【プラスミュージアムプログラム】開講記念公開シンポジウム「ミュージアム発の幸福論」730日に開催されました

2022年7月30日(土)、文化庁からの文化芸術振興費補助金を受け、「令和4年度 大学における文化芸術推進事業」の一つとして、「ミュージアムにおける異分野との「対話」と「寄り添い」を通じた人材育成事業」(略称: プラス・ミュージアム・プログラム)がはじまりました。キックオフイベントとして、公開シンポジウム「ミュージアム発の幸福論」を開催し、オンラインでの参加者を含めて全国各地から120人以上が集まりました。また、8月16日までのアーカイブ視聴期間では364回の再生回数がありました。

当日は、寳金清博総長よりビデオメッセージにて開会の挨拶をいただき、その後、本プログラムの代表今村信隆准教授よりこのプログラムの趣旨について説明がありました。シンポジウムの前半は、4名の講師のご報告、後半は4名の講師と今村准教授によるパネル・ディスカッションが行われました。

まず、今村准教授による本プログラムの趣旨説明では、ロゴマークのコンセプトについて博物館の「博」を表したものであり、「博」という漢字は実は沢山の「+」からできているという思いを紹介した上で、本プログラムでは、ミュージアムが持っている底力をどのように社会の課題に足し算していくかについて皆さんと一緒に考えていきたいと説明しました。

最初のあべのハルカス美術館上席学芸員・浅川真紀氏による報告「「幸せ」ってなんだっけ? ミュージアムの現場から考える幸福論」では、自身が学芸員として、人々と作品の出会いをサポートしてきた経験をもとに「幸せをもたらす幸せなミュージアム像」について語っていただきました。

続いて、九州産業大学地域共創学部・緒方泉教授の報告「博物館で、リフレッシュ効果がある?-国内外の「博物館浴」事例から考える-」では、博物館でのリラックス効果(博物館浴)について、国内外の最新事例を紹介し、生理・心理測定による研究手法の統一化に向けた現状と課題を発表いただきました。

北海道大学工学研究院・小篠隆生准教授からの報告「地方都市における文化拠点形成によるまちづくりの展開」では、人々に幸せを感じさせる場づくりの事例として、北海道東川町が「適疎」なまちづくりという考え方のもと、小学校と地域交流センターの移転改築から旧小学校の校舎・用地を再生した「せんとぴゅあ」の一連の取組みを紹介いただきました。

最後に北海道大学文学研究院・佐々木亨教授からは「ミュージアムで得る「価値」とは?:「対話」のチカラ」と題して、いくつかの事例を通して来館者がミュージアムで得る「価値」は実に多様であるとした上で、さらにミュージアム自体が、実は「対話」的な存在ではないかという本事業における立ち位置について提起いただきました。

後半のパネル・ディスカッションでは、本事業の代表である文学研究院・今村信隆准教授の司会進行で、長期間で次世代への働きかけがもたらす幸福やミュージアムの価値測定の限界と可能性について議論を繰り広げ、オンラインと会場から質問も受付けました。

最後に文学研究院・藤田健研究院長が閉会のご挨拶に立ち、今後のプログラムに対する期待を表明されました。

報告者: 卓 彦伶(北海道大学文学研究院 特任准教授)