多彩で贅沢な「つまみ食い」が、今の仕事に活かされています

プロフィール

小田桐 俊宏 さん(北海道 総合政策部航空局勤務 国土交通省より出向)
神奈川県出身。神奈川県立港南台高校卒業後、北大文学部入学。
文学部では人間システム科学コースで地理学、地域社会学、生態学を中心に学ぶ。歴史学にも興味があり、専門以外のゼミや飲み会にも顔を出し幅広く学んで2004年3月卒業。
2004年4月に国土交通省入省後は、国土政策や運輸行政を中心に業務を担当。現在は、北海道庁航空局に出向し北海道の航空行政を担当している。

北大文学部を選んだ理由

受験大学を選ぶとき、「どこで」「何を」学ぶかを自分で選べるチャンスだと思いました。「どこで」については、今まで住んだことがなく面白そうなところにしようと思い、北海道を選びました。人生で初めて北の大地を踏んだのは、受験前日にキャンパスを下見に訪れた時でした。「何を」勉強するかについては、高校生の頃は、大学で日本史を学び研究者になりたいと考えていました。文学部で学ぶうちに、過去から現在に関心が移り、「空間」からアプローチするユニークさ、地理学・地域社会学・生態学の3分野からの多角的な学びに魅力を感じ、人間システム科学コースの中の地域システム科学講座を選びました。

文学部ではどんな研究を

恥ずかしながら、「これだ」という自信を持って言えるテーマはありません。経済地理学、地域社会学、生態学と大きく3系統のゼミがありましたが、 私は全部のゼミに顔を出して、統計分析のソフトを動かしたり、地域づくりのヒアリングに同行したり、生態学の文献講読に入ったり…と「つまみ食い」をしていました。

北大文学部に行ってよかったですか

良かったと思っています。私は入学してから学びたい分野が変わりましたが、北大文学部で学べる範囲の広さやアプローチの多様さのおかげで、充実した学生生活を送ることができたと思っています。元々は歴史に関心があったこともあり、日本史や西洋史を学ぶ友人と、マイ七輪を囲んでジンギスカンをしながら大いに語らったのは(放談?)、北大でしか経験できなかったであろう懐かしい思い出です。

在学中、大変だったことは

これが大変だったということは思い出せませんが、強いて言えば、卒論やレポートを書くことでしょうか。(性に合っていたんでしょうか、フィールドワークは全く苦になりませんでした。) 当時は大変だった気がしますが、学生時代にもっとチャレンジして研究を深掘りする経験をすればよかったかなと思っています。これは、大変だったというよりも、もっと貴重な経験を積む機会があったんじゃないか…という、いま振り返っての学生時代の反省です。

現在のお仕事の内容

国際航空路線の誘致など、北海道の空港の国際化のため海外出張もこなす小田桐さん

卒業後、国土交通省に入省し、国土政策や鉄道、海事などの運輸行政など中心に、法案の検討や審議会の運営、予算・税制要求など様々な業務を担当してきました。 また、中国運輸局(バスや乗り合いタクシーなどの生活交通の支援)や内閣官房(国土強靱化政策の推進)など、いわゆる国土交通省の本省以外の組織でも働く機会がありました。現在は国土交通省から北海道庁航空局に出向しており、来道外国人観光客300万人時代を見据え、国際航空路線の誘致や北海道が管理する空港の施設整備などを主に担当しています。 この数年で爆発的に増えている需要にどう対応していくか、幅広い分野の方と連携しながら北海道の成長を支える非常にやりがいのある仕事です。

大学で学んだことは今のお仕事に役に立っていますか

研究職ではないので、学生時代の知識がそのまま役に立っている、という形ではありませんが、知識を習得していくということ、フィールドワークで情報を得ること、あるいはレポートなどにまとめていくということなどは、日々の業務に通じる部分が多いのではないかと感じています。 また、同じ「空間」でも、地理学、地域社会学、生態学、それぞれの切り口ではどう見るか、ということを学べたのは、地域システム科学講座で学び「つまみ食い」させていただいた最大のメリットだと思っています。 働くようになってからも「地理学の先生ならどういう切り口で分析するか」「地域社会学の先生ではどう考えるか」「生態学の先生なら何を見つけるか」などと捉え直すことがよくあります。 また、国土交通省では、国土をメッシュ区分した空間的な統計分析や、「小さな拠点」といった地域づくりのあり方、あるいは植物などの生態系の変化といった、様々な角度からの国土の分析や検討を行っています。国土政策の担当となった際に、関係省庁から出向してきている各分野の専門家とスムーズにバックグラウンドを共有し仕事ができたのは、地域システム科学講座で学べたおかげだと思っています。

今後の目標・夢

1路線でも多くの国際線就航を実現して、様々な国の方に北海道に来ていただくこと、そして北海道の方にも海外を訪れていただくこと。双方向の交流を広げていくことが、まず目の前の目標です。交流の拡大が地域の活性化につながり、すばらしい素材、可能性を持つ北海道がより高い成長軌道を描いていく…というのがその先の夢、でしょうか。

後輩のみなさんへのメッセージ

「文学部」というと、皆さんはどういうイメージを持っていますか?
私自身がそうでしたが、北大文学部では皆さんが思っている以上に/一般に世の中で思われている以上に、いろんなことができます。皆さんのフィールドを広げるポテンシャルに満ちていると思います。もちろん、積極的に何かを求めていく姿勢があればこそより実りは大きいと思いますが、大学への進学を考える際に、まだ将来に向けた「何か」を見定められない方にとっても、北大文学部では思いもかけない選択肢を見いだせるかもしれません。
このページをご覧の方の中には、北海道以外の地域にお住まいの方もいらっしゃるでしょう。学生時代の何年間かを北海道で過ごすということは、本当に有意義で贅沢な選択肢だと私は思います。
「どこで暮らすか」ということを自由に選べる数少ない大学進学の際に、広大な自然と自由でおおらかな風土、一方で札幌という日本でも指折りの都市圏を擁する北海道を、候補に入れてみてはいかがでしょうか? 緑豊かなキャンパスを卒業した後、東京で、札幌で、あるいは地方で、様々な分野に進まれた先輩がいます。選択肢を広げるということを「未来への投資」と考える方にはお勧めだと思います。
ともあれ、ぜひ一度、北大生になったつもりで、北大を歩いてみてください。現地に行ってこその「知」があるはずです。

(2015年9月取材)