広大なキャンパス磨かれた文学部ならではの多角的な問題解決能力

プロフィール

坪田 佳之 さん(北海道千歳市役所勤務)
北海道深川市出身。北海道旭川東高校卒業後、北大学文学部に入学。
文学部では、総合文化論コースを選択。幾つもの学問分野にまたがる多様な学びを選べるコースの特徴を生かし、哲学、倫理学、社会学のほか、法学部や教育学部の講義等も幅広く受講し、教育思想・教育行政という自身の研究テーマを多角的な視点から学び、2010年3月卒業。卒業後の1年間、公務員試験の勉強をしながら、憧れの喫茶店でアルバイトをする貴重な時間を過ごす。2011年4月より千歳市役所に勤務。現在は、市職員の給与支給関連業務を担当。

北大文学部を選んだ理由

5つ上の姉が北大に通っていたこともあり、入学前に北大を訪れる機会が何度もありました。豊かな自然に囲まれた広大なキャンパスで学ぶことに憧れを抱いていました。言語学を学びたいという気持ちから文学部を選びました。1年生の時に全学教育の基礎科目を学ぶうち、教育行政に携わりたいという将来の展望が芽生えました。2年生のコース選択では、総合文化論コースを選んで幅広く学びつつも、教育思想を学びたいという思いから哲学倫理学講座を主たる学びの場としました。

学部時代はどんな研究を

卒論のテーマは「「総合的な学習の時間」による日本の教育の改革」としました。日本の教育行政について、学歴社会からゆとり教育までの方向転換に見るその問題点と、否定されつつある総合的な学習の時間について、その有効性をジョン・デューイの実践主義教育論やフィンランドの教育制度を裏づけとして論じました。

文学部に行ってよかったですか

よかったと感じています。 それは、自分のペースに合わせて研究ができたからです。私は、サークル活動としてジャズ研究会に所属し、積極的に音楽活動を行っていました。そうした時間を大切にしながらも、自分の学びたいことを講義や自主学習で無理なく学ぶことができました。学部内の研究テーマが多岐にわたることから、自分の興味のある学びを見つけることができることも大きな魅力でした。また最先端の研究に触れられる機会が多く、そうした高いレベルの研究環境で学ぶことにより、常に新鮮な気持ちで学び、多くの気づきを得られたことは、素晴らしい経験でした。

在学中、大変だったことは

学部棟とサークル会館(片道徒歩15分程)を行き来することが多く、特に冬は移動が大変でした。その経験のおかげで、時間に余裕を持って行動する習慣づけができました。

卒業後→現職までの道のり

卒業後の職業は公務員と決めていました。それとは別に、いつか喫茶店で働いてみたいという気持ちが、心の奥にありましたが、在学中は踏み切れませんでした。大学4年生の時の公務員試験で、志望の就職先に内定をいただけず、もう一年がんばろうと決めたとき、試験勉強だけで一年を過ごすのはもったいないと思い、喫茶店でアルバイトをすることにしました。喫茶店をバイト先に選んだ理由は、人とのあたたかいふれあいがあり、異世界のようなゆったりとした時間が流れている喫茶店という場が好きだったからです。さまざまなお客さんとの近い距離での接客は、本当に楽しく貴重な体験でした。偶然たどり着いた1年間のアルバイトでしたが、大学で学んだ知識や経験を、社会でどう活かすのか、仕事だけでなく、自分の人生にどう活かすのかを、反芻し、さまざまな人と対話をする、大切な時間でした。アルバイトを1年間続けながら公務員試験を受験し、千歳市の内定を受けました。

現在のお仕事の内容

千歳市職員の給与支給に関する事務業務全般を執り行っています。

 

大学で学んだことは今のお仕事に役に立っていますか

大いに役に立っています。文学部の研究は、実社会での有用性が見えにくいものですが、社会におけるさまざまな事象を分析するための基礎となる学問です。その基礎知識を深めていくと、専門的な視点以外にも幅広い視点に気付き、それまでの自身の経験や常識を見つめなおすことができました。文学部で養われたこの幅広い視点が、多角的な思考や問題解決能力の伸長につながっていると自負しており、職務上求められる公正な判断や業務改善において、大いに役立っていると感じています。

今後の目標・夢

千歳市に住む子どもやその親、若者、お年寄りなど、すべての世代、すべての職業の方々が、のびのびと生きがいの持てるような都市を創っていくことです。そのために、子育て世代の支援、女性の活躍推進、商店街の活性化、観光事業の振興、世代間交流の推進など、様々な課題解決に対して、一つでも事業の企画に携わることが今後の夢です。

後輩のみなさんへのメッセージ

大学を卒業して感じるのは、大切なのは大学に入ることではなく、大学で何を学び、何を身につけ卒業するか、だということです。 北大文学部を受験する前に、文学部ではどんな研究をしていて、どんな勉強ができるのか、自分自身で調べてみてください。自分ならこのテーマをこんな切り口で研究してみたい…と考え出すと、わくわくしてくるはずです。そのわくわくが、大学選びでは一番大切だと思います。 みなさんには、なにか大事なことを学んだら、それについてじっくり思考し、いろんなひとと対話し、自分のものにする時間を大切にしてほしいと思います。そして、必ずなにかしらの行動を起こしてほしいです。それが、北大が重きを置く、「実学」の原動力となるはずです。
北海道大学は、その広大なキャンパスのおかげで、のびのびと学びに向き合うことができます。息が詰まったときには、木々の葉の色、風の音、鳥の声、小川のせせらぎ、共に過ごし学ぶ仲間の笑い声が、癒してくれる、そんなあたたかく空気のよい学びの場です。また、世界の問題解決の最前線にいる国際研究機関でもあります。 そんなすばらしい環境で、ぜひ、自分なりのわくわくする学びを見つけてください。

(2015年11月取材)