書香の森・特集図書展示の更新を行いました。
今回は長い間北海道大学で教鞭をとってこられ2023年度末で定年退職を迎えられる6名の教員に、自著の中から1冊を選びコメントをいただきました。
- 展示期間: 2024年3月4日(月)〜2024年5月10日(金)
展示図書リスト
換喩詩学
(阿部 嘉昭 著 思潮社 2014年)
〈教員コメント〉赴任した札幌の地の落ち着きが詩について考えるのには適していたらしく、結実したのが、この『換喩詩学』(2014、思潮社)だった。詩への思考が現在において、暗喩から換喩へと軸足を移している点を、評論集成の体裁で論じ、第6回鮎川信夫賞を受ける栄誉に浴した。それが続篇『詩と減喩』(2016、同)へとつながっていった。
→Web書香の森
日本の外来哺乳類 管理戦略と生態系保全
(山田 文雄・池田 透・小倉 剛 編 東京大学出版会 2011年)
〈教員コメント〉本書は、外来種問題の啓蒙書というよりは、外来種防除という社会的課題への研究に基づく実践を紹介したものです。このような成果を北大文学部から発信できたことをうれしく思います。人文・社会科学系における生態学的研究の意義をご理解いただければ幸いに存じます。
→附属図書館
伊勢物語誤写誤読考
(後藤 康文 著 笠間書院 2000年)
〈教員コメント〉北大着任直前から着任後数年間の研究成果をまとめた私の学位論文で、『伊勢物語』解読の新たな地平を拓く、覇気に満ちた極めてラディカルな本です。あまりの革新性ゆえに出版当時学界で賛否両論が渦巻きましたが、今なお熱狂的支持者は絶えないものと確信しています。
→附属図書館
現代オランダ語入門
(清水 誠 著 大学書林 2004年)
〈教員コメント〉本書は日本では独学に頼るほかなかった苦い体験をもとに、オランダ・フローニンゲン大学での研究滞在後に執筆した初めての単著です。大学書林は四週間叢書を通じて少年時代から憧れの出版社でした。その後、『ゲルマン諸語のしくみ』(白水社 2024) に至る単著10冊、編著・共著20冊余りを世に送ることができました。
→Web書香の森
→『現代オランダ語入門』にまつわるエピソード(清水 誠)
日中戦争と大陸経済建設
(白木沢 旭児 著 吉川弘文館 2016年)
〈教員コメント〉前半では貿易について取り扱っていたので、編集担当者からタイトルを『日中戦争期の貿易と大陸経済建設』にしないか、と提案され続けたのを思い出しました。長いタイトルは好きではないのと、強調したかったのは、当時の言葉で言うところの「長期建設」なので、この書名にしてもらいました。
→Web書香の森
フィクションの機構2
(中村 三春 著 ひつじ書房 2015年)
〈教員コメント〉著者のライフワークである虚構論を中心とする文芸理論と、現代の小説・詩・映画についての研究を盛り合わせた本です。ここで論じた谷川俊太郎や村上春樹、さらに映画と原作との関係についての研究は、その後、それぞれさらに展開しました。まだ思い出になってはいない、思い出の著書と言えます。
→Web書香の森