他者と分かり合おうとすることを諦めない

人間科学コース3年生 石田 きなり さん

私は、震災の「復興」やまちづくり、人々の居場所づくりなどに関心があり、地域科学研究室がある人間科学コースを選びました。水俣病事件について学んだとき、最初はなぜ住民が有毒かもしれない魚を食べ続けていたのか、なぜ認定のための苦しい闘いを続けるのか、分かりませんでしたが、当時の社会構造や差別、彼らの生活・人生を調査することで、少しですが彼らの論理を想像することができるようになりました。現在は環境社会学を専攻し、戦争や公害、災害などの非体験者が「災禍」の記憶や経験をどのように継承していけばよいのかを研究しています。一見災禍とは無関係に思える生活史エピソードも根気強く聞いていくと、災禍をより多層的に解釈する手助けになります。単一の答えがない分、苦しいこともありますが、こうした人間科学コースの学びは他者との共存を考え、自分のことも理解するための大切なヒントになっています。

今後は大学院に進学し研究を続ける予定です。将来どのような職業に就いても、文学部で学んだ“わかりやすいものに安住せずに考え続け、他者と分かり合おうとすることを諦めない姿勢”を持ち続けたいと思っています。

(2024年5月取材時に撮影)