【学芸リカプロ】「ファシリテーションスキルワークショップ」11/12 酒井 麻里氏の講義レポート

ファシリテーションスキル・ワークショップ
講師:酒井 麻里氏(IAF認定プロフェッショナルファシリテーター)

山田 のぞみ
本郷新記念札幌彫刻美術館

今回、講師としてご登壇くださったのは、IAF認定プロフェッショナルファシリテーターの酒井 麻里氏です。ミーティングやプロジェクト運営で必要となるファシリテーション(話し合いを円滑に、かつ創造的に合意形成へと導く技術)について、その理論と実践の両面からご講義いただきました。美術館、博物館での業務においてこうした技術を活用できる場面は、企画に関する館内での話し合いや、ボランティアの方とのミーティングなど、多岐にわたります。

ファシリテーションに必要な4つのスキルのうち今回の講義では、話し合いの場をつくりつなげる「場のデザイン」、受け止めて意見を引き出す「対人関係」の2点を中心にお話しくださいました。話し合いは目的、目標、ルール、プロセス、メンバーを明確にしておくこと、「共有→発散→収束→共有」の段階を経て進めていくことが大切であることを述べられました。講義では数度のグループワークで実践を行いましたが、多くの意見を出して後々検討の漏れがないようにする「発散」段階から、それぞれの意見を吟味し一定の方向に合意形成をする「収束」の段階へ移行するタイミングを計ることの難しさを感じました。話し合いを進めていくうえでは、対人関係のスキルの習得が重要であると酒井氏はお話されます。相手がどのような意図で発言しているのかを「聴く・訊く」力、要約したり質問を交えなが議論の道筋を整理する「応える力」を使いながら、やわらかい主張で方向づけていく、というものです。

多様な立場の人が集まる施設であればこそ、こうした技術を生かす場面は多く、ファシリテーションを意識するかどうかで話し合いの進み方、進め方も、結果として得られる成果も大きく変わってくるだろうことを実感する機会となりました。

山本 晶絵
北海道大学大学院文学研究科修士課程2年

酒井 麻里氏(IAF認定プロフェッショナルファシリテーター)による本演習の目的は、「学芸員の業務に必要なミーティングやプロジェクト運営、ワークショップの実施等に必要となるファシリテーションの方法とスキル、ファシリテーターに求められる態度を身につける」ことでした。本レポートでは、この目的の具体的な到達点(ゴール)として掲げられた以下の3点について整理・報告します。

(1)「ファシリテーションとは何か?」の手がかりを得る
ファシリテーションとは、人々の様々な活動(問題解決、アイディアの創造、教育・学習など)が円滑に行われるように支援・促進する働きのことを指します。この役割を担う人がファシリテーターです。ファシリテーターには、中立な立場でチームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、チームの成果を最大化させることが求められます。

(2)4つのファシリテーション・スキルを理解する
具体的には、ファシリテーションには4つのスキルが必要です(場のデザインのスキル(場をつくりつなげる)、対人関係のスキル(多様な意見を受け止め、引き出す)、構造化のスキル(主張をかみ合わせて整理する)、合意形成のスキル(意見をまとめ、分かち合う))。また、ファシリテーターには心がけるべき5つの姿勢があります(常に「なぜ」と問いかける、プロセスを見る、安心・安全な場所を確保する、中立である、参加者の相互作用を信じる)。

(3)スキルを活用してファシリテーションを体験する
これらの学びをふまえ、演習後半では「ビジネスマンを対象とした企画展」をつくることをテーマに、グループワークを行いました。ここで特に印象に残ったことは、ファシリテーションの4つのスキルと5つの姿勢は、ファシリテーターに限らず必要だということです。自分が一参加者に過ぎない場合でも、議論を促進させるためにできることがたくさんあるということを知りました。

ファシリテーションでは、人々の様々な活動が「円滑に」行われることを目指します。しかし、対話・議論の場面においては、意見の「対立」も一つの重要な要素です。対立のない・無難な状態で対話や議論が進むことは、必ずしもそれが「円滑に」行われている証拠ではないという点に、私たちは留意する必要があると思います。大学や職場の見知った人との間だけでなく、初めて出会う人、考え方や価値観の異なる人とも対話を重ねていく上で、ファシリテーションの考え方は私たちに重要な視座を与えてくれます。ファシリテーションのスキルと姿勢は、様々な人が多様な場面で活用できるものであると感じました。

〈グループワーク実践のようす〉