若手研究者支援セミナー2023「海外でプラスαキャリアを積もう大学院ポスドク時代の海外研究-」開催されました

10月31日(火)に文学研究院研究推進委員会主催の若手研究者支援セミナー2023「海外でプラスαのキャリアを積もう-大学院・ポスドク時代の海外研究-」がハイブリッド形式で開催されました。本セミナーは、海外での研究に関心のある若手研究者が、計画から渡航、現地での研究活動、帰国後までの流れを把握し、海外研究を実現できるよう支援することを目的として企画しました。2015年と2018年と2020年の計3回、海外留学編として同様の趣旨でセミナーを行い、いずれも好評を博しており、今回は4回目の開催となります。

会場風景

はじめに、研究推進委員会研究支援専門部会長の笹岡正俊教授(地域科学研究室)から話題提供者の紹介と本セミナーの概要説明がありました。

吉村佳樹さん(哲学倫理学研究室 博士後期課程2年)

一人目の話題提供者は哲学倫理学研究室博士後期課程2年の吉村佳樹さんです。吉村さんは、2022年9月から2023年8月までの1年間、カナダのクイーンズ大学でVisiting Research Student制度を利用して道徳理論の研究を行いました。留学費用、受入教員の決定方法、渡航前の事務手続の注意点、博士後期課程在学中に留学するメリットとデメリットについてお話がありました。留学を経験し、母語でできないことは外国語でもできない、語学力よりも会話力や心構えが重要だという気づきがあったと言います。留学中はやりたいこと全てをこなすのは難しいので、自分の軸を決めて優先すべき事から取り組む必要があると話しました。

覚知頌春さん(文学研究院専門研究員)

二人目は文学研究院専門研究員の覚知頌春さんです。覚知さんは、博士後期課程在学中の2018年9月から2020年8月までの2年間、ドイツにあるクリスティアンアルブレヒト大学キールで、客員研究員として低地ドイツ語の研究を行いました。覚知さんは、大学入学後にドイツ語学習を開始し、北大でドイツ語ネイティブ教員の授業を受けるなどして語学力の向上に努めました。留学にあたって、ロータリー財団の奨学金獲得と受入教員とのコンタクトが重要だったと話しました。在外研究のメリットとして、言語研究に必要な文献や資料の集めやすさ、フィールドワークの行いやすさ、近隣の言語や方言へのアクセスのしやすさ、研究者との交流などを挙げました。覚知さんは令和6年度の日本学術振興会海外特別研究員への採用が内定しており、キール大学で研究を継続予定です。

金子沙永准教授(心理学研究室)

三人目は、心理学研究室の金子沙永准教授です。金子先生は、2013年に東京大学で博士号を取得後、2013年から2015年までの2年間を日本学術振興会海外特別研究員として、2015年から2017年までの2年間を同特別研究員SPDとして合計4年間、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校にて、視覚心理学の研究を行いました。受入研究者の探し方、海外特別研究員と特別研究員の違い、学振への応募から渡航までのスケジュール、学振以外のポスドクの探し方、準備しておいてよかったこと、大変だったこと、留学して良かったことについてお話がありました。金子先生は、博士号を取得するまで首都圏以外で生活したことがなかったそうですが、アメリカに行ったことで多くの研究者と知り合ったり、海外での学会参加へのハードルが下がったりと自分の世界が大きく広がったと話しました。(※SPDは令和3年度採用分以降新規募集を停止)

 

菅井健太准教授(言語科学研究室)

四人目は、言語科学研究室の菅井健太准教授です。菅井先生はブルガリア語やロシア語をはじめとするスラブ諸語が専門で、言語接触による言語変化の仕組みを研究しています。日々の生活と結びついた言葉の使われ方を知ること、研究に必要な言語データがなく自分で調査する必要があったことが海外留学の動機となったそうです。菅井先生は、東京外国語大学大学院在学中に、経団連国際教育交流財団の奨学金を得て2014年10月から2016年9月までの2年間ブルガリアのソフィア大学 “聖クリメント・オフリドスキ” で研究を行いました。現地でフィールドワークを重ねることで、インフォーマントが家族と話す「内の言葉」を知ることができるようになったそうです。フィールドワークの魅力は、ことばの探求を通じて現地の人々との新旧の出会いや交流が繰り返されること、またその過程でもたらされる新たな視点や発見によって研究も相互作用的に発展させていくことができることだと語りました。

 

4名の方々のお話に引き続き、文学研究院研究推進室飯塚URAから、参加者に事前に配布された資料に基づく助成金についての情報提供がありました。

続いて、参加者との質疑応答が行われました。奨学金に採用されるために重要なことは何か、Visiting Research Student制度はどのような制度なのか等の質問があり、それぞれの話者が回答しました。

笹岡正俊教授(地域科学研究室)

セミナーの結びとして司会の笹岡先生は、4名の方のお話には、留学を勧める共通のメッセージが込められていたことや、自身の海外での研究や就労経験は大きな財産となっていることを述べ、ぜひ果敢に海外での研究に挑戦してほしいと参加者にエールを送りました。

 

当日は、大学院生を中心に計16名の方にご参加いただきました。アンケート結果では、全員が「満足」あるいは「やや満足」と回答しています(有効回答8名・回収率50%)。自由記述欄には、「4人の方々がそれぞれ異なる制度を利用していたことが大変参考になった」、「それぞれの話の中に自分の状況に結びつけて考えられるネタがあって、それを探しながら聞くのが楽しかった」、「とてもモチベーションが上がった」、「参加しやすい時間帯で良かった」等のコメントが寄せられました。