31 北大人文学カフェ「隣り合わせの危機ロシアウクライナ情勢と北海道」開催されました

2023年7月9日(日)、第31回北大人文学カフェが開催されました。人文学カフェは、コロナ禍期間中、オンラインを中心に実施してきましたが、3年7か月ぶりに学外会場(紀伊國屋書店札幌本店)にて対面開催となりました。今回は「隣り合わせの危機 — ロシア・ウクライナ情勢と北海道」と題して、話し手の服部倫卓教授(スラブ・ユーラシア学研究室)に、ロシア・ウクライナ戦争の原因と現状分析に加え、北海道に生きる私たちへの影響についてお話しいただきました。お話の後は参加者の皆さんと質疑応答を通して交流しました。会場定員の都合上、当日会場参加申込は80名で受付を締切りましたが、事後視聴は約120名の方にお申し込みいただき、期間限定の事後視聴の再生数は、300回近くに上りました。

第1部は、服部先生のトークの時間です。導入として服部先生の自己紹介があり、その後、ロシアとウクライナのこれまでの関係と、今回ロシアがウクライナに侵攻した背景について説明がありました。

次に、ロシア・ウクライナ戦争の現状と今後の行方についてのお話です。戦争が起こってからどのようなできごとが起こり、情勢がどのように変化してきたかを、2014年のクリミア半島併合の事情も含めて解説がありました。当初の情勢から変化して、領土戦争化してきたため、今後早期の終結は難しいことや、ロシア国民の反応についての考察もされました。

最後に、北海道に生きる私たちの影響について、考えていきました。安全保障問題、北方領土問題への影響、人的交流の途絶についての紹介の後、服部教授の専門分野である経済・貿易関係を中心に、さまざまなデータをもとに北海道への影響が解説されました。北海道の対ロシア貿易については、輸出面ではロシアからの代金回収が困難になり、経営破綻する企業がでてきたこと、輸入面では関税を上げたものの魚介類の輸入は堅調であることなどが示されました。また、戦争の影響で世界的に肥料や穀物価格が上昇し、北海道の酪農業に大きな打撃を与えていることや、ロシア産魚介類を原料としたふるさと納税制度への疑問点についても意見を述べられました。

休憩時間に会場から寄せられた質問カードに目を通す服部教授(右)。

第2部は、参加者の皆さんからいただいた質問に服部教授が回答していく対話コーナーでした。聞き手の言語科学研究室の菅井健太准教授が、いただいた質問を紹介し、それに服部教授が順に回答していきました。

いただいた質問を紹介する菅井准教授(右)と回答する服部教授。

経済制裁がロシアに与える影響、漁業交渉とロシアの戦費調達との関係、サハリン2の今後、日露ビジネスの見通し、ウクライナのTPP加盟申請、戦争の落としどころ・時期、ベラルーシとルカシェンコ大統領の立ち位置、日本およびロシアの一般市民の生活を守る方策、ロシアとの対話の窓口を維持するための可能性、服部教授のスラブ研究への出会い・道のり・魅力、など多くの質問をいただきました。

参加された方からは、「ウクライナ情勢という今知りたい分野について、他とは少し異なる専門分野からの説明・意見を聞くことができた」「貿易の観点から事象を考えるのは新たな気付きとなった」「政治的にも情勢的にも難しい話題に挑戦していることに好感が持てた」「北海道とのつながりについてお話を聞けたのがよかった」「お話がとてもわかりやすかった」「参加者の皆さんが最後まで熱心にお話を聞いておられ、大変素晴らしい会だと思いました」「質問タイムが充実していた」「質問タイムがもっとあればよかった」等、多くの感想をいただきました。どうもありがとうございました。