「プラス1ピース読書会Vol.8」開催されました

9月27日(水)、文学研究科「書香の森」にて第8回「プラス1ピースの読書会」が開催されました。今回取り上げたのは、浅沼 敬子先生(芸術学講座)の『循環する世界 山城 知佳子の芸術』です。

読書会の冒頭で、山城 知佳子さんの映像作品『アーサ女』の一部が上映されました。その後、浅沼先生から山城 知佳子さんの紹介、表現媒体の変遷について説明がありました。また、『循環する世界』の書籍内写真で紹介されている代表的な作品について、浅沼先生の解説がありました。書籍内の写真はモノクロですが、読書会ではカラー写真で紹介され、本で見るより強い印象を受ける作品もありました。

山城作品は、沖縄という土地の特殊性を、政治的な対立の図式では表現せず、ちょっとしたユーモア、美しさを加味することで、対立を融和させる架け橋となるよう意図して表現されていることを、いくつかの作品例を用いて紹介されました。さらに、戦後生まれの山城さんが戦争体験者の語りを「わからない」と感じたことに衝撃を受け、その後に完成した『あなたの声は私の喉を通った』を紹介しながら記憶の継承の意味合いについての問いかけがありました。

書香の森の絵画展示スペース(写真奥)では、この日限定で、
山城 知佳子さんの写真作品(浅沼先生所蔵)の展示が行われました。
手前の展示ケースでは、山城さんに関係する書籍やパンフレットの展示も行われました。

今回のプラス1ピースのキーワードは「泡」。山城作品の特徴のひとつである波の音などの水音、水泡について、『BORDER』『アーサ女』『沈む声、紅い息』などの作品を例に、そこに込められた意味についてお話がありました。また、浅沼先生とそれらの作品との出会い、そこで生まれた感動について先生ご自身の作品体験を語っていただきました。

『沈む声、紅い息』のインスタレーション作品の「泡」の効果と、作品の主題について紹介する浅沼先生
あいちトリエンナーレで山城作品『土の人』を見た参加者から質問を受ける浅沼先生

読書会終了後は、会で紹介しきれなかった『あなたの声は私の喉を通った』の映像を見ながら、山城ファン、浅沼ファンの居残り参加者と交流の時間をもちました。

偶然ではありますが、この日の読書会終了後、山城 知佳子さんがAsian Art Award 2017の大賞を受賞されたとのニュースが飛び込んできました。お祝いを申し上げます。開催者にとっても嬉しく印象深い読書会となりました。