捕鯨活動の今日的展開と砲手の役割」、『エコソフィア』、第19号、pp.86-105、2007年。
  • 「京都府南部里山地帯におけるニホンノウサギ(Lepus Brachyurus)による冬期の土地利用」、(山口未花子・鳥居春巳・樋口輔三郎著)『森林野生動物研究会誌』、33号、pp.12-19、2008年。
  • 「Part of the Animal -カナダ先住民カスカと動物との関係の諸相-」『文化人類学』、76-4、pp.398-416文化人類学会、2012年。 

教育活動

授業担当(文学部)

  • 文化人類学
  • 文化人類学演習

授業担当(文学院)

  • 文化人類学特別演習