若手研究者支援セミナー2017「キャリアパス カルト」開催されました

12月4日(月)、若手研究者向けに、キャリアパスの多様性について考えるセミナーが開催されました。当日は、博士後期課程の学生、専門研究員のほか、博士後期課程への進学を検討している修士学生、学部生の参加もありました。今回のセミナーでは、北大文学研究科博士後期課程を経て、大学のほか、社会のさまざまな領域で活躍する方に話題提供をしていただきました。

はじめに司会の村田先生からセミナーの意図と話題提供者の紹介がありました。その後、話題提供者3名から、現在のお仕事の内容とそこに至るまでの道筋の説明とともに、キャリアパスに関する考え方についてご意見をいただきました。3名のお話の後、田口先生による文学研究科から広がるキャリアパスの多様性についてのお話がありました。

セミナーの意図を説明する村田先生

話題提供者お一人目の見附先生は、博士後期課程修了後、専門研究員を経て今年度からアカデミックポスト(北海商科大学商学部・専任講師)に就かれました。「『研究者』という仕事の“実態”」と題して、現在の勤務先でのお仕事の説明と、就職に至るまでの経緯についてお話いただきました。校務や研究環境など、後輩たちに向けてだからこそ語れるリアルな実態を伺うことができました。

毎年着実に学会発表、論文投稿を行い、科研費や出版助成も獲得して業績を重ねてこられた見附先生。
研究実績は就職につながり、博士〜専門研究員時代の知識の蓄積は授業にも活かせるとのことです。

お二人目の小西さんは、博士課程修了後、民間のシンクタンク(一般社団法人 北海道開発技術センター・調査研究部)の研究員として就職され、北海道におけるさまざまな課題を、調査研究を通して政策・施策に反映するため業務に取り組んでおられます。「アカデミック・ポストじゃないと負け組なのか?」という印象的なタイトルで、大学院生時代のエピソードや、現在の会社を選んだ理由、就職して2年半で感じたこと、アカデミックポストに対する考え方などを、さまざまなエピソードを交えてお話くださいました。

学生時代は、とにかく「他流試合をしまくる」ことでたくさんの人的ネットワークを作り上げた小西さん。
現在の会社とも参加した研究会で出会い、共同研究につながったそうです。

3人目の佐藤さんは、博士後期課程を単位取得退学して、民間企業(クリプトン・フューチャー・メディア株式会社)の研究技術員として就職されました。産学連携プロジェクトに関わる調査・研究・開発に取り組まれている関係上、クリプトン社にて勤務されていますが、ご所属は明治大学の研究・知財戦略機構となります。「人文・社会系博士課程に在籍する一学生が進路について思い悩んだ上、外部に職を得るまで」というタイトルで、職を得るまでの流れ、進路を選ぶ際に考慮した要因、大学の外に出ると大学で学んだことは役に立つのか、民間企業で働くことのメリットについて、詳しくお話いただきました。

データ分析ができて音楽にも詳しく、産学連携の橋渡しができる人材を求めていた会社のニーズにぴったり合致して就職が決まった佐藤さん。
大学院生時代は、話題提供者の小西さんが出されたフィールドワークの成果をデータ分析するという共同研究をされていたそうです。

最後に田口先生から、時代の変化と人文学の関係、文学研究科から広がる道についてお話がありました。AIやロボットが進化する今の時代こそ、人文知が求められ人文学が本領を発揮できる状況にある、アカデミズムと産業界の流動性が高まる中、キャリアパスは多様化しつつあり、文学研究科の大学院生にはさまざまな道が開かれているという、勇気づけられるお話でした。

AIやロボット時代こそ、人間の生きる意味や目的が問われ、そこで人文知の本領が発揮できます。
「文学研究科のみなさんは、時代の最先端を歩んでいるのでは?」と田口先生。

質疑応答を経てセミナーは終了しましたが、その後も参加者が会場に残り、話題提供者と語り合う時間がしばらく続きました。参加者アンケートによると参加者の満足度は非常に高く、また同じような会を開催してほしいという希望が寄せられました。

以下、アンケートで、話題提供者に寄せられた質問とその回答です。

Q. 学生時代、生活管理に失敗して頑張れなかった日数が多くなった際は、どう精神状態をリセットされていましたか。

A.

★遮二無二にフィールドワークに出掛けました。
文化人類学だからこその回答かもしれませんが、僕はそうしていました。
(小西さん)

★そのような場合リセットすべきは精神状態ではなく研究テーマだと考えます。
「頑張れなかった」のは今の研究テーマが自分にとって面白くないからだと思います。
面白ければ研究が滞ることはありません。
しがらみや打算によって研究テーマを縛られ、その結果研究のモチベーションも湧かず、生活が乱れるようになるぐらいなら、全て捨て去って研究テーマを別のものに改めるべきです。
もちろん研究対象や専攻を変えるところまでする必要はないでしょう。
自分がこれまで携わってきた研究領域の中で本当に面白いと思えるものを研究の中心に据える。
それだけで、「頑張れない」状況は解消します。
経験から言って自分の思い入れのない研究は成功しません。
それはイヤイヤやって無理矢理ひねり出され研究でしかないからです。
研究を人生の手段ではなく目的にすることができれば、良い成果もおのずと生まれてくると思います。
(見附さん)

★まず食事と睡眠をたっぷり取ることでしょうか。
いくら焦ってみたところでコンディションが悪い状態ではたいした成果も上がりませんし、
成果が上がらないせいでますます焦るという悪循環にはまりこんでしまいます。
まず体調を整えた上で、できることにひとつずつ取り組んでいくというのが良いかと思います。
(佐藤さん)