学芸リカプロ受講生レポート講義4-2「ミュージアムグッズミュージアムショップ」7/8 山下治子氏の講義レポート

ミュージアムグッズとミュージアムショップ
講師: 山下 治子 氏(「ミュゼ」編集長、アム・プロモーション常務取締役)

土栄 織恵

今回の講義では、ミュージアムの専門誌『ミュゼ』(1994年創刊)編集長の山下治子氏より、ミュージアムショップの「位置づけ」や「経営形態」などの特徴と、ミュージアムグッズの「意味」や「その開発」について、国内におけるミュージアムショップ開設の歴史や多彩な事例を交えながら、以下のようなお話をいただきました。

77年に国公立館第1号として国立民族学博物館にミュージアムショップがオープンして以来、90年に東京国立博物館に本格的なミュージアムショップが誕生しました。その後、97年には国立民族学博物館のショップがリニューアルされ、99年に高知県立牧野植物園にミュージアムショップがオープンして以降は、国内に様々なミュージアムショップが開設されて行きました。

ミュージアムショップは、各館により付帯施設、収益施設、教育普及施設、公共サービス施設などの様々な位置づけがあり、経営形態も館の運営主体が民間や財団である直営方式、主に国公立館が行っている外部業者が家賃を負担するテナント方式、一部を外部委託し業務提携を行う融合方式があります。民間立の館は、ショップに加えカフェ、レストランの併設運営も行って収益を上げているところが多い一方、公立館は収入が公庫に直接入るシステムとなっていてショップの収入が活動資金に結びつかないとのことです。

「物」には流行があるものの、大都市にある多数の来館者数を有するミュージアムに限らず、地方の個性あるミュージアムにも、その館のコンセプトに沿った、質、デザイン性、実用性を伴うロングセラーの「グッズ」があるようです。

ミュージアムショップは、館のコンセプト、展示、場所、来館者層、来館者の目的、来館者へのアピールなどを考えて運営し、グッズは、収益を考えつつも良質であることが大切であること。また、グッズの開発には、その館らしさの発見や3Dプリンターなどの新技術への注目も必要となり、ポップを工夫したディスプレイやパッケージへのグッズ情報掲載などの販売方法も含め、館やグッズの企画者、デザイナー、製造者が共に館への愛情をもって考えて行くことも大切であることを改めて学んだ一日となりました。

 

最後の展示室

北海道大学文学部4年 倉澤綾野

講師としてミュージアムの専門誌ミュゼの編集長を務められる山下治子氏、そしてゲストスピーカーとして北海道大学総合博物館(以下、北大博物館)の山本順司氏をお迎えしご講義いただきました。各氏がこれまでにご覧になった、もしくは制作に携わられたミュージアムショップやグッズに関する数多くの事例紹介、そして両氏が考えるミュージアムにおけるショップ・グッズの意義について伺うことができ、非常に貴重な4時間でした。

まず、山下氏は、グッズの教育性、そして一般的な教材との違いについてお話してくださいました。教育性とは、具体的にはグッズが対象とする展示物・ミュージアムの情報(名前・由来など)がグッズ自体に組み込まれていること、より知識を深めてもらうための更なる情報が入っている、ということです。それでは、グッズと一般的な教材は何が異なるのか。両者は「ものについての正確な情報」を伝えるという共通の存在でありながら、後者が「理性に訴える」ものであるのに対し、前者が「驚き・発見があり、感情に訴える」もの、とのことでした。

山本氏からは北大博物館のミュージアムショップでの事例を挙げながら、ミュージアムや展示とショップが密接にかかわること、即ちショップを「最後の展示室」と捉えること、そして、これによって可能となる戦略的な経営についてお話いただきました。

ミュージアムショップで素敵な商品を見つけ、是非とも欲しいと感じる。このように感情を揺さぶられることは、展示室で作品を見た際にきっと覚える感情と遠いものでは無いかもしれません。私は今現在一来館者でありますが、将来ミュージアムショップやグッズを企画する機会に恵まれた際には、来館者の感情に訴える素敵な「最後の展示室」を作りたい、と強く感じました。

 

北大総合博物館ミュージアムショップへの新提案ワークショップ

講義の後、北大総合博物館のミュージアムショップへの新提案を考えるワークショップが行われました。

提案を考えるにあたり考えてほしいことが講師の先生方と受講生の大澤さん(ミュージアムグッズ愛好家)から出されました