プロフィール
- 研究内容
自然と人間、生物多様性と文化多様性のつながりを捉えることができる枠組みを、「いのち」「自発性」「多様性」「脱植民地化」「平和」をキーワードに探求。
そのために森林再生、土地に根ざした農耕と種子の保全などの具体例を、地球各地の現場を歩きながら、エスノグラフィーのアプローチで調べている。
- 研究分野
- 人類学、自発性研究、平和研究、生命論、エスノグラフィー論
- キーワード
- 平和、自然、いのち、自発性、現場
- 文学研究院 所属部門/分野/研究室
- 人文学部門/文化多様性論分野/文化人類学研究室
- 文学院 担当専攻/講座/研究室
- 人文学専攻/文化多様性論講座/文化人類学研究室
- 文学部 担当コース/研究室
- 人文科学科/歴史学・人類学コース/文化人類学研究室
- 連絡先
Email: oda*let.hokudai.ac.jp
(*を半角@に変えて入力ください)研究生を希望される外国人留学生(日本在住者をふくむ)は、「研究生出願要項【外国人留学生】」に従って、定められた期間に応募してください。教員に直接メールを送信しても返信はありません。- 関連リンク
Lab.letters
南極基地でも宇宙でも
エスノグラフィーの現場は無限
近年、注目が高まる「エスノグラフィー」とは、研究対象となる地域や集団の「現場」に立脚した方法論です。調査協力者が実際にどのような生活、活動をしているのか、研究者自身が現場に入り込み行動をともにすることで詳細を明らかにしていきます。南極基地でもスペースシャトルの中でも、人間が活動している現場ならどこでもエスノグラフィーの対象となる可能性を持っています。過去の指導学生が選んだ現場は高崎市のフィルムコミッション、世界自然遺産・小笠原諸島や被爆者団体など十人十色、各自が自分の中にある関心を掘り下げていきました。実践者であるエスノグラファーは、いわば社会の現場と学問研究の領域を行き交いする橋渡し役。活動する文化人類学者として持ち前の好奇心を存分に発揮できます。
採用担当者の心をつかむ現場体験
市場調査や防災対策にも応用可能
エスノグラフィーの強みは、現場で起きている事象を読み解き、論理性をもって体系化できるところ。これはそのまま就職活動の大きなアピールポイントになります。昨今は、米国に続き日本でも市場調査や商品開発にエスノグラファーを登用する企業が出てきました。大震災の経験などから学ぶ「災害エスノグラフィー」に代表されるように、今後社会でこの方法論の需要はますます拡大していくことを確信しています。研究と並行しながら人間的な視野を広げてくれる点でも、社会とあなた自身を結ぶエスノグラフィーの醍醐味が体感できるでしょう。
(聞き手・構成 佐藤優子)
メッセージ
私見では、文化人類学は何よりも「現場」の学問です。人びとが仕事し、活動し、生活をする具体的な現場の理解を目指します。そしてその現場の視点から、既存の固まったものの見方に揺さぶりをかけ、新しい世界像を提示します。その方法論は「エスノグラフィー」と呼ばれてきました。
現場を理解し、そこの当事者の声をよく聴いてものごとを進めることは、研究だけでなく、むしろ実社会においてこそ大切です。その方法論を身につけてもらうための指導を、私は学部の「文化人類学演習」や大学院の「文化人類学特別演習」で行なっています。
私が近年テーマとしているのは「平和」そして「自然」です。硬直化した「平和」に対する考え方とは違った実践に、ヨーロッパ各地の「平和の現場」を歩くと出会います。また、人間と切り離すことができない「生きた自然」の現場にも関心を寄せています。人びとの現場と経験に根ざした知識や智慧を明らかにするための調査を続けています。そこにはいつも発見の喜びと感動があります。
文系の大学院から民間への就職という道は十分現実的です。文化人類学の知識と方法とを本当に習得しようと思ったら、やはり大学院に進学して、自らの研究課題にじっくり取り組む必要があります。私たちの研究室では、修士課程を修了してから就職するケースも多いです。修士課程で学んだことを面接で述べて評価され、希望の職種に就く人たちもいます。むろん企業・官庁への就職だけが進路ではなく、多様な生き方を文化人類学を通して知ることができるでしょう。社会の現場で、文化人類学とエスノグラフィーとを活かしたいという志をもった人たちを心から歓迎します。
研究活動
略歴
大阪大学人間科学部卒業の後、同大学院修士課程修了。ハイデルベルク大学で博士号取得。2001年4月より北海道大学文学研究科・文学研究院で勤務。
主要業績
- 『生きる智慧はフィールドで学んだ― 現代人類学入門』山口 未花子、ケイトリン コーカー、小田 博志(著)、ナカニシヤ出版、2023年
- 『エスノグラフィー入門—<現場>を質的研究する』小田博志著、春秋社
- 『質的研究の方法—いのちの〈現場〉を読みとく』波平恵美子・小田博志著、春秋社
- 『ナラティヴ・アプローチ』、共著、勁草書房
- 『人類学で世界をみる』、共著、ミネルヴァ書房
- Oda, H. (2007) Peacebuilding from Below: Theoretical and Methodological Considerations toward an Anthropological Study on Peace. Journal of the Graduate School of Letters, Hokkaido University. Vol.2: 1-16
- Oda, H. (2006) “Because We Are a Community of Refugees”: An Ethnographic Study on Church Asylum in Germany. Journal of the Graduate School of Letters, Hokkaido University. Vol.1: 17-29.
- 『新版 質的研究入門』(翻訳)、ウヴェ・フリック著、春秋社
- 『平和の人類学』小田博志、関雄二編、法律文化社
所属学会
- 日本文化人類学会
- 北海道民族学会
- European Association of Social Anthropologists
- 日本平和学会
教育活動
授業担当(文学部)
- 文化人類学概論
- 文化人類学演習
授業担当(文学院)
- 文化人類学特殊講義
- 文化人類学特別演習
授業担当(全学教育)
- 社会の認識(一般教育演習)
おすすめの本
- 『エスノグラフィー入門—<現場>を質的研究する』小田博志著、春秋社
9年間の北大での教育経験を基に書いた本です。エスノグラフィーをするために「使える本」になったと自負しています。