使える支援制度はすべて利用してキャリア形成

プロフィール

松永 理恵さん(取材時:静岡理工科大学 総合情報学部 人間情報デザイン学科 専任講師)
三重県出身。神戸女学院大学卒業後、大学院文学研究科に入学。人間システム科学専攻 心理システム科学専修にて、認知心理学、特に音楽心理学を研究。2005年3月博士(文学)を取得後、博士研究員、学振PD、ドイツ留学等を経て2013年より現職。心理学の授業を担当しつつ、音楽の認知心理学の研究を続け、北海道大学と共同研究を行い、年に何度か北大まで実験に通う。2017年4月より神奈川大学人間科学部 准教授。

北大文学研究科を選んだ理由

大学は北大ではなかったのですが、認知心理学の研究室で勉強していました。その中で『音楽と認知』という本に出会いました。音楽心理学をもっと深く研究したいという思いから、その本の分担執筆者であった阿部先生(現名誉教授)の研究室を大学院進学先に決めました。

大学院ではどんな研究を

人はどのようにして音の並びを”音楽”として認識するのか、というテーマで研究しました。

博士後期課程への進学理由

修士課程の研究成果では自分で納得できなくて、ドクターコースに行けば、もっと納得のいく研究ができると思いました。将来は、おそらくなんとかなるんじゃないかと、気楽に考えていました。

北大文学研究科に進学してよかったこと

私が博士後期課程に進学した頃から、文学研究科の若手研究者支援制度がとても充実してきました。「魅力ある大学院教育イニシアティブ」「大学院教育改革支援プログラム」「共生の人文学プロジェクト」など、文学研究科の大学院生向けの支援制度は、使えるものはすべて利用して、国際学会での発表を重ね、キャリアアップしていきました。

在学中、修了後大変だったことは

日々の研究は厳しくて、大変なことがいっぱいありました。けれどそれは、博士論文を書くための道筋のある大変さです。ポスドクになってからは、どうやったらアカデミックポストにつけるのかという、ストラテジーの見えない不安を経験しました。

修了後から現職までの道のり

北大で科研費プロジェクトの学術研究員→ロータリー奨学金を得てカナダに語学留学→学振PD→専門研究員(保健学院の客員研究員も兼任)→大型研究プロジェクトの学術研究員→組織的な若手研究者等海外派遣プログラムに採択されベルリン自由大学に留学→ドイツで就活中に現職に採用。

現在の仕事・研究内容

MEG装置の前で実験準備中の松永さん
MEGは脳の神経活動にともなって発生する微弱な磁場の変化を測定する装置。 松永さんの実験は、音楽を聞いた参加者の脳の活動変化をMEGで測定する。

教育は、心理学関係の授業を担当しています。研究は、音楽認知のテーマを続けています。北海道大学と共同研究をしていて、年に何度か北大でMEG(脳磁計;Magnetoencephalograph)を用いた実験を行っています。

 

大学院で学んだことは今の仕事に役に立っていますか

大学院で学んだことを、引き続き研究できることはとても幸せなことだと感じています。研究内容、技術は勿論ですが「ものごとを多角的に見る」ことを学んだことが、現在の研究と教育に最も役立っています。また、在学時、雑誌の編集のお手伝いをした経験が、現在の自分の論文執筆、事務書類、申請書作成に役立っています。研究者、社会人としての基礎を作ってくださった阿部先生に感謝しています。

今後の目標と夢

今の研究を更に発展させて、20〜30年経っても引用される論文を書きたいですね。教育者としては、自分がこれまでに得たものを学生たちに伝え、研究者を育てていきたいと思います。

これら進学する皆さんへのメッセージ

北海道大学は環境もよく、研究するのにとてもいい場所です。本州の雑多な情報に惑わされることなく、専門性の高い独自研究ができます。認知心理学研究という面では、文学研究科は、幅広い研究領域をカバーする研究者がいて、重層的な研究ができること、また工学部や脳科学実験研究センターとの連携研究もできるというメリットがあります。

(2014年11月取材)