ブラッシュアップ〈特別企画〉「子育てと研究の両立のために:余裕をくれるRPD制度について」開催されました

1月18日(水)に、学術振興会特別研究員申請書の書き方についての若手研究者の会「ブラッシュアップ会」の特別企画セミナーとして、「子育てと研究の両立のために:余裕をくれるRPD制度について」が開催されました。

RPD制度は、子育て支援や学術研究分野における男女共同参画の観点から、優れた若手研究者が、出産・育児による研究中断後に円滑に研究現場に復帰できるよう支援する制度として、博士号取得者を対象に平成18年度に創設されました。

今回の特別企画では、今年度からRPDとして文学研究科・地域システム科学講座で研究を進めていらっしゃる山本佳奈さんをお招きして、ご自身のご経験から、子育てと研究の両立にとって必要であること、両立のためにRPD制度が果たす役割、そしてRPD申請のためのアドバイスについてお話していただきました。

山本さんは当初、育児休暇中は、助教(当時)としての事務業務から離れてむしろ研究時間が取れるのではないかとも考えたそうですが、実際にはそう上手くは行かず、ストレスのたまることも多かったとのことでした。一方、RPDになってからは、時間と気持ちに余裕を持てるようになり、自分が本当にやりたいことは何かについてじっくり考える時間を取れたおかげで、自分の研究の新たな方向性や可能性を見出すことができたと話しました。

アフリカ・タンザニアを対象に、フィールドワーカーとして研究を進めていらっしゃる山本さん。現在、フィールドワーカーならではの難しさにも直面されていますが、自分にとって何が重要か、どこが譲れないところなのかを良く考えたおかげで、この冬3年ぶりに行ったタンザニアでの調査では、短期間で効率よく調査を行えるよう、スケジュールや移動のための交通手段を入念に準備、調査を実施し、子育てする自分と研究する自分の両方が納得できる方法で、成果を挙げることに成功しました。そして、この効率化を実現するために、RPDの研究費がとても役に立ったと話してくれました。

山本 佳奈さん。ご専門は、アフリカ地域研究・熱帯農業生態学。
学振PDの経験もお持ちです。

この経験から山本さんは、子育てと研究の両立のためには、まず自分が何を譲れないのかを自分自身で十分に考える必要があり、その上で環境の変化に柔軟に対応していくことが大切だと語ってくれました。

参加者とのフリートークでは、参加者たちが、RPD制度や子育てをとりまく環境、子育てと研究の両立に関する疑問について、山本さんに質問したり自身の考えを自由に述べるなど、率直な意見交換がなされました。アンケートには、不安を抱えながらも子育てと研究の両立を目指す若手研究者から、セミナーに参加して元気をもらったとの声もありました。会の後には、名刺交換なども行われ、山本さんを含む参加者どうしの講座を越えたネットワーク作りの場としても寄与できた会となりました。

フリーディスカッションの様子