28 北大人文学カフェ紛争コピー用紙「環境にやさしい」商品の生産現場では何が起きているのか開催されました

2021年11月27日(土)、第28回北大人文学カフェが開催されました。コロナ禍の影響により、前回に続きオンライン開催となりました。今回は“紛争コピー用紙 —「環境にやさしい」商品の生産現場では何が起きているのか”と題して、話し手の笹岡正俊准教授(文学研究院・地域科学研究室)にインドネシアの紙の原料生産地周辺で起きている紛争と、なぜ現地の人が受けている被害が私たちに見えづらくなっているのかについてお話しいただきました。お話の後は参加者の皆さんと質疑応答を通して交流しました。当日はおよそ50名の方にご視聴いただき、事後視聴を含めると約210名に参加いただきました。

第1部は、笹岡先生のお話の時間です。まず、笹岡先生の研究領域である環境社会学の説明と、笹岡先生が現在の研究を行うことになった経緯についてお話がありました。

次に、笹岡先生の調査地であるインドネシアの紙の原料生産地の周辺に暮らす人びとが受けている被害の実態について報告されました。

現地調査に基づく多くの写真や人びとの声からリアルな被害の実態が紹介されました

さらに、人びとが受けている被害を見えにくくしている原因について、解説がありました。笹岡先生は、少なくとも二つの要因があると指摘しました。一つは紙を生産する企業側が、自らの広報活動のために「情報の選択的開示」を行っていることであり、二つ目は、企業のイメージを高めるような評価産業などの組織が成長してきて、その影響力が増大してきたことにあります。

最後に、このような現状を変えていくために、今後私たちは何が必要かという提言でお話を締めくくりました。

第2部は、参加者の皆さんからいただいた質問に笹岡先生が回答していく対話コーナーでした。聞き手の地域科学研究室の大学院生・芝崎瑞穂さんが、いただいた質問を紹介し、それに笹岡先生が順に回答していきました。

いただいた質問を紹介する芝崎さん(左)と回答する笹岡先生

インドネシアの土地紛争の原因とその解決方法、植林事業地の分布について、現地の人びとに調査するときに気をつけていること、紛争の原因となっている紙を買わない方法、評価産業の仕組み、二酸化削減のための植林方法、実際の研究論文発表の際の企業名・村名の記述方法、インドネシアの環境・生態学の教育、インドネシアの土地紛争と明治政府がアイヌの土地を国有化したこととの類似性と笹岡先生の見解など多くの質問をいただきました。

参加された方からは、「企業活動の認証制度に問題がある場合があることがわかった」「日常生活では感じにくい問題について知ることができた」「スライドや先生がお話される言葉等、内容は初学者でも理解しやすく、現状から私たちがどのようなことにアンテナを張っていくべきなのかについて知ることができた点がとても良かったと感じます」「質疑応答の時間が充分にあることや、期間限定でのアーカイブ視聴も深く学びたいと思っている者にとってとても有難く思います」「環境に優しいと称する商品が、生産地では現地住⺠を苦しめている状況、CSR を評価する機能が産業として成り立ってしまっているという構造に気づかされた」「インドネシアの人たちが法的に保護されて土地を取り戻す仕組みが整っていければ良いと思う」等、多くの感想をいただきました。どうもありがとうございました。