〈Hokkaidoサマーインスティテュート2018〉 “Self in Phenomenology and Japanese Philosophy”/ 「現象学と日本哲学における自己」 開催されました

8月1~3日、6~7日の5日間、Hokkaido Summer Institute 2018 / 「現象学と日本哲学における自己」北海道サマーインスティテュート2018開講科目のひとつ、”Self in Phenomenology and Japanese Philosophy”/「現象学と日本哲学における自己」が開催されました。

この科目は、「自己とは何か」、「われわれはどのようにして自己についてより良い理解を得ることができるのか」という問いに答えるために、近現代西洋哲学と近代日本哲学にみられる多様な「自己」についての言説を深く読み解くことを目的として開講されました。

5日間の日程のうち、まず、初めの2日間の講義で、昨秋からアメリカ・ペンシルバニア州立大学で教鞭を執ることになったド・ウォレン先生が、現象学の祖であるE.フッサールと『存在と時間』のM.ハイデガーの「自己」に関する言説について講義を行いました。その後、香港中文大学の張先生は、近代日本の代表的哲学者である西田 幾多郎の「自己」論について講義し、本研究科・倫理学講座の田口先生は、フッサールと西田の「自己」概念を比較しつつ講義しました。それぞれの講義の後には、ディスカッションの時間が設けられ、参加者たちは講義内容について講師らに質問したり、自分たちの考えを議論し合いました。このアクティブラーニングを通じて、参加者たちは、テーマについてさらに理解を深め、自身の考えを発展させることができました。

ニコラス・ド・ウォレン先生(ペンシルバニア州立大学/アメリカ・准教授)
張 政遠(CHEUNG, Chin-yuen)先生(香港中文大学・講師)
田口 茂先生(北海道大学大学院文学研究科・倫理学講座・教授)
講義を熱心に聞き入る受講生たち
講義内容について質問する受講生

さらに最終日は、受講生たちのプレゼンテーションの時間にあてられました。受講生らは数名のグループに分かれ、それぞれが選んだテーマについてスライドを使ったプレゼンテーションを行いました。世界の第一線で活躍する講師陣を前にしての英語でのプレゼンテーションは、受講生たちにとってとても貴重な体験となりました。講師や他の参加者からの質問にもスムーズに対応し、5日間の受講の成果が発揮されました。講義の終了時には、参加者たちの達成感と自信に溢れた笑顔がありました。

プレゼンテーションの様子
プレゼンテーションの様子

3年間にわたり、近代哲学における西洋と東洋の比較という観点から実施されてきた本科目は、今年度をもって終了します。次年度は、エナクティヴィズム(enactivism)―認知や経験とは、単に環境からわれわれ生物が受動的に受けとるものではなく、われわれが能動的に行為することによって作られるものであるとする哲学的概念―について、哲学、認知科学、神経科学による学際的アプローチから迫ります。