〈Hokkaido Summer Institute 2023〉「侵略的外来種管理学総論2023」開催されました

8月14日~18日の5日間、Hokkaido Summer Institute 2023 / Hokkaidoサマー・インスティテュート2023開講科目のひとつ、Regional Sciences (Lecture) : General Theory of Invasive Alien Species Management 2023/ 地域科学特殊講義:侵略的外来種管理学総論2023が開講されました。

海外招へい講師のブルース・ワーバートン先生(ランドケアリサーチ研究所・NZ)

本科目の講師は2017年~2021年(2020年はコロナ禍のため中止)にお招きしたニュージーランドのLandcare Research (Wildlife Ecology & Management)/ランドケアリサーチ研究所に所属するPhil COWAN先生の後継講師として、2022年からお招きしているBruce WARBURTON先生です。ランドケアリサーチ研究所(正式名称:Manaaki Whenua – Landcare Research)は、ニュージーランド政府が設立した、土壌・生物多様性をテーマとして扱う第1級の研究所です。この研究所で、Bruce先生は長年、ニュージーランドの外来種管理対策にかかわる研究とその対策・実践分野で最先端の研究をしている研究者です。授業では、Bruce先生がこれまで長年にわたり携わってきた様々な事例について、豊富な画像やエピソード、統計とともに学びます。

本科目は、世界規模で緊急に取り組むべき課題のひとつである侵略的外来種(IAS: Invasive Alien Species)管理について基礎となる知見と技術を学び、同分野では最先端のニュージーランドにおける外来種問題に取り組む枠組みや日本の現状についての知識を修得する機会を得ることを目指した大学院生向けの内容となっており、大学院生向けの開講は今年が5回目です。

講義では、ニュージーランドを中心とした事例だけではなく諸外国における事例も紹介しつつ、全体を通して何をもって有害な”Invasive Species”と定義づけるかについて問い続けます。その上で、事例や国・地域ごとに異なる、対象とする動物や植物、それらが生息する環境、人間社会との関係など、Invasive Speciesをどう管理するか、どう制御するか、その手法について具体的な成功例や失敗例を参照しながら自分たちにどんなことができるのかを考えます。

5日間にわたる集中講義では、ニュージーランドで問題になっている雑草や昆虫、哺乳類の最先端の事例だけではなく、協働で講義を行う池田先生の研究対象である日本のアライグマ問題などを含めた世界中で課題となっている多様な事例について学びました。講義では、何をもってその種を”pest”とみなすのか、同じ外来種であっても、その種が有害視されるのは人間側の問題であって共生する動物や植物にとっては無害な例、逆に人間にとっては害ではないが、在来種や固有種にとっては有害な例、などが紹介されました。また、ニュージーランドのように最先端の研究を行っている国でも良し悪しの判断や解決が難しい、駆除における動物福祉の考え方やコストパフォーマンスの問題、長期的な視点での影響が不明な手法の可否、法律や倫理が関わる問題などについて詳しい説明がありました。

毎回、授業の最後にはその講義で扱った事例について他にどんな事例が考えられるか、Bruce先生から学生に問いかけます。学生は知識を総動員しながら答えますが、どうしても分からない様子の場合はBruce先生から、身近にある似たような事例や日本にはないけど海外の一部の国ではよくある事例、または今後、日本でも起こる可能性がある事例等について分かりやすい説明をする場面がありました。学生はじっくり、分かるまで話を聞くことができ、対面授業ならではの充実した時間となったようです。

侵略的外来種管理学についての最新の情報と対策施行について最前線で活躍する研究者から直接学べる本科目は、責任教員としてBruce先生と協働で授業を実施してきた池田透教授(地域科学研究室)の退職に伴い来年夏の開講は一度お休みし、2025年夏以降の再開を予定しています。

See you next time!