企画展示「小野垣 哲之助の作品」

書香の森の企画展示が更新されました。今回は、工学研究科より小野垣 哲之助の作品をお借りしています。

小野垣 哲之助(1922-2007)

岩内に生まれた小野垣は小学生の頃から木田金次郎に絵の手ほどきを受け、高等小学校卒業後は木田との関わりの深い札幌の画材店・銀嶺荘に勤めた。その後、岩内に戻り再び木田に師事し、結婚後は札幌に移り、木田も創立会員であった全道展(全道美術協会)に入選し、1959年に会員となる。様々なモチーフを巧みに描く小野垣は、あえて木田の画風を避けてきたというが、木田から得た色彩感覚が制作の基礎になっているという。

1922(大正11)年 岩内に生まれる
1934(昭和9)年 高等小学校在学中に木田金次郎の指導を受ける
1936(昭和11)年 この頃より木田に師事
1942(昭和17)年 道展(北海道美術協会)初入選
1947(昭和22)年 全道展(全道美術協会)初入選
1950(昭和25)年 独立展初入選
1953(昭和28)年 個展(岩内)。以後札幌で開催(約60回)
1954(昭和29)年 独立展会友
1956(昭和31)年 全道展会友推挙
1959(昭和34)年 全道展会員推挙
1972(昭和47)年 北海道秀作美術展出品
1986(昭和61)年 STV文化教室講師
2007(平成19)年 5月 逝去

(資料提供:木田金次郎美術館 岡部 卓 氏)

展示作品

《北大工学部風景》

新緑の頃の景色がのびやかな筆致と鮮やかな色彩で描かれている。太陽の光が草木を照らしており、木漏れ日が地面に落ちている。陰影のほとんどを鮮やかな青色や茶色で表現しているのが特徴的であり、明暗の対比よりも、色の対比に作者の関心があるのがうかがえる。一見にぎやかな画面に思えるが、草木に用いた色を建物などにも所々用いており、まとまりのある画面に仕上がっている。

画面奥に描かれているのは、「白亜館」の通称で知られた旧工学部校舎である。外壁一面に白タイルを張ったこの校舎は、1923年から約50年間に渡って親しまれてきた。白い外壁だけでなく、幅の細い二連窓や尖塔など白亜館の持つ特徴的な要素は、本作品にも描きとられている。

《吉町先生像》

初代工学部学部長であり、北大名誉教授の吉町太郎一(1873‐1961)の像である。吉町氏は橋梁学での功績が大きく、氏が設計に関わった鋼橋としては旭橋(旭川)などがよく知られている。白亜館は改築のため取り壊されてしまったが、この胸像は現在も工学部の前庭にあり、その姿を見ることが出来る。

「白亜館」

撮影 疋田 豊治(北海道大学総合博物館分館水産科学館所蔵のガラス乾板よりプリント)
北大 創基五十年祝典ニ関スル冩眞
大正十五年五月十四日
工科乃公開日