内容紹介
日中戦争期には、英米をはじめとする外国との貿易を前提として戦時統制経済が行われていた。しかし、中国大陸で長期建設が進展すると、政界・財界ともに外国貿易依存から帝国内自給を志向するようになった。中国の日本占領地における資源開発を検証したところ、短期間の急速な発展は見られたものの「開発」を自己目的化し、経済的不合理を積み重ねている様相が明らかとなった。
著者からのコメント
本書は、著者が2004年頃から取り組んできた研究テーマに関する既発表論文をもとに、それらを加筆修正するとともに書き下ろしの章を付け加えてできたものである。
日中戦争は、いまだにわかりにくい、特殊な戦争であった。日中戦争の特徴をよく示しているキーワードに「長期戦」という言葉がある。国民党国民政府軍や共産党人民解放軍との戦いが泥沼化し、戦争は長期化していった。しかし、もう一つ、当時の人々の間でさかんに用いられた言葉として「長期建設」という言葉があった。これは、現在では忘れ去られた感があるが、日中戦争の戦争目的を示した言葉としてきわめて重要である。本書は、日中戦争が大陸の長期建設(後に経済建設)として行われたことを明らかにしている。
外部リンク
〔出版社〕吉川弘文館の紹介ページ