歴史とは何か?日本史学とは何か?
カナダにて学び考える

留学先 ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)大学間交流協定校
留学期間 2021年9月〜2022年4月
留学年次 学部3年
鈴木 陽彦(すずき はるひこ)さん
歴史学・人類学コース

 

カナダ、バンクーバーに位置するブリティッシュコロンビア大学は、移民の多いカナダの性質を反映して、国際性に富んだ大学です。北アメリカ大陸の太平洋側に位置し、歴史的に日系移民も多いこの地域を背景に、日本に関する講義も幅広く開講されています。私の留学のテーマは、外からの視点を借り、専攻する日本史学、さらには歴史学という営みを客観視することであったため、同大学は私の希望に沿う大学でした。また、私が専攻する近世の時代を専門にする教授がいらっしゃった点も大学選定の決め手でした。そして、この留学は、これまで自分が鍛錬してきた英語力が通用するかを試す実験でもありました。

留学先大学内のバラ園。奥に見えるのは海と山。
ホッケー観戦。白色のユニフォームが留学先大学チーム。

講義は、日本史学を中心に、史学史・歴史学の方法論に関する講義、カナダ史の講義などを履修し、日本史学という営みの長所と限界を比較の中から客観的に見つめ直すことを目指しました。そして、学んだことは少なくありません。例えば、日本史を考える際に、私が受講した宗教・思想系の講義では、「日本とは何か」という問いが底流していたように思いました。日々の学習・研究の中で私達の思考は近視眼的になりがちです。この限界を打開する良い「ストレッチ」になる問いであると考えます。また、英語という母語以外の言語を通して歴史を叙述する場合、どうしてもその限界に意識が向きます。私は日本に居たときに、これほど歴史と言語の関係に意識を向けたことがありませんでした。まさに、歴史学における「言語論的転回」、「物語り論」の意図を体験することができたと言えると思います。

留学先大学内新渡戸稲造記念庭園石碑。「願わくは われ太平洋の 橋とならん」

講義外でも学びは続き、講義後には時折質問に行き、結果として教授に招かれて夕食を食べたことは、忘れがたい思い出です。また、5人の現地学生と一緒の寮に住んだことも良い経験になりました。この異文化体験の過程で、いわゆる「日本人は」的言説が、他の地域から来た人達にもかなり当てはまった点が興味深いと思いました。コロナ禍の留学で、煩雑な手続きはありましたが、カナダには日常が戻りつつあり、実りある留学ができました。

クリスマスの飾りを作る行事。写真手前は同室の友人。