学芸リカプロ受講生レポート|2019年度公開成果報告会「ミライミュージアムミートアップ」(2/22開催)

2019年度公開成果報告会
ミライ・ミュージアム・ミートアップ

実践すること、思いめぐらすこと―成果報告会2019受講レポート

山田 のぞみ(本郷新記念札幌彫刻美術館学芸員)

午前から実施されたSession A口頭発表とSession Bポスター発表では、本プログラムに参加する受講生、聴講生による報告がなされました。その内容は大まかに、各々がすでに実践している事業に関するものと、今後の企画に関するものの二つに分けられます。なかでも実際に行われた事業にもとづく報告からは、ミュージアムという現場におけるアクチュアルな問題に対して、いかに対応し、どのような工夫を重ねているかという生きた事例を学ぶことができました。

たとえば、旧三井銀行小樽支店ファンクラブの活動紹介では、ミュージアムの使命の一つである教育普及活動が、ファンクラブに参加する市民の手によって豊かなものになるまでの過程が詳細に語られました。運営方法、監修のあり方に関する実例は、それぞれのミュージアムの同様の事例を顧み、あるいは改善するための糸口となり得ると思われます。

また、様似町における郷土館、図書館、ジオパークの連携による学習プログラムの開発と実践に関する発表では、地域に関する学びという共通のテーマのもとで各施設の強みを生かした事業の展開例が示されました。カリキュラムにもとづいた学校教育とは異なる、ミュージアムならではの学習の機会を提供するという意識的な活動には、社会教育施設としてのミュージアムが果たすべき一つの理想が具現化されています。

今後の企画にまつわる報告、ポスター発表では、本プログラムの総括となる北大総合博物館における「農」をテーマとした展示や、各々の職場や実践の場における企画に向けた調査研究の成果が明らかにされました。一般の来場者をふくむ当日の参加者と発表者との質疑応答によって、新たな視点や資料の情報が得られました。調査研究の対象に思いをめぐらせ、企画案をまとめ、実践する―この一連のプロセスがいよいよ終盤に入る来年度を前に、企画内容の深まりにつながる機会となりました。