33 北大人文学カフェ「芭蕉が聴いた 私に聞こえる日本古典文学の解釈と共有知―」開催されました

2024年7月28日(日)、第33回北大人文学カフェが開催されました。今回は「芭蕉が聴いた音 私に聞こえる音 — 日本古典文学の解釈と共有知―」と題して、話し手の南陽子准教授(日本古典文化論研究室)に、芭蕉の描いた音風景を中心に俳句の解釈についてお話しいただきました。お話の後は参加者の皆さんと質疑応答を通して交流しました。当日は、約70名の方に参加いただき、事後視聴は約80名の方にお申し込みいただき、期間限定の再生数は約160回に上りました。

第1部は、南先生のトークの時間です。有名な芭蕉の「ふる池や」の句の解釈を、会場の参加者と意見交換しながら、詠まれた季節、その時の心情、蛙とは、句を詠む状況について、解説がありました。また、「閑さや岩にしみ入る蝉の声」のセミ論争と句の解釈、俳諧から俳句への変革に関する説明がありました。

トークの後半では俳句の解釈そのものや、古来からの文化背景や知見の蓄積(共有知)に基づく古典文学研究について紹介されました。最後に芭蕉の弟子たちと同様に、参加者の皆さんに「ふる池や」の句の最初の5文字を自分なりにつくってみてくださいというメッセージでトークは終了しました。

休憩時間に寄せられた質問に目を通す南先生と、会場から寄せられた質問カードの整理をする日本古典文化論研究室の大学院生さん

第2部は、参加者の皆さんからいただいた質問に南先生が回答していく対話コーナーでした。聞き手の日本古典文化論研究室の吉藤岳峰さん(文学院博士後期課程)が、いただいた質問を紹介し、それに南先生が回答していきました。

いただいた質問を紹介する吉藤さん(左)と回答する南先生

まず、第1部の最後で南先生が出された課題「ふる池や」の最初の5文字を創作された句を吉藤さんが紹介し、南先生が作者の意図を伺ったり感想を述べたりしました。そこで古典文学研究は、作者との解釈のギャップを埋める役割があるというお話がありました。

さらに、芭蕉の名前の表記について、文学理論に基づく芭蕉の音風景、具体的なものに抽象的なものをのせる芸術についての質問について南先生が回答されました。関連して「蓑虫の 音を聞きに来よ 草の庵」を紹介し、枕草子からくる共有知に基づく解釈を紹介されました。

多くの質問をいただきましたが、すべての質問に回答できず申し訳ありませんでした。

参加された方からは、「芭蕉の俳句についてこれまで全く知らなかったことを学ぶことができた。」「とても高度な内容をわかりやすく興味深く魅力的に話していただいた」「講師の南先生の話し方、言葉の選び方、とても聞きやすかったし、引き込まれた」「文学や古典を学問するってどんな感じ、と思って来ました。物理を学んだ者ですが、共感するなにかを感じました」「蓑虫〜の句は感覚的に好きな句の一つでしたが、南先生のお話を伺い、句がより立体感を伴って立ち上ってきたように思います」「漢詩が出てきた時には大変納得した。奥が深い!」「背景を知ると解釈が狭まるが、それが正解である必要はないということが論理的に説明されていたのが良かった」等、多くの感想をいただきました。どうもありがとうございました。