学芸リカプロの活動内容や、企画の裏話、こぼれ話を紹介していくフォトエッセイの第3回、学芸リカプロの受講者・矢野ひろさんのエッセイをお届けします。
#3 さまざまな「距離」
矢野 ひろ
株式会社ノーザンクロス
(NPO法人北海道遺産協議会事務局)
学芸員リカレント教育プログラム(以下リカプロ)は3年間の総括としての展示に向けて準備をしています。当初、一般的な形式での展示を想定していた私たちが今直面しているのは、「ディスタンス」です。
今、世界の多くの人がこれまでのスタイルとは異なる毎日を送っていると思います。主に距離の問題が互いを遠く感じさせたり、自分が許される空間をとても窮屈なものに感じさせているのではないでしょうか。
学芸リカプロも展示を制作する、展示資料をみせていただくという、最も直接的な行動と感触を必要とする作業がままなりません。そのような状況下で、私たちが今挑戦しているのは、オンライン実習でのイメージの共有です。
- 展示会場はどうだっただろう。空間の広さ、柱の見え方、壁や床の質感、館のエントランスに近いならば、湿度や環境管理はどうだろう、とすると借用依頼できる展示物はなにだろう。
- 展示する作品や資料ひとつひとつの状態はどうだろう。美術品か歴史資料か、年代、形状や材質によって並べたときの調和はどうだろう。
- 各章のタイトルの掲示方法はなにが適しているだろう。形態、形状、その質感、展示構成に合うタイトルはどんなものだろう。
実際に展示物候補を確認してくださっている今村先生の所感をたよりに展示をイメージし、それぞれの言葉で話してみる。伝わってほしいと願って言葉を工夫する。
結論にたどり着けず、意見の発散に終わることもあります。しかし、そうして多くの言葉のイメージを重ねることでひとつの展示会場のイメージが姿を現してきました。
私たちの展示テーマは、「学びにおける距離について」を扱ってみたいと思っています。
〜物理的に遠く離れた距離を越えてきたもの。
〜時間的に長い時を経て伝わってきたもの。
〜学校や研究者と学生などとの距離を縮めたい、伝わってほしいと工夫したもの。
〜時には様々な視点により捉え方が違う、感覚の距離(?)を楽しむもの。
距離は不安や違和感を感じることに思考が向いてしまいますが、もっと柔軟に捉えると、別の方法や概念で遠い場所へ、誰かの近くへ、行ける可能性も持っているようです。