プロフィール
松原 彩花 さん(モビリティ事業を展開する企業に勤務)
北海道千歳市出身。北海道立札幌北高等学校卒業後、2016年4月に北大文学部に入学。文学部では人間システム科学コース/地域システム科学講座*で民間図書館が地域に及ぼす影響を中心に研究。2020年3月に卒業。2020年4月に現在の会社に入社。カーシェアという無人レンタカーサービスを設置する業務に従事している。
*2019年4月の改組により、人間システム科学コースは人間科学コースに、地域システム科学講座は、地域科学講座となりました。
北大文学部を選んだ理由
家庭の事情や2次試験の受験科目を考慮して、自宅から通える北海道大学の文系学部を受験することにしました。総合文系の場合、2年次に行きたくない学部に振り分けられるリスクがあったので、学部別入試を選び文学部を受験しました。
文学部で学べる学問として、元々は心理学や歴史、言語学に興味があったのですが、1年次の総合授業を通して、「何か違うかも?」ともやもやを感じていました。2年進級前の履修コース説明会で地域システム科学講座の説明を受け、ビビッと直感的に「これだ!」という感じがあったので、ここに決めました。
文学部ではどんな研究を
民間図書館が地域にどういった影響を及ぼすのか、「情報」という観点から研究していました。図書館という情報収集に特化した場所は、地域の活性化に興味のある方が集まる場所として最適なのではないかと考えました。
この領域に関心をもったきっかけは、千歳に「まちライブラリー」という民間図書館ができたことです。そこには「サポーター制度」という、まちライブラリーでのイベント活動を通じて地域を盛り上げたい人が集まっており、この制度に注目しました。私自身もサポーターとしてイベントの手伝いをしたり、周年イベントにて参加者の前で講演したりしました。
北大文学部に行ってよかったですか
高校とは違い自身で選択して学ぶことができる4年間は非常に充実していました。
元来緊張しやすい性格だったのですが、地域システム科学講座でのフィールドワークなどの授業を通し、人と・地域と関わることに抵抗がなくなりました。
まちライブラリーのサポーター活動だけでなく、道東の津別町で町おこしを行う「学生団体HALCC」や、農学部と北海道新聞社が地元の子供に北海道の農業や食に関して教える「あぐり大学」の運営スタッフ、北大内でのノートテイカーやピアサポーターなど、さまざまな活動に携わる機会が増えていきました。地域システム科学講座での経験を足がかりに、さまざまな世代・属性の方と交流ができ、非常に有意義な学生生活を送ることができました。
在学中、大変だったことは
文学部は単位の組み方の自由度が比較的高く、他学部の授業であっても20単位までは、選択科目の単位としてカウントすることができます。
「なるべく興味のある授業で単位をとりたい!幅広く学びたい!」と欲を出した結果、1限は総合教育部の建物(北17条)で受け、15分後の2限には文学部棟(北10条)で受けるというハードな移動を伴う受講スケジュールになってしまったこともありました。中央ローンを走って移動していたら勢いよく転び、言葉の通じない(私の英語力の低さの故です)留学生の方に心配していただいたこともあります。
みなさんには、興味ばかりを優先させるのではなく、教室移動等も含めて総合的に判断して授業を選択することをお勧めします。
卒業後から現在までの道のり
在学中に内定をいただいた会社に現在も勤務しています。
2年の秋から就職活動を開始していたこともあり、大学4年生の4月末に現職の内定をいただきました。就活を長く続ければ続けるほど自分が何をしたいのか、何が合っているのかわからなくなってしまったこともありました。
それでも自分が本当にやりたいことは何だろうかと考え、既に内定をいただいていた会社の中から、最もやりたいことができそうな会社(現職)に決めました。
現在のお仕事の内容
「カーシェア」という無人のレンタカーサービスを設置する仕事をしています。街中を歩いたり取引先と連絡を取ったりしてカーシェアを新設できそうな場所を探し、土地のオーナーと交渉する「営業」が主な仕事です。
魅力的な観光スポットがたくさんあるのに、公共交通機関ではなかなか行けないエリアがあります。このような場所にカーシェアを設置し、現地の行政と協力して地域の利便性の向上にチャレンジすることが、私の目標です。
入社時期とコロナ禍がちょうど被ってしまい、残念ながら私が希望するチャレンジ案件にはまだ関われていませんが、新型コロナ感染症も5類に移行しましたので、今後挑戦できたらと考えています。
大学で学んだことは今のお仕事に役に立っていますか
地域システム科学講座の中でも社会学は「人の声」を大事にします。
フィールドワークでの聞き取り調査の経験が、営業で取引先との円滑なコミュニケーションを進める上で役に立っています。
今後の目標・夢
前述したように、公共交通機関が届かない観光スポットにカーシェアを設置し、地域の魅力発信や利便性の向上に貢献したいと考えています。
現在の業務内容は楽しく、人間関係も良く、私にはぴったりの職場だと思っています。
社会人として「仕事への責任感を持つ」ということが今の私の課題だと思っています。社会人生活3年の間でヒントは掴んでいます。大学生活と同じく何事も学びと捉え、楽しむつもりで向き合っていきたいと思います。
後輩のみなさんへのメッセージ
何を学びたいか、将来何をしたいかはその時によって変化します。
「これを学びたいから文学部に!」という目的意識を持つことは大変素晴らしいですが、もし学びたいことが決まっていなくても、入学後1年間の総合教育部の学びの中で、自分の興味や得意分野を掴むことが可能です。
「文学部は就職に困るからとりあえず教員免許だけは取得しておく」という意見を在学時代によく耳にしましたが、免許取得のためには多くの単位を取得する必要があり、自分が本当に学びたい単位を取れない可能性もあります。
自分の学びたいことを学び、それを誇ることができれば、就職活動も問題なく進められると私は思います。
私の体験談で何か思うところが少しでもあったなら、興味のあることに向き合う充実した4年間の選択肢として、文学部への進学を入れてみてはいかがでしょうか。
(2023年8月取材)