若手研究者支援セミナー「学振特別研究員の申請に向けて準備は1年前から!」開催されました

5月29日(金)に文学研究院研究推進委員会主催の若手研究者支援セミナー「学術振興会特別研究員DC・PD申請書の書き方セミナー2020~学振特別研究員の申請に向けて―準備は1年前から!~」がオンラインで開催されました。映像・現代文化論研究室、哲学倫理学研究室、行動科学研究室、東洋史学研究室にそれぞれ所属する4人の現役学振特別研究員に話題を提供していただき、研究の位置づけや申請書で問われていることは何か、ということ、審査セットと申請内容について、”なぜこの研究なのか”をいかに申請書に落とし込むか、といったことについて自身の体験を踏まえたお話を伺いました。

セミナーのサブタイトルは、2017年度、2018年度、2019年度に続き「準備は1年前から!」。と題し、2020年5月申請のためのセミナーではなく、来年2021年5月の応募を目指す若手研究者を対象に開催されました。実際に申請書に着手するのは年明けから年度末にかけた提出前の2~3ヶ月前が一般的かもしれません。ですが、本当の準備は、学振特別研究員制度について情報収集をしながら日々の研究の中で自分の研究テーマやキャリアプランを考えていくところからすでに始まっていることを参加者に知ってもらう機会になるよう企画しました。

今回のセミナー開催は、北大のBCPレベルが2~3で学内施設への出入りが制限されていることを考慮し、オンラインでの開催となりました。話題提供者には予めオンデマンド用に動画を作成してもらい、参加者には事前に視聴してもらいました。セミナー当日は動画視聴を前提での参加とし、学振特別研究員制度に関する概要説明と情報提供、教員コメンテーターからのアドバイス、動画の内容に関する質疑応答を同時配信する手法をとりました。オンライン開催は初めての試みでしたが、参加者からは事前に動画視聴することで内容をしっかり理解することができた、落ち着いて聞くことができた、自分のペースで進められた、など好評でした。

オンデマンドの動画は下記のタイトルで、令和2年度採用DC2のモルナール・レヴェンテさん( 映像・現代文化論研究室)と白水大吾さん(哲学倫理学研究室)、令和2年度採用DC1の髙橋稜央さん(東洋史学研究室)と中田星矢さん(行動科学研究室)の4人の現役学振特別研究員に協力していただきました。
モルナールさんは、”「なぜ、日本でこの研究で研究者を目指すのか」をどのように研究目的・内容・特色・志望動機に落とし込むか”、白水さんは、”質問をよく読む。”ことの意味について、中田さんは、”研究の位置づけ-隣接領域との関連”をテーマに、髙橋さんは、”書面審査セットと申請内容~内容を「誰に」伝えるか~”を分かりやすく資料と動画にまとめてくれました。

セミナー当日は、まず始めに日本学術振興会の学振特別研究員とは何か、について研究推進委員長の藏田伸雄先生(哲学倫理学研究室・教授)から学振特別研究員制度の説明がありました。制度の概要だけではなく、学振特別研究員になると海外の大学や研究機関に在籍することや長期のフィールドワーク、世界最先端の研究にふれる機会があることを話しました。

その後、事前に参加者からいただいていた質問と、その場での質問に話題提供者と教員から回答をしました。

 

最初の質問は、白水さんへの”問い”を見つけることについての質問でした。白水さんは、考え方の転換として先に問い、ではなく「先に魅力的な考えや回答」があり、それに見合った「問い」を見つける、とアドバイスしました。
次に、審査員を意識して申請書を書くことについての質問がありました。話題提供者や先生からの回答は、異なる分野の審査員に向けて申請書を書くので「全くの素人向け」ではなく「何かの専門家である人向け」に書くこと、たくさん書きたいことがあっても字を詰め込まないこと、遠くから眺めて読んでもなんとなく内容が分かるように文字の大きさやフォントに気を付けること、が挙げられました。
更に、髙橋さんからは、分かりやすく見やすく書くことの大切さ、モルナールさんからは外国人にとってライバルは他の留学生ではなく日本人学生なので特徴的な何か光るものの重要性についてコメントがありました。
「研究業績はどのくらいあったらよいのか、どう書いたらよいか」という質問に対しては、中村先生からは「研究業績欄以外にも業績を書いて、業績欄に誘導し頻繁に明記すること」や「何もないのは難しいが、そもそもDC1に応募する場合は業績がまだないこと」、白水さんからは「ほとんどなくても大丈夫」なこと、髙橋さんからは「査読有の論文はなかったが、学部時代に奨学金をとってスペインに行ったこと」を書いたこと、藏田先生からはDC1では業績はそれほど比重が大きくないこと、といった回答が寄せられました。
教員コメンテーターの池田透先生(地域科学研究室・教授)からは、大学院生が申請可能な研究費として学振特別研究員だけではなく、民間を含め、様々な若手研究者向け助成金があることについて紹介がありました。採用された場合は業績となることはもちろん、たとえ不採択であっても自分の研究をまとめるよい機会になるとアドバイスがありました。
また、藏田先生からは申請書の欄にたくさん書きたい気持ちは分かるが、申請書の研究内容欄は自分をアピールする場ではなく研究をアピールする場なので文字は大き目に、話題提供者の動画はよくまとまっているのでまだ未視聴の場合はぜひみるように、という助言がありました。
大沼先生からは、審査する人は「賢いが無知」であること、広い分野でも細かい専門分野のことは知らない人であること、研究の説明は「言葉の定義を説明する」ことではないこと、修士のうちに論文を書くとよい、というコメントをいただきました。
最後に司会の中村三春先生からは、思いの丈を申請書に入れること、学振特別研究員以外のいろいろな助成金にも積極的に応募することで経験を積むことになる、とまとめていただきました。

     

当日は、修士課程、博士後期課程の大学院生を中心に学部生とあわせて計23名の方が参加しました。アンケート結果では、ほぼ全員が「役に立ちそうだ」と回答(有効回答12名・回収率52.2%)。また自由筆記欄には、「審査側の視点でのアドバイスは役に立ちそう」、「業績(DC1)についての話が非常にためになりました」、「事前視聴のスライドがただの説明などに終始せず、示唆に富んでおりとても刺激的でした」、等のコメントが寄せられました。

今年度も、2021年2月頃に実践編として、「申請書の書き方相談会」を開催する予定です。当日は教員による話題提供と併せて、審査経験のある教員と現役学振特別研究員による個別面談も設けますので作成中の申請書(仮)を持ち込みアドバイスをもらうことも可能です。また、実際にこれまで採択されたDC・PD・RPD・外国人特別研究員の申請書類を閲覧できるブースを設けますので、どうぞ奮ってご参加ください。

【アンケートでの質問への回答】
Q)学振を意識して修士1年の時はどのような行動を取っていたか
A)
話題提供者1:修士1年の時点では、学振を出すつもりはありませんでした。
話題提供者2:
・「学振特別研究員」とは何か、をまず把握する。(留学生の場合、似た制度がないことがある)
・修士2年時には査読ありの論文を提出できるように、投稿する論文の内容を考えながら資料・文献を集める。(修士論文の執筆とは別に行う)
・「研究テーマを変えるかもしれない」という段階で、修士論文の研究テーマと博士課程の研究テーマ=申請内容をどのように結びつけるのか、を考えておく。

【助成金に関し、参考になるデータベース】
〇コラボリー(COLABORY)https://www.colabory.com/grants/
詳細検索で「奨学・育英」目的を選ぶと、学生向けのものが検索できます。
〇助成財団センター http://www.jfc.or.jp/
助成プログラム検索で「奨」がついている事業形態を選ぶと学生向けの奨学金が出てきます。
助成金検索にご活用ください。