【派遣情報】ソウル市立大学留学便り2013

2013年2月末から文学研究科の学生が、部局間交流協定校(2013年秋に大学間交流協定に拡大しました)のソウル市立大学に、交換留学生として1年間留学しました。留学生活のレポートが届きました。

8月〜

今回は8月からのソウル市立大学での生活をご報告いたします。
7月にたくさんの別れがありましたが、外国の留学生はもちろん、実は韓国人のバディとのお別れもありました。

留学前、日本でSeoul Mateに登録しており、慣れない留学生活も韓国人バディとSeoul Mateのおかげで韓国人の友達もたくさんでき、とても助かりました。Seoul Mateとは、留学生たちが韓国の生活に早くなじむことができるように、ソウル市立大学の韓国人学生たちがバディとなり、イベントなどを通してお手伝いしてくれるものです。学期により企画は異なりますが、みんなで有名な観光地を回ったり、食事に行ったりなど、留学生活に慣れるための一つのステップになることは間違いありません。韓国人から”現在生きる”韓国文化を学ぶことができるこの仕組みは、私には大きな助けとなるものでした。

1人の韓国人につき、2,3人の外国人留学生が割り当てられます。バディによりますが、週1で会う人もいれば、もっとよく会う人もいました。韓国語スピーチコンテスト、観光地巡り、文化祭での出し物、外食、DVD鑑賞など、全体イベントもあります。個別のものとしては、外食、バディの家に宿泊、ショッピング、学校でランチなど、人それぞれです。ソウル市立大学の学生は、Seoul Mateを経験することが交換留学の条件だとも聞きました。学期が終わると、次の学期も登録するかどうか決めることができます。正式に登録していなくても、イベントに自由参加できるフランクでフレンドリーなスタイルが良かったです。

夏休みに旅行をしている留学生が多い中、私は語学堂に通っていました。留学中ずっと語学堂に通っており、とても楽しかったのですが、1つだけ嫌なことがありました。それは交換留学生の時間の流れと語学堂生徒としての時間の流れの違いです。語学堂は10週間を通して1学期とされるので、交換留学生にとっては授業期間外に語学堂の試験があります。交換留学生の友人が、遊ぼう!という時に、試験勉強しなければいけなかったりします。自分で選んだ語学堂でしたが、友人たちの楽しい企画に一人だけ行けなかったりと、寂しかったこともありました。

交換留学生の中で語学堂に通うのは日本人がほとんどです。たまに日本人以外の交換留学生もいますが、とても少数です。それは、経済的な理由と韓国語習得自体にそれほど関心がないことが理由のようで、韓国語の習得よりも、世界遺産めぐりやショッピングなど違うことに時間とお金を費やしたい人が多いのだと感じました。

 
UOS_1308_1.jpg
語学堂授業の雰囲気。ひとクラスこのくらいの人数です。モンゴル人、台湾人、日本人、ウズベキスタン人、インドネシア人がいました。
 
 
UOS_1308_2.jpg
語学堂で学期ごとに文化授業があり、このときは冬のソナタでも有名な南怡島(ナミソム)でクラスのみんなと一枚。ソウルから北東へ約50kmの場所です。
 
 

前期に語学堂に通っていたということもあり、交換留学生の友達との時間があまりたくさんなかったのではないだろうかと考えました。後期はもっと楽しく良いものとしたかったので、自分は何を一番大切にしたいかを考えました。韓国語習得もやるが、どのようにすればもっと人とふれあえるかを考えた末、後期はGlobal Loungeでキーパーとして週3回働くことにしました。
後期の時間割は以下の通りです。人気で入れなかった授業のため予定通りにはいきませんでしたが、自分にとって大きな挑戦となる韓国語高級があったため、前期よりも確実に忙しくなりました。

TT_yoshida2.jpg

Global Loungeではソウル市立大学生向けに、留学生による外国語教室が開かれています。フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、日本語、英語(初・中・高級)など、さまざまなクラスがあります。Keeperの仕事は、Global Loungeのコーヒーを作ったり、掃除をしたり、音楽を流したりして、訪れた人たちがリラックスして話せる環境をつくることでした。1時間5000ウォンで、プチアルバイトになりました。学期の初めに連絡が回ってくるので、ソウル市立大に留学する人は、見逃さずに応募することをおすすめします。

Keeperになれたため、新たに来た交換留学生とも話す時間を持つことができ、より多くの人たちと、そしてより深く一人ひとりと関われたと思います。仕事の後は、そのまま残って語学堂の宿題もできます。(Global Loungeの横に語学堂生専用のK Loungeも後期に完成しました。)Global Loungeは、韓国人学生が国際交流するための場所としてつくられていますが、交換留学生にとっても勉強をしたり、交流を深める場所となっています。疲れた時に転寝する人もいるくらい落ち着いた環境で、交換留学生にとっては欠かせない場所でした。

 
UOS_1308_3.jpg
Global Lounge
 
 

UOS_1308_4.jpg

 

前期と同様、韓国語の授業はとりましたが、韓国語高級のクラスにあがりました。高級のクラスでは、中国人の留学生がほとんどで、何かにつけて討論したりすることもあり、私にとってはかなり大変なものとなりました。友達の助け、先生の助けもあり、苦しみながらも楽しく過ごせました。

新しくKorean Studiesという授業を取りました。韓国世界遺産と世界遺産を同時に勉強していく授業で、フィールドワークもあり好きな授業でした。授業は英語で行われます。グループでプレゼンテーション、期末テストもありますが、メンバーのおかげで雰囲気がとてもよく楽しめました。先生に質問をすると、次の授業までに調べてきてくれたりと、熱心な方でした。

夏休みは語学堂のため本当の休暇は短いものとなりましたが、一時帰国しました。日本人留学生の中ではこの期間の帰国は珍しいことではないです。その後韓国に戻り、4年前にハワイ留学でルームメイトであった韓国人の友人の結婚式に行ってきました。

UOS_1308_5.jpg
友人は新婦です
 
 

ハワイでの留学中、友人は『結婚するときは呼ぶから!』と言っていました。ちょうど私がソウルにいたため、本当に結婚式に参加することが出来ました。行ってみると、日本の結婚式とはかなり違っていて、もっと気楽な感じでした。実は、この日のために、きちんとした服を買いに百貨店に行ったのですが、『親友などものすごく近い関係でないかぎり、そこまでしなくて大丈夫です。』と店員の方にアドバイスをもらい、小奇麗なスーツのようなものを選びました。実際会場もそのような感じで、日本よりもカジュアルでした。

式場もローテーションがあるようで、1組終わるとその組はビュッフェを食べる横の会場へと移動し、すぐ違う組の結婚式が真横で行われるという不思議な空間でした。その様子を食事をしながらモニターで見れることにも驚きでした。結婚される方によって結婚式の雰囲気は違うのかもしれませんが、私が行った式は、二人の通っていた大学の教授のお話と二人の友人たち、何組からの歌のプレゼント。この二つが一番時間を取ったのではないかと思います。日本のように両親に手紙を読むシーンもなく、時間も短いですが、後々新郎新婦の内輪だけで伝統にのっとった式も上げたと聞きました。映像や写真を撮影するせいかもしれませんが、キスを人前でする回数も多いのです。後日、結婚式のアルバムも見せてもらったのですが、芸能人の写真集をみているような、とても完成度の高いものでした。『セルカ』という自撮りの文化もある韓国、写真に関しては、さすがだなと思う点ばかりです。友人は、写真撮影はとてつもなく疲れた、と言っていました。

後期は大分生活にも慣れてきて、新しい友達もでき、良い意味で忙しく過ごしました。学校の外になるべく出ることが目標でしたので、色々なものに刺激され過ごしました。

UOS_1308_7.jpg
寮のキッチンがまたリニューアルされました。パキスタンの学生など宗教上外食が出来ない方が多いため、キッチンを広くしてくれたようです。だんだんと住みやすく、学生が夜集まってお茶を飲みながらくつろげる場所ができました!(夜中1時まで)

学期が始まってみると、私のように前期から残っていた人たちは少なく、ほとんどが知らない交換留学生たちでした。徐々に友達も増えてきていましたが、前期の友達のことを恋しがる毎日を送っていました。しかし、自分の誕生日を境目に、気持ちを新たにすることが出来ました。

なぜかというと、前期からのメキシコの友人を中心に、サプライズパーティーを開いてくれたのです。誕生日の夜中0時に窓の外からバースデイソングが聞こえてくることなど、人生初めてで、窓を開けてみると、花火を手に持った友人たちが。前期からの友人は言うまでもなく、後期から来たまだ仲良くなって間もない友人たちが立っていました。プレゼントは前期に帰ってしまった友人からも用意されており、ビデオメッセージや手紙など。嬉しすぎて泣いたのは初めてでした。人生の中で、サプライズパーティーは何回か経験がありましたが、このときのパーティは弱った自分の心を温め、そして前に向かせてくれるものでした。留学とは勉強をしに行くことは言うまでもありませんが、それ以上に人との出逢いがあります。人との繋がりの大切さを改めて感じた幸せな夜でした。

UOS_1308_8.jpg
夜中0時、二階の自分の部屋から
 
 

10月にはAsiO Gustoというものに参加してきました。スローフード運動と関係があるイベントで約1週間開催されました。世界中の伝統料理体験やオーガニック食品展示などさまざまな催しものがありました。私はインターナショナルフードコンテストに出場しました。メキシコ人の友達とともにメキシコ代表として、メキシコ料理を作りました。フェスティバルに訪れていた韓国人のみなさんが私たちの料理の写真をとってくださったり、おいしいと言ってもらって、料理を通しても国際交流はできることを実感しました。

なぜ私がメキシコ料理を作れるかと言うと、前期からみんなで食事をする際に、よく彼女のお手伝いをしていたため、大体要領が分かっていたのです。日本料理よりも、あまり目にすることのできないメキシコ料理のほうがいいのでは、ということで、私がメキシコ料理人になりました。インタビューやコックの帽子、エプロン、Tシャツなどが用意されており、とても楽しかったです。

他の催しものも見てまわったのですが、韓国でも貴重な種類の卵や、マッコリでできている石鹸、各国が出している伝統的なお菓子なども食べることが出来ました。

UOS_1308_9.jpg
コンテスト会場はこのような立派なところでした
 
 
UOS_1308_10.jpg
UOS_1308_11.jpg
二人で作った料理です。参加者全員に参加者が作った料理の作り方が分かる本もいただきました。
 
 

季節も秋だと思えば、急に寒くなり、雪が降ったりしましたが、そのころに友人たちと慶州へ世界遺産を見に行き、そのまま済州島への方向へ下り、済州島をレンタカーで観光しました。その後自分の韓国語の力だけで1人旅に行くことも目標でしたので、大邱(テグ)へ行ってきました。やっぱり、1人旅のほうが得るものが多いですね。何があっても自分しかいない、それが自分をいつも奮い立たせます。

 

済州島も良かったですが、個人的には歴史的な遺産が多い慶州のほうが好きでした。きっと済州島へは春か夏に行くことがベストだと思います。済州島で売られているポストカードのほとんどが春か夏の景色でした。済州島で記憶に残ることと言えば、『海女博物館』です。街から離れたとこにありましたが、日本語でのビデオ上映、日本語での解説もあり、個人的にはとても満足しました。(韓国では、国立博物館は無料で入ることができ、それ以外であっても、大体約100円で入ることができます。)黒豚もおいしく、海鮮もおいしかったですが、ソウルよりも味付けが塩辛かったです。

 

一般的に韓国人は日本料理が塩辛いと言いますが、私が思うところ韓国料理は塩よりも砂糖をたくさん使っているのではないでしょうか。辛い料理もありますが、辛いだけでなく、甘さも感じることができます。ですので、外食に行くと、シメに困ります。たとえば日本で外食にいくと、飲んだ後にシメを食べますよね。それは大体塩気があるものでないかと思います。白ご飯には、甘いものよりも少し塩辛いものを合わせませんか?

 

実際にどうかは調べてみてないので何とも言えませんが、塩気のあるシメに慣れた私は、来たばかりのころは、ソウルでの外食後いつも物足りなさを感じていました。しかし、それも慣れてしまい、帰国後に感じた日本のみそ汁の味は『塩辛い』でした。初めは『日本料理が塩辛いなどない。』と思っていましたが、最終的には自分の身を通して理解することになりました。何事もその人の立場にたって考えてみなければいけないと言いますが、その人の立場に”たって”ではなく”なって”考えることの大切さと難しさも学びました。

 
UOS_1308_18.jpg
古墳だらけの慶州
 
 
 
UOS_1308_12.jpg
世界遺産 雁鴨池(アナプチ)の夜のライトアップは最高に寒かったですが、とても綺麗でした
 
 
UOS_1308_19.jpg
世界遺産 慶州の佛国寺にて
 
UOS_1308_13.jpg
済州島の海 夏にまた行きます!
 
 
UOS_1308_20.jpg
大邱(テグ)は、韓国最大の薬草市場があったので今でも韓方薬を町のいたるところでみることができます。特に韓方を売っている通りでは香りが変わります。韓方博物館はお勧めです。
 
UOS_1308_21.jpg
海印寺 高麗八萬大蔵経を見に行ったのですが、工事中で中は見られず隙間からのぞく程度でした。かなり山奥で山の上にあり行くのは大変でしたが、大きな岩でできた川と少し積もった雪の景色が息をのむほどきれいでした。実際高麗八萬大蔵経を見たわけではないですが、とても行きたかった場所であったので、それだけでも満足でした。
 

留学という特別な時だからこそ、普段やらないことができる時でもあります。そこで、私がしたことはクラブ活動。クラブと言っても正式なものではありません。オランダ人の友人とただひとつのゆで卵で始まった『Breakfast Club』です。初めは二人だけだったのですが、友人たちが朝、授業に行く前に私たちをよくキッチンで見かけることで興味を持ち、だんだんとメンバーも増え最終的には約10人のメンバーとなりました。国籍はアメリカ、メキシコ、カナダ、スペイン、オランダ、日本で構成されていました。週に1回程度行い、当番が朝ごはんを作るという単純なものでした。

 

それまでは、朝ごはんは食べないか、授業前にコンビニで軽くものを買う程度で済ます人がほとんどでした。私は寄宿舎の横のカフェテリアで200円だして一人でご飯を食べていました。このクラブ活動は朝から友人たちと楽しい時間を過ごせ、また早起きしなければならないので(9時から授業の日も活動したため)、一日がより充実し、しかも色々な国の朝ごはんが食べられるというメリットがありました。私以外の人たちは食後のティータイムが当たり前のようで、授業が10時からであればその時間までロシアの友達から貰ったティーとアメリカのチョコレートを食べながら愉快で贅沢な朝を過ごしていました。朝ごはんという当たり前のことを少し違った形ですることで、それがとても楽しいものとなることに気付きました。今はみんなの手料理が恋しいです。今度再会したときに朝ごはんを作り合うという約束をし、次の再会をすでに楽しみにしています。

 

後期に住んだ部屋はキャンパスが眺められ、四季のうつり変わりを自分の窓から見ることができました。

UOS_1308_14.jpg
夏(9月)緑が青々としておりますが、日陰や風は冷たくなってきました
 
 
UOS_1308_15.jpg
秋 葉の色が変わり始め、言葉では言い表せない美しさでした。札幌では秋は短く、地元よりも秋の赤々とした色があまり見れなかった気がします。その色は本州でみていた秋の風景と似ており、私にとって、久々の慣れ親しんだ『秋』の色でした。
 
 
UOS_1308_16.jpg
夜のキャンパス 静かで落ち着きます
 
 
UOS_1308_17.jpg
冬 雪が積もりますが、札幌ほどではありません。私がいた11月、12月の温度はソウルのほうが低かったかもしれません。学校の湖も凍ります。
 
 

ここには書ききれないことが山ほどありますが、10カ月の留学を通して、韓国語習得も含め、それ以上に自分の人生において貴重で忘れることのできない数々のことを体験しました。これから一生関わっていくであろう友人たちとの出逢いもありました。国や言葉が違っていても、絶対に分かりあえる。世界は広いが、狭い。色々なことを考えるきっかけになりました。

 

留学中にも、たくさんの人に支えられ、その人たちのおかげで留学が良いものとなったこと、その人たちのおかげで吉田 朋代という人間の中にまた新たな色ができあがったこと。それを忘れることなく、常に感謝しながら、これからに繋げていきたいと思っています。

 

留学前から、ご配慮くださった佐々木亨教授に改めて感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。そして、1年前に行かれた元由さん、メールでのやりとりや、現地で使える生活用品を譲ってくださってありがとうございました。2年前に行かれた大西さん、留学前に相談にのってくださってありがとうございます。このお二人のおかげでスムーズに留学生活を送ることができました。