北海道大学 学芸員リカレント教育プログラム 企画展「DISTANCE #学びと距離の物語」関連事業「ミュージアムグッズサミット」第1〜3回 開催報告
令和2(2020)年10月6日から10月25日まで、北大総合博物館企画展示室を会場として、企画展「DISTANCE #学びと距離の物語」が開催されました(報告記事はこちら)。この企画展は、平成30(2018)年度から3か年の助成をいただいている文化庁「大学における文化芸術推進事業」の最終年度の成果の1つです。
新型コロナウィルスが流行する以前は、企画展開催にあわせて、展示解説、北大をフィールドとしたツアー、ミュージアムグッズの開発、ミュージアムグッズについて語るセミナーなど、さまざまなイベントを計画していましたが、コロナ禍での実施は難しいと判断し、ほとんどの関連事業を断念しました。しかし、インターネットを使って全国に大勢いるミュージアムグッズファン、その企画・制作に係わる関係者、ミュージアムショップでそれを販売している人びとが集うセミナーは、コロナ禍でも可能ではないかと考え、開催可能な形を検討し直しました。本プログラム受講生でミュージアムグッズ愛好家の大澤夏美さんにセミナーのファシリテータをお願いし、運営スタッフも受講生に担当してもらいました。最終的に企画展が始まる前と開催期間中と閉幕後の計3回、毎回19時から21時の2時間、ファシリテータとゲストとのトークを中心に、全国のミュージアムグッズ関係者が自由にzoomで参加できる方式を採用しました。実は、大澤さんは3年前のプログラム開始当初から、このセミナーを「ミュージアムグッズサミット」と呼んで開催を熱望していましたので、そのままこの名称を使いました。
第1回は9月28日(月)に、ミュージアム専門誌『ミュゼ』編集長の山下治子さんをゲストに迎え、「ミュージアムショップ×博物館のディスタンス:博物館との関係性を問う」をテーマに展開しました。山下さんは、グッズの現物をzoomで見せながら、日本のミュージアムショップの歴史をお話しくださいました。その中で1977年に開館した国立民族学博物館(大阪府)では、「売店」を初めて「ミュージアムショップ」と位置づけ、その後のショップのあり方を変えたとの指摘に、参加者からチャットルームに驚きのコメントが寄せられました。
第2回は10月15日(木)に、青森県八戸市に本社がある(株)金入の取締役社長である金入健雄さんにゲストとしてご参加いただき、「ミュージアムショップ×地域のディスタンス:リスペクトってどんな形?」をテーマに進めました。ゲストが語った「ショップづくりのキーワードは、職人さんとのチームとして一体感をつくることができるか。小売りで、消費で地域を支えることができるか。どんなものを後世に残し伝えるのか、という当事者意識を持つことが重要」との一言が印象的でした。
最終回の第3回は企画展終了後の11月6日(金)に、認定NPO法人 大阪自然史センター(大阪市立自然史博物館ショップ経営)事務局長の川上和歌子さんと小樽芸術村でミュージアムショップを担当している受講生の佐藤いず帆さんをゲストに迎え、「ミュージアムショップ×来館者のディスタンス:コロナ禍で見えてきた?」とテーマに展開しました。佐藤さんから小樽芸術館でのショップ経営の状況と課題を報告いただいたのち、川上さんからコロナの影響で対面型イベントがすべて中止になったとき、支えてくれたのが同館の来館者であったという報告がありました。NPOの日頃からの活動やファン作りがあったため、ネット通販やファンドレイジングでショップを支えてくれたことは、「ショップも博物館の一つであるという強い意識のあらわれ」との発言がありました。
この3回で、のべ200名以上の方が全国からzoomで参加してくださいました。70%以上が道外からの参加ということで、このテーマが広く全国的に関心が持たれていることを痛感しました。最終回のエンディングでは「サミット」らしく、ファシリテータから「ミュージアムグッズやショップについて語り合える場づくりに取り組み、ミュージアムグッズやショップ、ひいては博物館が社会においてどうあるべきかという議論がより活発になり、これらの重要性が広く認識されるように今後も活動を進めたい」という宣言を発して、終了しました。