〈Hokkaido Summer Institute 2022〉「侵入生態学原論2022」開催されました

8月1日~5日の5日間、Hokkaido Summer Institute 2022 / Hokkaidoサマー・インスティテュート2022開講科目、Social Ecology: Principles of Invasion Ecology 2022/ 社会生態学: 侵入生態学原論2022が対面(エンレイソウ)およびZoomでハイブリッド開講されました。

本科目の講師は、2017年以降(2020年はコロナ禍のため中止)毎年招へい講師としてお招きしているAl GLEN先生が引き続き担当、Al先生が所属するニュージーランドLandcare Research (Wildlife Ecology & Management)で日々研究をしている侵略的外来種についてその歴史的経緯や最新の事例について学びました。近年、在来種の減少や人間への健康被害等、生態系や人間社会への影響が問題となっている侵略的外来種について、その侵入状況と被害の実態だけではなく、その原因及び対策への理解を深めることを目的として学部生向けに開講される本科目は、今年で5回目を迎えました。
講義では、多くのスライドや動画を利用して侵入生態学についての基礎知識をニュージーランドやオーストラリアの事例とあわせて日本の事例についても学びます。

海外招へい講師のアル・グレン先生(ランドケアリサーチ研究所・ニュージーランド)

授業はまず、Al先生の自己紹介に続きランドケアリサーチ研究所についての紹介と最先端の研究についての話がありました。外来種を探すフィールドワークで研究者は、優秀な嗅覚を持ち外来種発見に大活躍する犬とバディを組みます。広大なニュージーランドの自然を背景に仕事をする紹介スライドでは、犬好きなAl先生とバディ犬が楽しそうに写っている1枚もありました。
続いて、現在ニュージーランドやオーストリアに生息する哺乳類や植物、鳥類と様々な要因で絶滅してしまった動植物について歴史的な背景とその経緯について解説がありました。もともと生息していた動植物で現在も見られるもの、ヨーロッパ人が来るはるか前に海を渡って移住した先住民の先祖と一緒に移り住んだもので定着したものとできなかったもの、そして大航海時代以降にヨーロッパ人によってもたらされた動植物やそれによって絶滅した種について、更には今現在も貿易航路をコンテナ船で運ばれる”侵入者”がたくさんのスライドで紹介されました。現在、ニュージーランドの典型的な景色と思われている植生が実はイギリス人が移住した際に祖国に似せて人工的に造形した植生であったり、ヨーロッパ人が大型哺乳類を持ち込む前は最大の哺乳類は蝙蝠だった、など意外な内容の連続でした。

(絶滅に瀕したのち、個体数が回復している固有種を画像で紹介するAl先生)

コロナ禍の影響で、マスク着用と常時換気やこまめな消毒が必須の対面授業ですが、学生の反応を見ながら授業を進めることができ、講師の先生にとってはオンラインよりも授業の進捗を学生の理解度に合わせやすいようでした。授業期間中、学生はいつでも授業中であれば口頭で、授業時間外にはメールで質問を送ることができ、翌日の講義でも気軽に質問ができるよう授業開始時には質疑応答の時間が設けられていました。丁寧な授業運びで、学生も慣れない英語での学習をスムーズに進められたようです。

(ハイブリッドにも対応できるよう授業を準備)
(エンレイソウのふかふかのソファに座っての授業は貴重な経験です)
(積極的に質問する学生さん)

5日間にわたる集中講義の中で、昨年に続き今年も毎日その日の講義の最後には理解度を確認するクイズを出題。クイズを解いた後は、Al先生と池田先生による答え合わせと解説が行われました。その日の講義を反映したクイズ10問の小テストを利用した復習を毎日行うことで、学生は講義内容をより深く理解することができました。

昨年はコロナ禍で海外から講師の先生を招へいすることができず、初めてHSI科目をオンラインで開講しましたが、ニュージーランドと日本との直行便が限られオーストラリアでの乗継で移動時間が倍になる中、今年はなんとか来札いただくことができました。Al先生の多大なご協力と責任教員との十分な連携と準備によって、緑鮮やかな夏の北海道大学札幌キャンパス内エンレイソウにおいて対面授業を開講することができました。学生は通常の授業ではなかなかか機会のない英語での講義を受けることができ、貴重な経験になったようです。

侵入生態学の最前線で実際の対策現場にも携わる世界の第一線で活躍する研究者を招いて英語で行う本科目は、来年度も引き続きAl先生をお招きして2023年夏に開講される予定です。